ベネズエラ情勢は、緊張が続いていることは続いているが、その様相はなかなか興味深い。
23日は、リチャード・ブランソンがベネズエラ国境付近でコンサートをやった。それをワシントンポスト紙など西側メディアは、20万人が集まったと書いているが、現地から写真がアップされており、まぁ2万人程度なんじゃないのかといったところ。
ことこうなる上で、Roger Watersの影響は大きかったと思うな。あれが注意喚起になって懐疑的な人も増え、そして、おそらく本当はもっと橋の付近で人を密集させる計画だったのではなかろうか? しかし現実には徒歩では橋から距離のある場になっていた。コロンビア当局者がびびったのでは? (ベネズエラとコロンビアの国境は川なのでそこに架かる橋が焦点になる。危険だ) ※航空写真を見たら橋から近かった。だからブランソンが豪語していた通りに25万人集めてたらもっと混乱していたでしょう。
ライブエイドはエイドと関係ない by ロジャー・ウォーターズ
また、西側メディアは、ベネズエラ市民には食料がなく、基本的な物品がなくて困っている、だからアメリカは援助(エイド)を届けているのだ、それにもかかわらず独裁者マドゥロは受け取らない、人々を盾にする悪い独裁者という報道を繰り返す。
そこで、アメリカ人ジャーナリストのマックス・ブルーメンソールが現地からレポート。
Investigating Venezuela's 'humanitarian crisis': Max Blumenthal tours a supermarket in Caracas
金持ちエリアの大きなスーパーマーケットにいって、棚にずらりと普通に大量にものが並んで人が買い物している様子を撮影してそれがネット上に流れた。
ものはある。とてもたくさん。でもインフレで高くなってるのが問題。でもでもドル持ちのお金持ちにとってはなんてことのないレンジではある。
また、ベネズエラ通貨を投機してインフレを誘って一般人に経済戦争を仕掛けているのはアメリカでもあるが、ベネズエラの金持ち、キャピタリスト集団だという話も中でしてる。
このへんは少なくとも去年からそういうレポートを私は見ていたので驚かない。ベネズエラ通貨を持ち出してコロンビア側で紙の束を売りさばいたりしている様子がレポートされてた。また、物品がベネズエラにないとか言ってるけど、その物品を手にいれてコロンビア側に持ち出す人々の群もいた。
ベネズエラ内の貧しい地域、人々に対しては食料は無料で配布されているようだ、という話も読んだ。まぁそうなんじゃないですかね、現状落ち着かせるためにはそれが一番でしょう。
アメリカがマドゥロがやってるエイドと同等をするためには、トラックで何百台かは必要で、今やってるスケールじゃ足らないという計算をしてるブロガーも見た。みんな面白いね。
コロンビア側から支援物資を積んだトラックが突っ込んでくるというシーンもあった。どんな支援やねん。
赤十字のシャツを着た男がベネズエラの正規の治安部隊が並ぶ中でわざわざ突っ込もうとしているのかうろつくというシーンもあった。
とかとかで、
要するに、昨日見せられたものからわかるのは、カラー革命対策本部にとって最も重要だったのはメディアの独占だったんだなというところでしょうか。
つまり、実は現地ではいろんな人たちがいて、西側がターゲットにする「独裁者」とかいう怪獣イメージのそれは、現実には大量の一般人を落ち着かせるために奮闘していたりする。しかしそこで何か事件が起こる。治安部隊が一般人を制止しようと暴力行為っぽいことをする。すると、よーしと映像を取って、それを世界中に振りまいて、やっぱり独裁者は、などと言い出して、こうなったら「国際社会」は断固たる処置を取らないと一般人にとって危険すぎますね、とか言い出す。ベネズエラの人々を助けよう!みたいな。
といった成り行きの一切合切にとって大事なのは、上で見たようなブルーメンソールが見る映像が、知られない事。今回は逆のことがおこってる。
今回もちろんその役に立っているのは、一般人のtwitterと、あちこちで立ち上がっている少人数ではあるけど情報をまとめようとするサイト。そして、現地と政治状況をタイムリーに集約して出してくるRT、スプートニクなどのロシアの英語、フランス語、スペイン語でのメディア。
個人的にうけたのはこれ。
コロンビア側の国境付近に黄色のバラが運び込まれてた。
リチャード・ブランソンの国境付近でのコンサートといい、理想のイメージとしては、川を挟んで対峙していたベネズエラ軍の兵士がコロンビア側に投降してくる、そこで黄色のバラ、なんじゃないですかね。
グアイドは最初っから、ベネズエラ軍の兵士、将官の投降に非常に拘っているが、これがつまり、彼が上から成功の条件として言われてることなんでしょうね。実際それは正しいわけだけど。
が、投降してくる大量のベネズエラ軍のシーンが撮れない!
