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ノードストリーム、トルコストリームが作る欧州東部の未来

2019-11-04 16:45:31 | アジア情勢複雑怪奇

ノードストリーム ファンの皆様こんにちは。

誰がファンかわかりませんが(笑)、ともあれ、ロシアとドイツの間のノードストリーム2は、懸案となっていたデンマーク水域についてデンマークが建設許可を出し、これでもはや完成まで障害なしとなり、当初予定されていた年内完了も不可能ではないのかもといったところになった。来年初頭で何か悪いことがあるってもんでもないでしょうが。

これですね。

 

この件についての日経の記事。


デンマーク、ロシアの新パイプライン建設を許可

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51617000R31C19A0000000/

(前パラグラフ略)

デンマークのエネルギー庁によると、ロシアの国営ガスプロムが主導する建設企業に対し、パイプラインが通るバルト海におけるデンマークの大陸棚での工事を許可した。新パイプラインを巡ってはロシアへのガス依存を高め、欧州の安全保障を脅かすとして米国やポーランドなどが中止を訴えてきた。事業が実現に近づいたことで、さらなる反発も予想される。

 

さらなる反発が予想されるって、今後何ができるんだろうってぐらい既にポーランド、その前はスウェーデン、バルト三国、デンマークといった反ロシア色の強い英米子分が総動員で騒いで、アメリカはアメリカでドイツ企業を脅しまくる始末だった。この先何をする?

そのへんの話はここで書いた通り。

豪の石炭を拒む中、露に留まるシーメンス

 

で、日経の記事を読むと、全編、ロシアがヨーロッパに無理くり売ってるみたいな話に読めますが、ホントに経済紙なんだろうか? いらないエネルギーを買うためにわざわざパイプライン敷く馬鹿がどこにいるのって話でしょう(笑)。

【ロンドン=小川知世】デンマークは30日、建設中のロシアとドイツを結ぶガスのパイプライン「ノルドストリーム2」について、デンマーク領海での建設を許可したと発表した。米国などが反対するなか、デンマークが許可を保留し、事業の遅れが懸念されていた。ロシアは計画通り年内の完工を急ぎ、エネルギーを通じた欧州への影響力を高めるとみられる。

 

この話は何度も書いたし、今も英語その他の記事でも出まくってますが、ドイツをはじめとする欧州企業がオバマ、トランプの妨害を跳ね返してプロジェクトを進めたというのがみんなの注目を集めてるわけ。

 

これも微妙。

露、ウクライナ迂回パイプライン完成へ前進 中断中の欧州ルート工事再開へ

https://mainichi.jp/articles/20191103/k00/00m/030/347000c

世界2位の天然ガス生産国ロシアが、中断していたドイツへの海底パイプラインの工事再開に向け動き出した。2014年のウクライナ危機以降、対立を深めるウクライナを迂回(うかい)するルート。ウクライナにとっては、対ロシアで協調してきた欧州との関係にくさびを打ち込まれかねず、警戒を強めている。 

 

確かに迂回ルートなんだが、これは別にロシアが敷いてくれといって敷いたのではない。この迂回路を熱心に進めたドイツの意図も考えたらどうだろうか? 

ウクライナは場所的にバルト海からで都合がいい場所と、東部側、南部側などそうでない場所があるので今後どういう交渉になるかわからないんだけど(すなわち完全な迂回路が可能なのか、ということ)、むしろ注目すべきはポーランドではなかろうか。

ポーランドもウクライナと同様にロシアとドイツの間にあるので、事情としては同じように欧州に売るロシアから通過料収入をもらう側だった。

ドイツとロシアがあそこにパイプラインを敷いたら、ポーランドも通らないので両国とももちろん通過料収入はなくなる。それだけでなく、多分、ドイツ側からポーランドに出すルートを作るんでしょう? つまりドイツが北部の東欧に対してエネルギーハブになる。ポーランドはドイツに金を払う。

これは、ポーランド念願の「ロシア離れ」かもしれないが、同時に、なにもかもドイツにコントロールされちゃうポーランドになるの?という話でもある。

ポーランドは一体どうしてこんな選択をしたんだろうって感じのことを次々やってる。この他にも、パイプラインよりLNGだ、とか言ってLNG基地を作ってアメリカから天然ガスを買っている。これがつまり、ドイツ完全支配を振り払う試みだろうかと見えなくもないが、ものすごく高くつくことは疑いもない。

