東京競馬場

「二度とないものを人は愛する」

だから、愛そう。

そして、井崎先生に共感。

今、この瞬間も、災害は続いている。

２０年前のダービーの日

２０年前のダービーの日、朝から彼女と喧嘩をした。
理由はわからない。たわいもないことだろう。ただ、彼女と結婚したい気持ちを、彼女の両親は頑なに拒否していることを抱えながら付き合っていた。そして、両親を憎んでいた。

トウカイテイオーというエリートな馬が一番人気だった。
彼女の両親とトウカイテイオーはダブって見えた。予定調和なトラブルの少ない、かつ、他人を寄せ付けない絶対観。
彼女はトウカイテイオーの馬券を買った。「かわいい」が理由だった。そんな彼女が憎らしくなり、朝の喧嘩に輪をかけて喰ってかかった。

そして険悪な中、スタート時間が近づいた。謝るタイミングを逃したことに、反省し始めていた。でも自分から素直に謝りたくはない。
「もしトウカイテイオーが勝ったらあなたが正しい。謝る」そう言い捨てた瞬間、ゲートが開いた。

彼女は複雑な表情を保ったまま、ヴィジョンを見ていた。
４コーナーでトウカイテイオーが先団に踊り出た時、叫んだ。「いけ!そのまま走れ!」彼女も同じく叫んだ。
そしてトウカイテイオーは勝った。

外れ馬券を手に握りしめたまま、彼女に謝った。今も変わらない様々な気持ちも伝えたかったが、ただ謝った。

あの日のあの瞬間、最も幸運な馬は、素直に生きることの大切さをもたらしてくれた。