ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

書店のない市町村が2割を超えた

2017年08月24日 05時38分34秒 | 社会・経済

 今回は、「本屋のない市町村」(2012年8月13日10時21分55秒付)および「書店のない市町村は322」(2015年1月6日10時58分38秒付)の続編という形になります。また、「近所の本屋が今月末で閉店する」(2014年8月3日21時44分46秒付)、「小松屋書店がなくなっていた」(2017年5月26日0時0分0秒付)とも関係します。

 3年前の8月、住吉書房高津店が閉店しました。これにより、高津駅前から新刊書を扱う書店がなくなりました。その後も古本屋は残ったのですが、2016年2月にブックセンターいとう高津店(高津駅から少し離れた二子六丁目にありました)が閉店し、今年の春に小松屋書店が閉店し、古本屋もなくなってしまいました。仕事からの帰り道に少しばかり立ち寄って、という楽しみも失われた訳です。

 他の街を歩いてみても、書店を見かけることが少なくなってきました。駅前商店街に本屋がないというような所も増えてきています。

 これは、何も近所だけの問題ではありません。日本で、書店がないという自治体が増えており、止まるところを知らない、というべきであるのか、ついに2割を超えてしまいました。今日(2017年8月24日)の3時4分付で、朝日新聞社が「書店ゼロの自治体、2割強に 人口減・ネット書店成長…」として報じています(http://digital.asahi.com/articles/ASK8R5FDVK8RUCLV00Q.html)。なお、記事の内容からして、古書店は除かれています。

 大手出版取次のトーハンが、全国都道府県の全市町村および行政区における書店の有無をまとめたそうです。それによると、香川県のみは全市町村に書店があるとのことですが、それ以外の46都道府県には、必ず書店のない市町村があります。その数が多いのは北海道(58)、長野県(41)、福島県(28)、沖縄県(20)、奈良県(19)、熊本県(18)の順であるとのことです。一方、都道府県内の全市町村における、書店のない市町村の割合を見ると、高い順に長野県(53%)、奈良県および沖縄県(49%)、福島県(47%)、高知県(44%)、群馬県および熊本県(37%)となります。

 書店のない市町村のほとんどは町村です。しかし、市も7つあります。この手の話題となると必ず登場する茨城県つくばみらい市の他、北海道の赤平市および歌志内市、徳島県の三好市、熊本県の合志市、宮崎県串間市、鹿児島県垂水市です。また、行政区では堺市の美原区、広島市の東区および安芸区に、書店がありません。

 原因には様々なものがあり、複合的に作用しているものと思われます。まずは、何十年も続いている過疎化、つまりは人口減です。勿論、こればかりではなく、後継者問題もありますし、活字離れ、ネット書店(など通販型)の発展、電子書籍、大型書店の進出による淘汰などもあげられます。コンビニエンスストアの発展も見落とせないでしょう。市で書店がない所を見ると、平成の市町村合併によって誕生した市もあります(つくばみらい市、三好市、合志市。また、堺市の美原区も、平成の市町村合併の前には南河内郡美原町でした)。

 気をつけなければならないのは、これらの理由の組み合わせが市町村によって異なることです。つくばみらい市の場合は、人口が増えたものの、何年前のことかわかりませんが市内唯一の書店が閉店してしまい、現在は書店がありません。しかも、つくばみらい市にはつくばエクスプレスが通り、秋葉原まで区間快速で40分から45分程度で行けるという事情もあるようです。

 やはり大手出版取次の日本出版販売によれば、書店のない自治体の数は、4年前より1割ほど増えているそうです。

 それでは、全国を見渡せばどのような状況なのでしょうか。

 書店調査会社のアルメディアによると、2017年5月の時点で、日本全国の書店数は12526店です。2000年には21654店であったとのことですから、実に42%も減っていることとなります。

 上記朝日新聞記事には、つくばみらい市、串間市、三好市などの実例が紹介されています。また、書店が復活した市として有名な留萌市の例もとりあげられています。これらについては記事をお読み下さい。ただ、一般的な話として書店の利益率は非常に低いということだけを記しておきましょう。 

 なお、この朝日新聞の記事もそうですが、この手の話となると必ず登場するのは「書店がないと困るのは特に、移動手段が限られる子どもや高齢者らだ」(上記朝日新聞記事)という趣旨のフレーズです。たしかにその通りですが、このような側面だけを強調しても、どこまで理解が得られるかは疑問であるからです。むしろ、書店であるからこそ得られる楽しみ、言い換えればネット書店など通販ではわからない楽しみを強調する必要があります。つまり、書店で本や雑誌を探したりすることの魅力を伝えていけなければ、衰退はさらに進むだけです。

コメント (1)
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