建交労長崎県本部

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トラック運転手、長時間労働の実態とその原因・背景~建交労のトラック政策⑫

2017年07月08日 09時23分12秒 | トラック政策

(1)トラック運転手は月間70時間、年では840時間以上もの長時間労働

全日本トラック協会の調査によると、トラック運転者の年間実労働時間は、「規制緩和」以降暫減傾向が続いていましたが、2002年以降増加に転じ、月間実労働時間、年間実労働時間とも長時間傾向が続いています。

平成23年度版の「トラック運送事業の賃金実態」調査結果では、従業員の平均月間労働時間をみると、全職種平均で所定内170.9時間、所定外46.5時間、合計217.4時間(前年215.1時間)となり、前年より2.3時間長くなっています。また事業別では、特別積合せトラックで所定内171.4時間、所定外51.1時間、合計222.5時間(同225.2時間)で、前年より2.7時間短くなっています。

一方、一般トラックでは、所定内170.6時間、所定外42.7時間、合計213.3時間(同210.6時間)で、前年と比べると2.7時間長くなっています。

職種別には、特積み、一般ともに男性運転者の所定外労働時間が長い傾向となっています。年間労働時間では、特積みでは2,598.9時間、一般では2,482.5時間となっています。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査全国調査」(事業所規模5人以上)による1人平均月間所定内・所定外労働時間(平成24年)では、調査産業計では所定内労働時間が136.7時間、所定外が10.4時間、合計147.1時間であり、これと比べると特積みでは、所定内34.7時間、所定外40.7時間、合計75.4時間、一般トラックで所定内33.9時間、所定外32.3時間、合計66.2時間と長くなっています。

月間で約70時間、年間で840時間も長く働いている事になります。トラック運輸産業の長時間労働は全産業中ワースト1であり、人間らしい生活をめざす私たちにとっても雇用確保・企業存続を願う業界にとっても、その改善が極めて重大な課題となっています。

 

(2)長時間労働の原因と背景一労基法違反の低賃金・荷主の横暴・業界構造など一

トラック運輸産業の長時間労働は、仕事自体の特性と低賃金構造がリンクするなど、労働法規を無視して労働者を使用する経営者も多く存在します。

2013年10月8日の厚生労働省の発表では、2012年のトラック事業場の監督実施事業数は4,325か所となり、その内、労働基準法等関係の法令違反は3,517か所で81.3%の違反率に達しています。労働時間に関する違反が2,425か所で56.1%、休日が232か所で5.4%となっています。特に、改善基準告示違反は2,751か所で63.6%となっています。内容では、総拘束時間が1,633か所(37.8%)、最大拘束時間が2,238か所(51.7%)、休息期間が1,766か所(40.8%)、最大運転時間が875か所(20.2%)、連続運転時間が1,535か所(35.5%)、休日労働210か所(4.9%)となるなど、労働時間関係違反が多数となっています。

加えて荷主・ユーザーの横暴や交通問題など、社会的構造との関係で実に様々な問題がからみあって生み出されています。

①所定外労働と長時間拘束を前提とした勤務体系

基幹職種である運転者の場合、自分の意志で労働時間を短縮することが難しいという問題があります。交通事情の悪化や、積み込み・積み下ろしの時間待ちなど、所定外労働を前提とした勤務体系が決められています。特に長距離運行の場合は、2003年の貨物自動車運送事業法の改正により「営業区域」が撤廃されたために、「出っ放し運行(6日間144時間運行)」が行われ、大都市近くのトラックステーションの駐車場では、早朝からほぼ満車状態です。地方の大型トラックがひしめき、運転者はキャビンのベッドで睡眠をとります。金曜の夕方に入ってきたトラックは、いつ獲れるとも知れない「帰り荷」を待って、月曜の夕方まで三泊四日を過ごすこともザラです。燃料価格が高騰し始めた頃から、こうした帰るに帰れないドライバーが目立っています。また、荷主の都合に合わせた運行になるために、自分たちの努力では時間短縮が困難なケースが多々あります。トラック労働者には、こうした仕事の特性が長時間労働の基本問題として横たわっています。

②低賃金構造とリンクした長時間労働

トラックドライバーの賃金体系からも長時間労働を余儀なくされている実態があります。零細企業などに見られる、運収の30%や35%が賃金として支払われるオール歩合制や、大手を見ても基本的な賃金が低く抑えられ、歩合や時間外手当など変動給が多いのが実態です。このことが労働時間短縮=賃金ダウンとなり、時間短縮や休日取得の妨げになっています。

③荷主の横暴による手待ち時間と最近の動向

ⅰ スーパーやコンビニエンスストア等では24時間・365日営業が当たり前になっています。こうした関係でトラックの業務も24時間・365日の運行や配送が余儀なくされ、荷主側の都合による厳しい時間指定や荷待ち時間があり、長時間労働の原因ともなっています。特に、流通業界大手の集約センターや、食品関係等では納入・搬出時間が決められ荷積・荷降ろしするトラックが集中するにもかかわらず、施設の不備などから限られた台数による作業を強要され、長時間にわたる荷待ち時間が発生する事案が顕著に見られています。運賃が距離や重量で支払われる為に、輸送に掛る時間が度外視され、荷主側の「トラックは待たせても運賃は変わらない」とした意識が荷待ち時間の短縮に向けた弊害となり、長時間労働が蔓延している実態もあります。

ⅱ 荷物の積み下ろしにおける手待ち時間は労働時間として争われた裁判で、横浜地裁相模支部は2014年4.月24日に、「待機時間を労働時間と認める」判決を下しました。業界内では、待機時間=休憩時間との意識が強く、トラックを離れる事の出来ない状況時も休憩時間としている事業者も多くあります。全ト協では、ドライバーへの指示が不明確になっている事が問題であり、待機時間などの指示を明確にするよう会員へ呼びかけています。



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