グアイドは、悪いアドバイザーに吹き込まれてなかなか諦めきれない!!
バラ革命だのオレンジ革命だのというのはこうやって全部映画を作るような手法で、現実をそこに当て嵌めていたという話だったんだなぁと改めて思う。
が、今回は、いろんなポイントで一般人が見張ってて写真撮ってアップしてくる。
タイムリーに!!
これが重要。昔から、あの時この時実はこんなだった、おかしいんですよあの話はみたいなのはよくあるし、工作のために入り込んだ人が写真に写ってるなんてこともある。
が、今まではそれが後でわかった。後の祭りだった。
今回はリアルタイムで追っかけているので、「映画」のような閉ざされた空間になってくれない。
と、こういう話だろうなぁと思う。
そして、それらのタイムリー情報が散発的にならないのは、RTあたりが集約してtwitterを紹介して、それが記事となってまた拡散するという仕掛けがあるから。西側メディアからしたら小さい、小さいユニットだが、個人のtwitterやブログではできないほどには大きい。
ということで、現在見せられているのは、ストーリーを管理しながら映像を撮って来た集団の「メーキング・カラー革命」のようなものでしょう。カラー革命見せるつもりだったのに、メーキングを見せてしまってる、みたいな(笑)。
■ とはいえ油断はできない
しかし、これで油断してはいけない。当然だが。ネオコンやらCIAという人たちには慈悲も理性もない。
■ 続き
対峙しているベネズエラ治安部隊と一般人の間で小競り合いが発生している。エイドを積んだトラックがバリケードを押し破ろうとして生じたもののようだ。このトラックは先にも突破しようとしていた。
また、グアイドはペンスに会って、正式にマドゥロを倒してくれと要請しようとしている模様。
‘All options open’? Venezuela’s Guaido set to meet Pence, ‘formally’ requests aid to topple Maduro
https://www.rt.com/news/452278-pence-guaido-venezuela-sanctions/
夜になって火を投げ込んでる人たちが現れた模様。火炎瓶みたいなものか。何が何でも秩序を崩したいようだ。マイダン化を狙っているな。
Venezuela crisis: Border clashes, ‘masked thugs’, ‘torched aid’ & fake Red Cross
https://www.rt.com/news/452275-venezuela-crisis-border-tensions/
他方、この混乱の前に、コロンビア外相は援助用のトラックに戻るよう命じているようだ。
Colombian leader orders humanitarian convoy to return http://tass.com/world/1046145
ということは、混乱を恐れてトラック帰還を命じられたので現場が反発してる、みたいな状況か? ますますマイダン化。
ということろでコロンビアは自分の責任問題を考えた方がいいのでは? コロンビアも別に政情が安定しているところではないから、これ以上混乱したら自国内の相対的に貧困なクラスが反発するのじゃなかろうか。そしてそれは直ちに兵士に影響します。
■ オマケ
なぜベネズエラ国軍の投降に拘るのか。
理性的な判断として国軍が崩れることがクーデター勝利の条件だというのは正しいが、それだけではないと思うな。
2014年のウクライナのマイダン広場の暴力クーデターをしつつ、クリミアを取ろうとしていた西側だったが、クリミアに展開していたウクライナ海軍は、一気に、ロシア海軍に投降した。
ウクライナ海軍は小さく、かつ、当時の将校はみんなソビエト育ちの将校なわけだから、ロシア軍がマジで出て来た以上万に一つも勝ち目などないことはみんな知ってる。だから無駄な血を流さないために投降したというのは理屈に合う。
ウクライナ人もロシア人も誰でも納得する話と言ってもいいでしょう。広義のロシアにとってクリミアがどれほど重要かをしらない現地人はいないともいう。
しかし、仕掛けたネオコン(というより多分200年越しで挑んでる大物金融屋)にはそうは映らない。これは歪んだ屈辱なんだろうと思うな。だからロシアが支援するベネズエラの国軍を崩そうというモチベ―ションが捨てきれない、捨てようと思っても忍び寄る。
ということだったりしないんだろうかと想像してる。ドラマの背景に流れる怨念みたいな色彩。
また、陰から支配しようとする金融資本にとっての究極の敵は本物の国軍、つまり人民軍でしょう。なぜなら国軍は the peopleの側につくから。
ベネズエラの「我ら人民の軍」を壊そうとする米
『支援物資搬入で大混乱、死傷者300人超 国家警備隊60人脱走 ベネズエラ』2019年2月24日
ですが、なんとも恐ろしげな仰々しいタイトルと、それに添付した画像とが少しも一致しない。
一方が、もう一方の主張を丸々否定しているのですから、???
