ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

書店のない市町村は322

2015年01月06日 10時58分38秒 | 社会・経済

 2012年8月13日10時21分55秒付で「本屋のない市町村」という記事を掲載しました。今回は、その続編のようなものとなります。

 昨日(2015年1月5日)の21時25分付で、毎日新聞社のサイトに「書店空白:新刊買えない332市町村 1日1店消滅の割合」という記事が掲載されました。読んでみると、深刻な問題であると感じます。

 総務省によると、2014年4月における市町村数は1718です。このうち、市が790、町が745、村が183です。市の数が増える一方で、町村の数は激減しています。言うまでもなく、明治以来、波の大小はあるとしても一貫して進められた市町村合併政策のためです。承知をしていたかどうかわかりませんが、かなり無理のある政策でもありました。いくつかの市が政令指定都市となりましたが、過疎地域を抱えたり、公共交通機関が貧弱であったり、という問題が存在しています。また、行財政基盤の強化が平成の市町村合併で唱えられたお題目であったにもかかわらず、実際には合併後に人口が減少している市町村も少なくないようです。

 書店の話に進みますと、上記毎日新聞には、アルメディアという出版社の調査が載っています。新刊書を扱う書店の数が一貫して減少しているという話です。原因には様々なものが考えられますが、とりあえずは数字を見ていくこととします。

 書店は、基本的に取次店から仕入れます(そうでない場合もありますが)。このことを基本に置いた上で書店数を数えると、日本にある書店の数は2014年11月末で13736店です。2000年には21654店でしたので、37%ほどの減少となります。記事には「最近では年約300店舗減っており、計算上では全国で1日1店弱の書店が消えていることになる」と書かれています。

 これだけの数が毎年減っているということになると、書店のない市町村があってもおかしくありません。「本屋のない市町村」では、当時の東京新聞の記事を参照して「現在、日本で書店のない市町村が317あり(全市町村の17%にあたります)、鹿児島県の垂水市でも書店がなくなった、と書かれています」と記しました。また、書店がない市が4つあり、その1つが茨城県のつくばみらい市であることも記しています。それから2年以上が経過して、現在はどうなっているかと上記毎日新聞記事を見ると、

 書店のない市町村:332

 書店のない市:4〔内訳:歌志内市(北海道)、つくばみらい市(茨城県)、串間市(宮崎県)、垂水市(鹿児島県)〕

と書かれています。約19%の市町村には書店がない、ということになります。町村については詳しくあげられていないのでよくわかりませんが、上記毎日新聞記事では「東京への一極集中や人口の急減によって、将来的に生活基盤が失われる恐れがある『消滅可能性都市』と一致する自治体が多い」、「つくばみらいを除けば、有識者でつくる日本創成会議が昨年、『消滅可能性都市』と指摘した自治体だ。消滅可能性都市とは、出産の中心世代となる若年女性が2040年までに半減するため人口が急減すると推計された全国896自治体のことで、書店のない332自治体の7割強が消滅可能性都市だった」とのことです。残りの3割弱がどのような自治体であるのかということも気になりますが、それについては書かれていません。

 都道府県別では、北海道が47市町村と最も多く、次いで長野県の35町村、福島県の22町村となっています。福島県の場合は3.11という大惨事のためという事情もあるでしょうが、人口の減少は勿論、それだけに留まらない書店利用者数の減少が大きいのでしょう。また、日本全国で首都圏に人口などが集中するように、県庁所在地に人口や経済基盤が集中する傾向もあり、その影響を受けているはずです。

 記事には、全都道府県別に書店のない市町村数があげられています。全部を引用する訳にもいきませんので、目立つところをあげておきましょう。また、市町村の数に対する割合を出すのも面倒なのでやめておきます。

 北海道、福島県、長野県については記しました。他に10を超えているのは、群馬県(12)、奈良県(15)、高知県(13)、熊本県(13)、沖縄県(19)でした。逆に、書店のない市町村がないのは香川県だけです。

 詳しいことはわかりませんが、東京都では6、神奈川県では2の市町村に書店がありません。また、大分県では1の市町村に書店がありません。どこかがわかれば、理由もわかるかもしれません。

 他方、書店の売り場面積は増大しています。このことは、大規模な書店が増える一方で地元の書店が消えているということを意味します。単に売り場面積云々だけでなく、チェーン店の増加も大きいところです。首都圏でも容易に理解できる話で、池袋は典型例でしょう。かつては神保町に次ぐ激戦地だったそうですが、その面影は残っていません。それ以外の街でも、大規模な書店が目立つ一方で、中小の書店は消えています。

 上記毎日新聞記事には、北海道浦河町に書店が復活したという話が掲載されていますが、ここでは取り上げないこととしておきます。

★★★★★★★★★★

 私が住んでいる川崎市の一部についても記しておきましょう。

 何と言っても、文教堂は高津区に本拠を置いており、溝の口駅付近では西口の一店舗を除けば文教堂ばかりです。その隣の駅などはどうかと言えば、まず田園都市線の高津駅付近ですが、昨年の8月末日で住吉書房高津店が閉店したので、新刊書を扱う書店はありません(他方、古書店は2軒あります)。その隣の二子新地駅付近には、私が高校生であった1980年代中頃に2軒あったのですが、現在は1軒もありません。逆方向に進み、梶が谷駅周辺には文教堂書店があります。

 武蔵溝ノ口駅の隣ということで南武線に移ると、まずは立川方面に進んで津田山駅付近には以前から書店はなかったと記憶しています(かなり離れた上作延にはありますが)。逆に川崎方面に進んで武蔵新城駅付近ですが、ここは書店が激減した所です。1970年代、80年代、北口には、駅前に文教堂書店(ここは数ある支店でも古いほうです)、はってん会にみどり書房がありましたが、文教堂書店だけが残っています。南口には、駅前に村上書店、アーケード街に美松屋書店、日光通に早川書店がありました。いずれも現在はありません(早川書店は全国的にも知る人ぞ知るという存在でした)。現在は高架下に文教堂書店があるのみです。

 川崎市内の各駅を歩けば、近くに書店がないという駅は多く見つかるかもしれません。もっとも、駅の開業当初から付近に書店がないという所も少なくないでしょう。狭い割には駅の数も多く、全部を周りきるのが難しい川崎市です。私は川崎市に生まれ育ちましたが、未だに鶴見線の浜川崎~扇町、武蔵白石~大川を利用したことがありません(横浜市内になりますが浅野~海芝浦も利用したことがありません)。つまり、川崎区の臨海地区にあまり足を運んだことがないのです。


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1 コメント

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文教堂書店新城店が閉店していた (川崎高津公法研究室長)
2019-05-21 23:32:07
先日、武蔵新城駅北口を通ったら、文教堂書店新城店が閉店し、既に建物も解体されていたことを知りました。
 今でこそ文教堂書店はあちらこちらに支店を出していますが、新城店は支店の中では古いほうでした。何時オープンしたのか、よくわかりませんが、西友新城店と同じ頃ではなかったかと記憶しています。
 ちなみに、早川書店は、伝説のジャックスの早川義夫氏が経営していた店です。晶文社から「ぼくは本屋のおやじさん」という本が刊行されていたので、御存知の方も少なくないと思います。
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