国連のグテーレス事務総長は、サイクロンで大きな被害を受けたアフリカ南部のモザンビークを訪問して、温暖化対策の緊急性を国際社会に訴えました。
その背景には、このままでは温暖化の流れが後戻りできなくなるという強い危機感があります。
グテーレス事務総長は12日、ことし3月に発生した暴風雨サイクロンで甚大な被害を受けたアフリカ南部モザンビークを訪問し、まだこわれたままの小学校や避難した人たちがテントで暮らすキャンプを視察しました。
モザンビークのサイクロンについてグテーレス事務総長は、こうした異常気象は温暖化が影響しているという認識を示しました。
そのうえでNHKの取材に対し、
「世界の災害はより激しく、より頻発し、より破壊的な結末をもたらしている。
われわれはいま世界で起きていることが地球と人類にとっていかに危険かを理解しなければならない」
と述べて国際社会に対して温暖化対策へのさらなる行動を呼びかけました。
温暖化対策をめぐっては4年前に、新たな枠組み「パリ協定」が採択されましたが、気候変動に関する政府間パネルは、協定に基づいて各国が計画した対策だけでは不十分だと指摘しています。
また、スウェーデンなどの科学者グループは、去年8月、世界の平均気温が現在よりもおよそ1度以上高くなると北極や南極の氷などに閉じ込められていた二酸化炭素が大気中に放出されることで温暖化が加速する悪循環に陥って後戻りできなくなるとする研究結果を発表しました。
グテーレス事務総長はこうした研究結果を深刻に受け止めており、一連の発言の背景にはこのままでは温暖化対策が手遅れになるという強い危機感があるものとみられます。
世界の平均気温が約1度上昇で
スウェーデンなどの科学者のグループの発表によりますと、世界の平均気温が現在よりもおよそ1度以上高くなると北極や南極の氷や永久凍土などに閉じ込められていた二酸化炭素が大気中に大量に放出されるとしています。
そうなると、人類が、温室効果ガスの排出を抑制するなどの対策をとっても温暖化の進行を止めることができない悪循環に陥って後戻りできなくなり、最悪の場合、世界の平均気温は現在よりも3度から4度高くなるとしています。
その場合、海水面は現在よりも10メートルから60メートル高くなり、世界各地で人が住めなくなるということです。
また、4年前に採択されたパリ協定の目標が達成されたとしてもこの現象を止められないかもしれないとしていて、排出削減を急ぐべきだと警鐘を鳴らしています。
世界の平均気温は10年間に0.17度のペースで上昇しています。