湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

海へ

2018-05-26 15:12:20 | 日記
昨日の夜中
眠っていた私に

母が私を呼ぶ声で目が覚めた

夢ではなく声がした
なぜか胸がドキドキした

空耳だろうと思ったけど
あまりのリアルさに
あたりを見渡したけれど
当然のごとく
誰もいやしない

朝になって
何の気なしに
父のお位牌にタバコを置いた

庭に出てみると
母が一番大切にしていた紫陽花が
やっと花を咲かせ始めていた


写真を一枚
取った後にすぐスマホが鳴った


『ドックに入っていたクルーザーが帰ってきました。明日、お天気が良いらしいということで、海南市と和歌山市の間の水域で、散骨のお供養をさせて頂きます』


いつもながら、和歌山のイントネーションで丁寧な口調


散骨をして下さる会社の社長の声だった


『ありがとうございます。よろしくお願いします。ご連絡受けただけで、涙が出てきました』


『何をおっしゃってるのですか。
お父様とお母様は、喜んでいらっしゃると思います。あれだけ面倒を看てもらえて喜んでいないわけはないでしょう。
しっかりしてくださいね。
終わりましたら、散骨証明と、かなりの枚数の写真をSDカードに入れて、お送りします。また、ご連絡させて頂きます』

そうして
その時の涙は
社長の元気な声に押し戻された


買い物に出ようと支度していた時間だった
車で聞こうとしていたCDと荷物を
助手席において
エンジンをかけて
音楽を流した


昨日の夜中の母の声のこと
朝、わけもわからず父にタバコをあげたこと

昨日、初めて私が
アレンジメントフラワーの
講習会に参加して作った花を
ご仏壇の横に据えたとき

『今度はもっと綺麗に活けてくるからねー見ててねー』って言ったっけ。

そして、和歌山からの電話

何もかも
明日に向かっていたんだと
思った途端に
涙が一筋
拭っては一筋

ヤバっ
お化粧がダメになる

しかし、
静かに
静かに
一筋づつ流れ出る

きっと
数日かけて
細かくパウダーにされたものは
黒潮にのり
近くの海までやってくる

数日したら
私は海に行こう

1人で海に行こう

そして
話しかけよう


その時は
号泣するかもしれないけれど












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