ロシアとドイツの中間にあるのなら、両方に良い顔をしておくという作戦もあったと思うが、ロシアを敵にみたてて米の基地を拡大して、紛争の前線になりたいらしいとも見える。

 

■ トルコストリーム

で、ノルドストリームはバルト海をくぐってドイツへ行くパイプラインだが、黒海のトルコのパイプラインの増強も、トルコが使い切れる以上の分を入れるわけで、売り先は欧州。

多分こんな感じになる。青がロシアから、赤がアゼルバイジャンから。the Westは全部アゼルバイジャンから敷きたかったのだが結局不可能だった(そもそも欧州を全部まかなうだけの量がアゼルバイジャンになかった。では、とカスピ海を超えてトルクメニスタンから持ってくる、etc.とやってたができなかった。なぜならカスピ海の沿岸国にはロシアとイランというビッグな奴がいるから)。

 

当初はピンクの部分を単体で、ロシアが「サウスストリーム」として出してブルガリアを陸揚げ地点にする話が進んでいた。ブルガリアとしては非常においしい話。

ところがこれをオバマに壊される。サウスストリームがとん挫だ、やーいロシア、と良い気になったのもつかの間、では、とプーチンがエルドアンと交渉して、じゃあトルコから上陸させるとなったのが青のTurk Stream(トルコストリームと呼んでおく)。

 

これに気が付いたブルガリア一般人が、損をした!!と政府を責める騒ぎになったが後の祭りだった。

現状は、トルコストリームもノルドストリームと同様、年末までに工期完了を見込んでおり(さらに、中国のシベリアの力というパイプラインも完成間近)

ブルガリア、セルビアへの接続は来年中にできるんじゃないかと言われている。ハンガリーまで伸びるのかは一応未決定。

(10月30日にプーチンがハンガリーに行った時にプーチンが記者の質問に答えていたスケジュールも各種報道と一緒なのでこの辺は固いんでしょう)。

The TurkStream project will be completed by the end of this year. We have already finished the Black Sea part, and we will soon be done in Turkey. By the end of next year (approximately), we will have completed work in conjunction with our Bulgarian and Serbian partners. It is only 15 kilometres across Hungary.

http://en.kremlin.ru/events/president/news/61936

 

■ ハンガリー

そんな中、10月30日プーチンがハンガリーのブタペストを訪問。

 

Russian-Hungarian talks

http://en.kremlin.ru/events/president/news/61936

 

ハンガリーとロシアはここ何年間毎年会っているが、既に年次のサミットとしてスケジュール化されている。

これがthe Westは気にいらないわけで、数々の誹謗中傷がオルバンになされているが、オルバンの決意は固いし、国内の人気も引き続き安定的であるようにみえる。

まぁ、考え方が非常にしっかりしているので、そう簡単にこけたりしない人ではありますね。

考え方の基本は、今回の記者会見でも出ていた。

 

(経済関係の話をひとしきりやった後)、もちろん、ハンガリーとロシアの二国間には政治的な協力もあります。ハンガリーの側から言えば、これは非常にシンプルな地理的な事実に基づきます。どの国も場所を変えられません。すべての国は神が作った場所にあるんです。ハンガリーについていえば、これは、私たちは、「モスクワ・ベルリン・イスタンブール」トライアングルの中にいるんです。私たちはここに1,100年以上住んでいて、今もそうなんです。

Of course, there is political cooperation between our two countries. From the Hungarian side, this cooperation is based on a very simple geographical fact: no country can change its house number, as all countries are located where God created them. For Hungary, this means that we are inside the Moscow-Berlin-Istanbul triangle. We have lived here for 1,100 years, and we live here now.

http://en.kremlin.ru/events/president/news/61936

 

神が創ったという部分は、まぁ人それぞれ取り様はあるとしても、モスクワ、ベルリンだけでなくイスタンブールが入っているのが、今日的政治センスでは珍しく、しかし彼らの歴史からすると実に正しい。

