カリフォルニア州の山火事がまだ消えないようだ。そして犠牲者が70人を超え、行方不明者が1000人を超えているようだ。
行方不明というのは単に連絡がつかないという人が大勢いるというだけと考えれば、こっちはひょっとしたら混乱の原因ではあっても直接の被害者ではないかもしれない。
しかしいずれにしても家屋の損害も膨大だし、犠牲者も少数ではない。
にもかかわらず、何かがとっても変。特に報道がわけわかめ。大変よ、大変よ、史上最大、歴史上ない云々、温暖化で乾燥しているからという話もよくついてる。
しかしだ、まず消火作業がどう組織化されてるか、とか、州が持つ消防、州兵でたらなければ国が持つこれこれのユニットを投入してとかなんとか、そういう組織だった話はあまり見えない。というか、私が探せてないだけかな、と一応言ってみるが、しかし、私の在米体験から言っても、まぁアメリカってこんな感じなんだよなというところはある。
で、そのわけのわからない話がいちいち日本語に翻訳されてた。米系のメディアはお金があるから、翻訳者をかかえてあっという間にこうなるシステムがある。
「逃げろ!」怒鳴る警察官。カリフォルニア州の山火事、止まらぬ勢い
https://www.huffingtonpost.jp/2018/11/17/america-yamakaji_a_23592508/
そのぐらい効率的なシステムが消火にもあるといいのにね、と皮肉を言いたい。
しかし、何の役にもたたない面白くもなければタメにもならない記事だけが、ざらざらを配信されることのメリットは基本的にない。しかし、やたらにお金だけは動く。これがアメリカですね。物事の軽重がおかしい。
こっちはナショジオ。
複数の機関で構成される南カリフォルニアの消防隊は、世界で最も強力な消防隊と評価されている。それでも、人員は不足している。森林保護防火局は12日、ワシントン、オレゴン、アイダホ、ユタ、ニューメキシコ、テキサス、モンタナ州に支援を要請し、消防隊の派遣を受けると発表した。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/111500495/?P=3
世界で最も強力な消防隊なら、なぜ消せないんだろうか? それだけスゴイ火事だと言いたいのだろうか?
しかし、この記事にもあるようにカリフォルニアの山火事は今年初めて起こったわけではない。最近になって、とか書いてる記事も見たが、そんなことはない。wildfireは非常にしばしば起こる。また、最近のでも、去年も史上最大だの歴史的と言っていたし、今年の夏にも、歴史的だ歴史的だと言っていた。一体どの根拠でそんなことを言っているのか、まったくわからない。
さらに、
ロサンゼルス郡消防署長のダリル・オズビー氏は11日朝の記者会見で、「カリフォルニア州に住んでみれば、気候変動のさなかにあることがはっきりわかります」と述べた。「過去7年間のうち6年、私たちは干ばつを経験しました。そして、この夏、観測史上最も暑い夏を経験しました」(参考記事:「山火事の煙害が広域化、死者は年間34万」)
だったら対策しろよ、と思うわけだが、多分、これを書いたり、取材されたりしている人たちは、だから地球全体で温暖化対策を! とか言うんじゃないかと思う。
何かが、根本的におかしい。
これはちょうど、シリアの子どもたちがかわいそうだと思うのなら、イスラム国に資金を出すのを止めればいいじゃないか、と誰しも思うがそこをふせるのと似てる。
さらに、ナチスのような行動をする右派は危険だわ、と思うのなら、ウクライナのバンデラ主義者の勃興を手放しで支援しなければいいのではないのか、というのとも似てる。
橋もぼろぼろ、道路もガタガタなら国家予算をインフラに割り当てるしかない、消防組織も実はお寒いというのなら、であればあの異常な軍事予算を減らしたらいいんじゃないの、と誰しも気がつくがそれを言い出すことはほぼない、というのとの似てる。
これは2017年のアメさんの国家予算。左の円グラフが支出。
その中の濃い水色(右上)が防衛予算。これだけ見るとまだ大丈夫に思うかもしれないが、しかし膨大な諜報機関やら各国のレジームチェンジ支援みたいな団体のための予算などは、その次のNondefence(防衛以外)とかOthers(その他)に入っているであろうことを考えると、アメリカの国家予算の半分は、世界帝国維持のために使ってると言うのが適切だと思う。そもそも、ただの一度もアメリカを脅かしたこともない国を脅す、潰す、跪かせるetc.のための予算を「defence(防衛)」と呼ぶのが間違ってると多くの人が言って来たし、今もいる。この分類はまとめて「帝国維持予算」と呼ぶべきではないのか。おほほ。
でまぁ、並べてみれば何がわかるか。それは政治的アジェンダが大事すぎて、目の前の被害、現実の人々の苦しみなんてどうでもよくなってる一つの集団がそこにある、ということではなかろうか。
これはしかし、初めて見るものではない。
そうだ、これは国体護持の確約を得るまでは戦争を終わらせられない、当然だろ、と思ってた1940年代の極東のどこかの国と実にまったく似ている。
