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スレイマーニ将軍、イランに帰る&永遠を生きる

2020-01-05 22:32:08 | アジア情勢複雑怪奇

イラクでアメリカによって殺されたスレイマーニ将軍の遺体がイランに帰り、イランの人々は最後の挨拶をしに通りに出ている。

予想されたことだけど、ものすごい人数。

'Commander of Hearts': Grieving Iranians flood streets in Ahvaz to bid farewell to General Soleimani (PHOTOS, VIDEOS) 

https://www.rt.com/news/477499-soleimani-procession-ahvaz-iran/

 

Hundreds of thousands of grieving Iranians bid farewell to Soleimani

 

そして、もちろん将軍の死を悼む人々はイランにだけいるわけではない。

また、イスラム教徒だけでもない。シリアの戦線を通してクリスチャンも多数イランとロシアの側で、テロリストを盾にしてシリアを乗っ取ろうとする西側勢と戦った。もちろん、ロシアの軍人、シリアの軍人の心もこの列の中にあるだろう。もちろん、様々な局面で重石となるよう登場していたチャイニーズの中にも同じ思いを抱く人々がいるだろう。

ドンバスで殺されたザハルチェンコの心もここにあるかもしれない。

 

 

という、なんというかエライことなわけですよ。

並べてみればわかる通り、西側に対するレジスタンスの戦線がみえるようだ。

オバマは、暗殺魔で知られているけど、スレイマーニ暗殺のオプションを提示された時拒否したという。その結果をアメリカ軍は引き受けられないのではないかと懸念したからだそうだ。オバマには心はないが脳みそはあったのだろう。

 

■ 知らずにアメリカが作りあげていったようなもの

スコット・リッターが、RTにスレイマーニについて書いていた。

スコット・リッターさんというのは、若い人は聞き覚えがないかもしれないけど、(wiki

1991年から1998年にかけて、イラクにおける大量破壊兵器捜索のための国連主任査察官としてアメリカの中東に関する外交政策を批判し、イラク戦争反対運動に参加した。

という人で、2003年のイラク進攻前にも、サダム・フセインは大量破壊兵器は持ってないと主張して大騒ぎになったものだった。にもかかわらず、アメリカは一切を無視して突っ込んだ。

 

The US unwittingly helped create Qassem Soleimani. Then they killed him.

https://www.rt.com/op-ed/477423-us-soleimani-assassination-consequences/

 

スコット・リッターがいうには、アメリカ人は今スレイマーニはイランの悪だくみの副産物みたいなことを言っているが、彼は中東地域でのアメリカの無責任な侵略行動の直接の帰結だ、と。

つまり、アメリカの中東侵略の過程でスレイマーニは仲間をつくり、そこをかいくぐったり、失敗させたりしてきて、次第に伝説のリーダーのようなことになってきた。因果関係を考えれば、アメリカがそんなことをしなければスレイマーニは生まれてないだろう、というのをイラン・イラク戦争の時から説き起こしている。

そして、

スレイマーニは911後の中東の形を整え、イランをこの地域におけるメジャーパワーの1つにしていくにあたって大きな役割を果たした。

Soleimani played a defining role in shaping the Middle East in the aftermath of 9/11, positioning Iran to become a major power in the region, if not the major power.

 

これは納得。そして、その形とは the West の子分のイランではない。

岡崎久彦が「イランはロシアには行かない。ロシアは金がないから」というお馬鹿なことを語ったことがあったが、この意味はイランは the West の金になびくはずだという意味でしょ。

で、なにせ古くて大きな国だからいろんな民族がいて、グループがいる。実際今でも西側に向いている要素はイランには結構ある。だから、あのイラン・ディールでも、ヨーロッパ勢と共にあるイランに満足しているような気配はあった。逆にロシアは憤慨したりしたこともあった。

だがしかし、同時期にカスピ海主権についてロシアと合意し、ロシアはイランにS-300を納品、その後シリア戦線でロシアと共にシリアで戦うという路線をイランは歩んだ。

後者の路線は明確にスレイマーニが敷いた路線であり、その行動をシーア派の一般人、そして中東地域に古くから住むクリスチャン(西側のクリスチャンとは一緒にはならない)を含む様々な宗派のシリアの人々が歓迎し、支援した。

そして今、スレイマーニは殉教者として永遠を生きるものとなった。

ということは、この路線を覆すことは、スレイマーニが生きている時代よりもさらに難しくなったというべきなのではなかろうか。

もちろん今後の成り行きも重要ではあるとしても。

 

■ どこに打っても悪循環的

アメリカは一体何をしたかったのだろうか?

ブッシュは、サダム・フセインも倒すがイランも嫌いという大混乱作戦。

オバマはイランを敵にしないで、ちょうど北朝鮮にするのと同じように、これとこれをやったら経済制裁解除してあげる、そうしたらあなたたちだってお金持ちになれるんだよという路線。しかし、実際にはじりじりイランを弱らせながら解除するというスタンス。見栄えはいいが底意地が悪い。

そこに登場したのがトランプでお膳をひっくり返した。お膳をひっくり返してどうするのだろうかと様子見をしていたが、すべてに渡って戦略があるようには見えなかった。そしてこの暗殺。

ブッシュと同じく大混乱にしていくつもりが、手がすべってオウンゴール?

