中国には信仰の対象の山として五岳がある。その中で最も重要とされるのが泰山である。皇帝は即位したとき、その正当性を示すために天地を祀る「封善の儀」を行うことが定められていた。その封善の儀が、この泰山と麓の岱廟で行われた。始皇帝以降72人の皇帝の儀が行われたというから、聖地である。
この泰山は、標高1545m。それほど高いわけではないが、麓からはほとんど直登の階段がついている。9km7412段というが、急勾配が途切れない。
[左]登山道の頂上。 [右]登山道。みんなしんどそう。
そんな霊験あらたかな山だから、是非登ろうと勇んでみたが、かなりしんどそう。「まあ外国人なのだから」と、自分で理屈をつけてロープウェイを利用することにした。
寺院はかなり絶壁の上にある。
碧霞祠
山上には山の神様の娘、碧霞を祀る碧霞祠があった。こんな山上にしては見事な建物である。
しかし、自然院の目的は、これではない。奥にある唐磨崖である。
唐磨崖。金色の碑が「紀泰山銘之碑」
書道史上、泰山は重要な意味を持つ。始皇帝は自らの功績を讃えた文章を石に刻ませて7つの名山に建立した。その一つが、ここ泰山刻石である。その後、いろいろな人が刻石した。字体も篆書・隷書・楷行草書さまざまである。その中で最も有名なものが玄宗皇帝(楊貴妃の亭主)が封善の儀を行った時に彫られた「紀泰山銘之碑」である。金色でひときわ目立つ。
中国は文字の国。いかにしてメッセージを多くの人に伝え、後世にも残るようにと腐心したのか。甲骨文、金文、帛書、木簡、竹簡 ・・・・ 紙が普及するまで、いろいろ工夫し材質に合せて字体も変化させてきた。自然院も書道を嗜む輩のはしくれであるからして、古人の思い入れを感じながら魅入った次第です。
[左] 「孔子小天下所」は、孔子が泰山に登った時に「泰山に登ると天下は何と小さいことか」と歎じたという故事を表す。
[右] 真ん中の石碑は無字碑と呼ばれ、何も書かれていない。あまりの眺めの美しさに言葉が出なかったからだという。ユーモアなのかマジなのか。2100年前、漢武帝時代の建立。
芭蕉の名句、「ああ松島や、松島や」にも通じるような。
この山の岩は泰山岩と呼ばれ、砂岩系(間違っていたらごめんなさい)で出来ている。表面に流紋を持ち風格があること、刻字のために表面を平らにするには丁度良い固さとを持っている。なるほど石刻場としては最適かなあと納得した。
[左]ホテル入口に飾ってあった泰山石。この石ひとつで深山幽谷を思わせる風格がある。
[右]「仙人橋」と呼ばれる石。自然の造形は時として面白いことをする。
実は小生、山東省潍坊市に居ます。去年は長沙にいました。
実は自然院さんともお会いしているんです。去年の5月、烈士公園サイドの食堂で。日本から来たお客さんと一緒に食事をした時です。
またどこかでお会いするかもしれません。その時はよろしくお願いします。