現在のアメリカというのは、アメリカを中心としたステルス帝国主義、すなわち彼らの「国体」をどうにかして維持したいと苦闘しているということなのだなと改めて感じる。
■ 岡目八目
アメリカの様子を概略手早く知ろうと思ったらアメリカの報道を見るより、RTアメリカでも見た方がはるかにわかる。
これは今回の報道。今日はトランプがカリフォルニアに行ったことと、いくつかのドローンの映像。一番下の火が見える映像がスケール感が多少わかる。
‘Total devastation’: Trump visits California as wildfire death toll jumps to 76, with 1,276 missing
https://www.rt.com/usa/444282-california-wildfire-death-toll/
どうしてこうなるのかといえば、一つは、RTはアメリカ人でない人も含めたオーディエンスを対象にしてるから、まとめておみせします、というスタンスを取る。だから、客観的な報道に傾く。対極は、アメリカの中にいる人に向けてなんらかのアジェンダに沿って感情的に共感させようというアメ国内の報道でしょう。
もう一つは、この間長いことCNNの看板だったキャスターのラリー・キングが言っていた通り、アメの主要メディアは、ニュースを伝えようとしてないってことだと思うな。
CNNはもうずっとニュースをやってない by ラリー・キング
じゃあ何をやってるのかといえば、自分たちのアジェンダに対する支持をゲットする or 相手方に対する嫌悪を出す、みたいなことが目的になってるってところでしょう。
これはしかし、いいわけないが一朝一夕に治らないと思うな。大金持ちが多数裏(または上、深いところ?)にいるわけだから、金は切れない、したがってこのまま動かせるってのが一つのネックになってる。そして、この間、いいやそんなインチキ、嘘を報道してらダメだろうという姿勢を見せた人を切っていったわけだから、言うことを聞く人しか残ってないというのも変化に対してはマイナス要因。
今のアメちゃんは、覇権を放棄しているのだぁとか、アメ・ファーストを遂行するのだ、とかいう前向き、積極的、おめでたい話をしているのではなくて、むしろ、国家を運営するにあたって必要な様々な仕掛けやツール(人材を含む)がガタガタになっているのでひとつづつなんとかしようとしている、がしかし、上で見たような「国体護持派」が反攻するので、何をやってもあんまり上手く行かなくなってると見た方が正解のように思う。
あら。ほんまじゃ。
カリフォルニアの山火事、どうやら高圧送電線の異常が原因だったっぽいって話が広がるにつれ、PGEの株下がってる。資本主義ってすげぇなおい。
菅野完以外にも去年の山火事での救済法案が、可決した直後に、もっと大きな山火事が発生
カリフォルニア山火事の原因を作ったPG&Eの救済法案が成立2018年09月03日
去年の10月カリフォルニアのナパやサンタローザで起きた一連の山火事は2万1千の住宅を焼き、40人の死者を出しました。
山火事は色々な場所で同時多発的に起きたのですが、そのうちの幾つかは、強風で送電線が切れ、地面に垂れた送電線のスパークで引き起こされました。このため地元の電力会社、PG&E(ティッカーシンボル:PCG)は管理保全責任を問われていました。
同社を相手取って780もの訴訟が起こされ、それらに敗訴し賠償金を際限なく払い続けると同社の経営が傾くリスクが生まれました。
今回の去年以上で、同時多発的に起きているが、
アメリカは電力自由化で送電網などのインフラの老朽化が深刻化していた
コメントありがとうございます。
今回の原因が同じような送電線の問題かどうかはとりあえずまだ不明ですが、それも臭いことは臭い。トランプが、管理責任の問題だと最初っから言っていたのはこの含みだと思います。
しかし一旦火災が発生したらどうするのかは別の問題ですよね。どこまでだったら現地、どこまでだったら国(連邦)といった決め方がアメにはあるようなないようなんです。FEMAが引き取るような「雰囲気」はありますが実働にはなってない。
ロシアの非常事態省は初期消火は現地営林署、ダメなら山火事は(ソ連時代から改変した)非常事態省という委任関係ができてる。
州の独立を守るためには住民には丸焼けになる自由があるという集団が地球上にあってもいいと思いますが、それなら騒がないで、うるさいから、もう好きにして、アメリカ、って感じですね。
結局、ツケを払うのは、消費者です。莫大な訴訟費用等、結局電気代に転嫁されるのでしょうから。
アメリカ人の流儀では、それこそ自己責任でしょう?自分や家族の安全を考慮して居住しているのか疑わしいです。こんな所住めるもんか、と安全な所に集団で引っ越して建築屋に開発をさせないよう仕向けるだの、居住禁止区域を造れと役所に抗議するだのやる市民が多発すると思ってたんですけど。尻の重さでは日米互角だったんでしょうか?