ハンガリー、セルビア、オーストリアあたりの人にとっては歴史の結構長い期間において、オスマンこそ侵略者の代名詞みたいなものだった。

第二次ウィーン包囲 は1683年。江戸時代前期ですね。

これに対してここらへんのキリスト教国は16年間一致して対オスマンで戦っていた。神聖ローマ帝国(オーストリア)、ポーランド・リトアニア共和国、ベネチア共和国が神聖同盟を結成し、後にロシア帝国もこれに加わった。

オスマンというともっと後のロシア帝国単体での戦争の連続が有名だが、これはその後を受けたもので、最終的にオスマンは倒れる。考えようによってはキリスト教圏の勝利で目出度し、目出度しと言ってもよかったわけだが、そこにアングロ・シオニストが介入してきて対ロシアを作っていく。

で、オーストリアのトルコ恐怖は結構マジに深層心理にあるだろう、EUに入れたくない背景にもなってると思う、という話を、イギリス人の歴史学者の人が言っていたのを私は覚えている。2000年のちょっと前のイギリスのBBCの教育番組(4チャンネル)の歴史ものの中で言ってた。知ってるなら考慮してやれよと思う(笑)。

 

と、そういうことを下敷きにして見た時、ハンガリーが無駄にロシアを敵視しない態度は将来を見越しているなとも言えると思う。

2014年ウクライナ危機の頃、オルバンは、ベルリンに支配されたくないからモスクワを向き、モスクワに支配されたくないからベルリンを向くんだ、といった言い方をしていたこともあるが、さらに抜本的になってきたというべきでしょうか。

 

で、プーチンとオルバンの記者会見の様子を見る限り、ハンガリーが上のパイプラインに接続されることはだいたい間違いないものにみえる。

Russia to welcome Hungary’s joining TurkStream project — Putin

https://tass.com/politics/1086221

 

それどころか、ロシアのガスをここに貯めて西に出す、といった設計になるんじゃないかとも読める。

ノルドストリームは、ドイツとオーストリア、つまりはドイツ人たちのラインとなってオーストリアで貯めて西に出す、となるんだろうと思う。

つまり、オーストリア・ハンガリーが、文字通りロシアと西欧州を繋ぐ、みたいな恰好となるって感じではなかろうか。

これは欧州の安定といった観点からみて、良い恰好ではなかろうか。

そういえば、オーストリアが政治的に中立をなんとかかんとか貫いているんだから、ハンガリーがそれっぽくなってもまぁ不思議ではないんだよね。

中立国オーストリア

プーチン、オーストリア経由で平和的ベルリン入場

 

■ セルビア、EAEU入り

セルビアは、10月26日にユーラシア経済連合(EAEU)との間でFTAを締結。

EAEU, Serbia sign free trade agreement 

https://tass.com/economy/1085403

 

あわせて、S-400のドリルをやっていたりもする。セルビアは経済でEUはいいとしても、NATOには絶対入らないという構えなので、周辺諸国(つか変態NATOだが)からの嫌がらせにあってる。

Russia, Serbia wrap up joint air defense drills with S-400 systems 

https://tass.com/defense/1085694

 

S-400は高いから、パーンツィリとかの短距離の方でいいんじゃないかという気がするが、でも防空網を万全にするという設計をロシアと共同でやるとなったらロシアが便宜を図ってくれるという可能性もありそう。ロシアの国民もセルビアを守るという話なら協力的だと思う。

 

ということで、バルカンの平和と安定も期待できそうな感じになってきたと一応いってみたい。コソボの基地がなぁ・・・と不安はあるものの、あってどうするんだ、という恰好になればいいわけだしね。

というか、全体的にみて、NATOという犯罪者集団じゃなくて欧州の各国という視点で見ると、殆どの国はロシアと戦争する気なんかさらっさらない。冷戦時代もなかったが今もない。ポーランドとバルト三国、ルーマニアというアメリカの「人質」みたいな場所だけがとにかく例外。であればそこの暴発リスクを計算しつつ安全設計をすればいいって感じじゃないのかしら。

 


 

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1 コメント

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再生可能エネルギーより天然ガス? (セコイアの娘)
2019-11-05 07:36:39
グレタは、再生可能エネルギーより、天然ガスをプロモートするべきだった。
フランス黄巾党、チリのデモも、きっかけは再生可能エネルギー対策費用の負担増だった。(炭素税)
地球にやさしく、庶民の懐にやさしいロシアの天然ガス外交。
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