しかし、トランプが1人でやったというのは多分間違い。というのは、これはデモクラッツが弾劾で追い詰め、さらにもう1つ、2つネタを仕込んでいると言われている中で起きたので、トランプはトランプで選挙のために「何か大きいことを」のつもりだったのではなかろうか。

事実、イランを完全な敵とみなす共和党支持者はたくさんいる。そもそも、イランとアメリカは1979年のイラン大使館人質事件以来、40年間ほぼ敵対関係なので、イランを叩く、イランを跪かせることに執念を持つ人たちは実はかなりいる。つまり、これは票になる。

もちろんイスラエルも喜ぶ。これも間違いなく票になる。

そして、アメリカでは戦争中の大統領で負けた人はいない、みたいなジンクスもある。

だがしかし、イランはニカラグアでもなければグレナダでもないわけだが・・・・ではなかろうか。

そして、デモクラッツは戦争にまで発展させるような無責任な男を弾劾しよう、などと思ってる? さっそく反戦のデモがアメリカであるみたいで、それはそれで結構。

だがしかし、イランはオバマのやり方をもう信用しないのではないのか?

というわけで、アメリカにとってはどこにもメリットがあるようには見えません。はい。

 

トランプは自分が若い頃は下半身のゆるい、徴兵逃れの男で、年取ってもトロフィーワイフもらっちゃうおじちゃんなので、この軽薄さからするに、殉教とか志を継ぐみたいな概念はマジで飲み込めないんじゃなかろうかという気がする。兵隊って他人のために命をかける仕事なので志、大義ってのがものすごく重要だ、などとは考えたこともないでしょう。みんな金目でしょ?といったところ。

(その軽薄さの故に、だってアフガンってソ連の隣なんだから出るでしょ、そりゃなどとも言えちゃうわけだが 嘘に飽きてる&アフガンまで通説に逆らうトランプ

だもんで、今この状況の中でも、いいか、見事な兵器がイランに向かってるんだぞ、だの、早くてすごい兵器で攻撃するぞとか言っちゃう。戦闘というのは道具がやるものだと思ってるね、この人は。

‘Brand new beautiful equipment’ heading Iran’s way to hit harder ‘than ever before’: Trump goes hyperbolic on Twitter 

https://www.rt.com/usa/477502-trump-beautiful-weapons-iran/

 

他方、上で書いたスコット・リッターは、The American Conservativeにも寄稿していて、そこでは、

イランの報復は、冷めた頃が一番おいしい、というタイプになるだろうと書いている。

Iranian Revenge Will Be a Dish Best Served Cold

https://www.theamericanconservative.com/articles/iranian-revenge-will-be-a-dish-best-served-cold/

 

一年でも二年でも、別に報復に期限とかないしね。

 

■ 現場はぎこちないみたいだが

そんなトランプを後目に、NATOはイラクで行っていたイラク兵の訓練を一時中止の判断。

NATO suspends its training mission in Iraq

https://tass.com/world/1105635

BRUSSELS, January 4. / TASS /. NATO has "suspended the work of its mission in Iraq to train personnel for the local army" due to growing instability in the country after the US airstrikes, a source in the alliance headquarters told TASS on Saturday.

 

NATOは犯罪組織でもあるが、たしか軍事組織だと思うので、こんなときこそ一緒にいてやったらどうなんだ?

なんで怖がるの? あんたら望まれてイラクにいるんでしょ?

 

イギリスはホルムズ海峡を通る自国船を英海軍が護衛することになった模様。かえって怪しまれそう。

Britain's navy to escort UK-flagged ships through Strait of Hormuz

https://www.reuters.com/article/us-iraq-security-britain-ships/britains-navy-to-escort-uk-flagged-ships-through-strait-of-hormuz-idUSKBN1Z30LZ

 


 


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3 コメント

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Polskaでは (И.Симомура)
2020-01-05 23:28:18
ポーランドの軍人の多くは,たとえ敵国であっても,その指導者を軍事目標に擬制して殺害する行為を卑怯者のすることととらえる.家内の弟は大佐だが,やはりソレイマニ将軍の殺害を口を極めて非難している.またトランプがイラン内部の攻撃目標の数を米国人の死亡者数に等しくしたことをナチの懲罰方法に例えている."優越人種”であるドイツ軍人ひとりの殺害は,”劣等人種”であるポーランド市民十人を絞首することに繋がった.ポーランド人の”劣等性”を自覚させるために,ユダヤ人一人を匿うと,匿った一家全員が絞首された.ユダヤ人はそれをポーランド人の臆病さだと非難するが,ドイツ人を相手にしては同様の非難をしないのだ.何故か.ドイツ人は恐ろしい人種だからだ.ドイツ側の処刑記録映画を見たことがありますが,処刑を前にしてもポーランド人はしっかりと歩き表情も淡々としていますね.立派な民族ですよ.
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前便に補足 (И.Симомура)
2020-01-06 03:06:24
前便に意味の繋がらない部分があります.「…絞首される」と「ユダヤ人はそれを…」の間に以下を挿入して読んでください.「ポーランド人は,オランダ人やデンマーク人のようには,ユダヤ人を積極的に匿ってはくれなかった」
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Unknown (ローレライ)
2020-01-06 12:18:29
保身の為に昭和天皇化しているトランプ大統領、殺人もトランプ大統領の責任になる。
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