意味不明なのです。
野外テントまで用意したコロンビア側で動員した人数が、写真では最大でも数百人程度と少なすぎ。
国境の橋では、支援物資を積んだトラック2台がバリケードを突破したが、マドゥロ大統領派に停止させられて放火された。空に煙が上った。
と書いてあるが、写真ではコロンビア側暴徒が火炎瓶を投げている姿が写っているので、
記事を書いた記者と、カメラマンが内輪喧嘩の真っ最中らしいのですから大笑い。
呼びかけ人・26名(2019年2月21日・東京)独立国の主権の尊重と内政不干渉という国際規範に則った対応を…【ベネズエラ情勢に関する有識者の緊急声明 ~ 国際社会に主権と国際規範の尊重を求める
に対して岩上安身が、
日本政府の属国的な対応と比して、果敢な声をあげた知識人たちに敬意を表したい。ベネズエラの主権が侵されるのを見過ごしてはならない。70年代にチリのアジェンダ政権がクーデターで覆され、新自由主義の実験場にされたことを見過ごしてきた結果が、現代の極端な格差拡大などの問題に直結している
とツイート
今まで国連人権理事会やマスコミが無視してきたアルフレッド・ド・ザヤスなどの国連特別報告者のレポート『ベネズエラの混乱の最大原因を米欧による経済制裁だとする』報告書が出てきたり、
遅かったが、やっと日本の護憲左派のジャーナリストや有識者にもまともな声が出てきた。
ただ、日本共産党のページを見てきたら「国会の選挙でマドゥロ政権の経済政策に批判的な野党が勝利したが、政権側は結果を認めず制憲議会を作ろうとして云々」と書いてありました。これはどういうことなのでしょう?共産党に何か事実誤認があるのでしょうか?
制憲議会の制定がけしからんという話は2017年で、大統領選挙があったのは2018年なので、とりあえず別の事情と言えると思います。
もちろん、2017年の成り行きがけしからんという議論はあり得るでしょう。しかし、制憲議会の制定はベネズエラ最高裁が認めているので、これを全部けしからんというのなら、それはつまりマドゥロ政権全部がけしからんというしかなくなるんじゃないでしょうか。
私はこのへんは内政干渉の部類だと思います。じゃあ、解釈改憲やってる日本はけしからん、と中国が「軍事オプションも辞さず」日本人民を助けるのだと言われてることを考えてみればいい。
しかも「最高裁が」議会を無効宣言、マドゥロはむしろ「やり過ぎ、再考した方がいい」と止めてるのに。
はあ・・・もう国民がベネズエラ議会が機能していない、民意を反映しない偽物として切り捨てたと考えるべきでしょうか?それで大統領選挙の勝利なら、もうマドゥロを非難すべき理由は無くなりそうですね。
特命希望さんの情報をググッテいる中で↓の記事を見つけました、ブロク主さんは先刻承知の事かも知れませんが今回のベネズエラ政変の正しい認識に役立つのではないかと思いリンクのみ紹介します。
ベネズエラ大使館公式SNS から
http://venezuela.or.jp/embassy_web/wp-content/uploads/2017/09/f12dbdd50b7cbc107e633e3056ac62d3.pdf
制憲議会設立に際しての驚くべき裏話
ご紹介ありがとうございます。重要な経緯がまとめられていると思いました。
で、中にもありますが、この野党というのを通常の意味での野党と考えると先進国民は誤解しますね。だって、政体をひっくり返すまで妥協がない野党ですから。
そこをなんとかしないと一体感のある国にはなれないわけで、そここそ大事なのに外国介入がやまない。