ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

第213回国会内閣提出法律案第21号「地方税法の一部を改正する法律案」

2024年02月22日 00時00分00秒 | 国際・政治

 仕事のために、衆議院のサイトを見ました。

 現在召集されている第213回国会においては、地方勢法を改正するための法律案がが二つ提出されています。次の通りです。

 内閣提出法律案第2号=「地方税法等の一部を改正する法律案」

 内閣提出法律案第21号=「地方税法の一部を改正する法律案」

 第2号のほうは2024年2月6日に衆議院に提出されており、同月15日に衆議院総務委員会に付託されています。例年と同様に2024年度税制改正のための法律案です。

 これに対し、第21号は、2024年1月1日の能登半島地震に関するものであり、2024年2月16日に衆議院に提出され、同日に衆議院総務委員会に付託されるとともに同委員会において審査が行われ、2月20日に衆議院本会議において全会一致で可決されています。同日に参議院に送付されており、参議院総務委員会において審査された結果、21日に可決され、すぐに参議院本会議において可決されました。同日中に委員会審査と本会議での審議が行われたこととなります。従って、第2号より第21号のほうが先に成立することになりました。2月中に法律として公布し、即日施行ということになるものと思われます。

 また、内閣提出法律案第20号として「令和六年能登半島地震災害の被災者に係る所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の臨時特例に関する法律案」が提出されています。名称からおわかりであると思われますが、第20号と第21号は対になっています。第20号も2024年2月16日に衆議院に提出され、同日に衆議院財務金融委員会に付託されるとともに同委員会において審査が行われ、2月20日に衆議院本会議において全会一致で可決されています。同日に参議院に送付されており、参議院財務委員会において審査された結果、21日に可決され、すぐに参議院本会議において可決されました。やはり、同日中に委員会審査と本会議での審議が行われたこととなります。従って、第1号より第20号のほうが先に成立することになりました。2月中に法律として公布し、即日施行ということになるものと思われます。

 第21号に付されている「地方税法の一部を改正する法律案要綱」の全文を引用しておきましょう。次のように書かれています。

 「一 令和六年能登半島地震災害の被災者の負担の軽減を図るため、令和六年能登半島地震災害によりその者の有する資産について受けた損失の金額については、所得割の納税義務者の選択により、令和五年において生じた損失の金額として、令和六年度以後の年度分の個人の道府県民税及び市町村民税の雑損控除額の控除及び雑損失の金額の控除の特例を適用することができるものとすること。(附則第四条の四関係)

 二 この法律は、公布の日から施行すること。」

 総務省のサイトには「地方税法の一部を改正する法律案の概要」が掲載されています。これには「令和6年1月に発生した能登半島地震による災害(以下「今般の災害」という。)では、広範囲において、生活の基礎となるような家財や生計の手段に甚大な被害が生じており、かつ、発災日が1月1日と令和5年分所得税(令和6年度分個人住民税)の課税期間に極めて近接していること等の事情を総合的に勘案し、臨時・異例の対応として、令和6年度分個人住民税について、以下のとおり今般の災害による損失に係る特別な措置を講ずる」と書かれており、続けいて「(雑損控除の特例)」として「今般の災害により住宅や家財等の資産について損失が生じたときは、令和6年度分の個人住民税(令和5年分所得)において、その損失の金額を雑損控除の適用対象とすることができる特例を設ける」と書かれています(引用に際して一部省略しました)。

 特例が定められない場合には、2025年度分の個人住民税(2024年分所得)から雑損控除を行うということになるので、1年早めて2024年度分の個人住民税において雑損控除を行うことが認められるということになります。本来であれば、2024年1月1日に被災したのであれば2024年分所得において考慮すべき事柄になりますが、これでは被災された方々に対して過酷な税負担を強いることになりかねませんので、2023年分所得に含めた上で雑損控除を認めるということになる訳です。当然と言うべき内容であり、衆議院本会議において全会一致で可決されるのも自然なことです(もっとも、会議録がまだ公表されていませんので、審査・審議の具体的な内容はわかりません)。

 「地方税法の一部を改正する法律案の概要」には雑損控除および繰り越しに関する図が書かれているので、参照していただくとよいでしょう。

 改正される予定であるのは地方税法の附則であり、「令和六年能登半島地震災害に係る雑損控除額等の特例」という見出しが付された新第4条の4の追加が重要です(というより、実質的にはこの条文の追加のみが中身です)。次の通りとなっています。

 第1項:「道府県は、所得割の納税義務者の選択により、令和六年能登半島地震災害(令和六年一月一日に発生した令和六年能登半島地震による災害をいう。以下この項及び第四項において同じ。)により第三十四条第一項第一号に規定する資産について受けた損失の金額(令和六年能登半島地震災害に関連するやむを得ない支出で政令で定めるもの(以下この項において「災害関連支出」という。)の金額を含み、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより埋められた部分の金額を除く。以下この項において「特例損失金額」という。)がある場合には、次項に規定する申告書の提出の日の前日までに支出したものに限る。以下この項において「損失対象金額」という。)について、令和五年において生じた同号に規定する損失の金額として、第三十二条第九項(第三十三条第四項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)及び第三十四条第一項の規定を適用することができる。この場合において、これらの規定により控除された金額に係る当該損失対象金額は、その者の令和七年度以後の年度分で当該損失対象金額が生じた年の末日の属する年度の翌年度分の個人の道府県民税に関する規定の適用については、当該損失対象金額が生じた年において生じなかつたものとみなす。」

 第2項:「前項の規定は、令和六年度分の第四十五条の二第一項又は第三項の規定による申告書(その提出期限後において道府県民税の納税通知書が送達される時までに提出されたもの及びその時までに提出された第四十五条の三第一項の確定申告書を含む。)に前項の規定の適用を受けようとする旨の記載がある場合(これらの申告書にその記載がないことについてやむを得ない理由があると市町村長が認める場合を含む。)に限り、適用する。」

 第3項:「前二項に定めるもののほか、これらの規定の適用がある場合における道府県民税の所得割に関する規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」

 第4項:「市町村は、所得割の納税義務者の選択により、令和六年能登半島地震災害により第三百十四条の二第一項第一号に規定する資産について受けた損失の金額(令和六年能登半島地震災害に関連するやむを得ない支出で政令で定めるもの(以下この項において「災害関連支出」という。)の金額を含み、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより埋められた部分の金額を除く。以下この項において「特例損失金額」という。)がある場合には、特例損失金額(災害関連支出がある場合には、次項に規定する申告書の提出の日の前日までに支出したものに限る。以下この項において「損失対象金額」という。)について、令和五年において生じた同号に規定する損失の金額として、第三百十三条第九項(第三百十四条第四項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)及び第三百十四条の二第一項の規定を適用することができる。この場合において、これらの規定により控除された金額に係る当該損失対象金額は、その者の令和七年度以後の年度分で当該損失対象金額が生じた年の末日の属する年度の翌年度分の個人の市町村民税に関する規定の適用については、当該損失対象金額が生じた年において生じなかつたものとみなす。」

 第5項:「前項の規定は、令和六年度分の第三百十七条の二第一項又は第三項の規定による申告書(その提出期限後において市町村民税の納税通知書が送達される時までに提出されたもの及びその時までに提出された第三百十七条の三第一項の確定申告書を含む。)に前項の規定の適用を受けようとする旨の記載がある場合(これらの申告書にその記載がないことについてやむを得ない理由があると市町村長が認める場合を含む。)に限り、適用する。」

 第6項:「前二項に定めるもののほか、これらの規定の適用がある場合における市町村民税の所得割に関する規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする