湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

古本屋デビュー

2018-05-15 20:42:41 | 日記
昔、小学生のころ
お小遣いがほしくて
親にも言いだせず
何か手立てはないものかと考えてた。
何が欲しかったのか、もう忘れてしまったが、なんとかならないかとずっと考えていたことだけ覚えてる。


その少し前に
隣の街に連れていってもらった時、
本を持っていけば買ってくれる本屋さんがあるんだと
駅前下がりの通りを車の中で
教えてもらったことを思い出した。


その時、
何故、本が売れるのか?
持ってる本は、買ったり、
買ってもらったからこそ自分のもの。
それをまた人に売るという。
それで、大金になるのか?

これは、不良のすることなのか?

頭の中でぐるぐる回りながら、
それでも
『背に腹はかえられぬ』と思ったのだろう。

無論、そんな言葉も知る由も無いほど、小学生の頭は、
何やら大金になるやもしれぬと
ほくそ笑みながらせっせと、新しそうな本や珍しそうな本を家じゅう探して回っていたように思う。


兄が漫画が好きで集めていたけれど
後から怒られても仕方がないので
兄にだけは本当の事を言って、少し協力してもらった。


隣街には、電車でひと駅
母の実家の街なので何度も行っている。
駅から降りたら、まっすぐ浜通りを下っていけば、その店はあるんだ。


しっかり頭の中に地図は入っている。
隣街までの往復の電車賃は
兄が出してくれるということだったので心配はない。


でも、大丈夫だろうか。
不良に見られるんじゃないか。


そう思いながら、
とぼとぼと重たい本を抱えながら
駅下がりの道を歩いていた。

確か夏休みだったか春休みだったか。

駅前は、賑やかで
スーパーニチイの前には、沢山の大人の人達が買い物に来ていた。


誰かに会っちゃいけないんじゃないか。
私は、これから、大金を替えにいくのだから。
下を向いて歩いていたほうがいいかもしれないと思っていた。
悪いことでもするかのような心境だった。


その店の前に来た時、胸がドキドキした。

けれど、ここまで来て、店に入らないというのは、私が歩いてきた道のりをまた、うつむいて本を持って歩いていくと言うこと。


えい、入ってしまえー


『親が本を持っていけと言ったから来ました。買って下さい!』

店の人を見かけるなり
堰を切ったように話し始めたように思う。

今なら、身分証明書も必要だし、第一に、小学生は相手にしないだろう。
まだ、穏やかな時代だったのだ。


『はーい、そこおいて。中をみるからねー』と、おじさんは言った。


私は、じっと、おじさんの手元を見つめていた。

帰りは大金をどうやって持って帰ろうと思いながら。


おじさんは、
『じゃ、これで』といって、120円ほどのお金を握らせてくれた。

えー。これだけ。

あまりの金額の少なさに
あの本達に申し訳ないような気がした。
それに、大金が入るとばかり思っていた自分は、なんて馬鹿だったんだろうと。


元来た道をわずかなお金を握りしめながら、また、とぼとぼと歩いた。


2度目のスーパーニチイの前は
恥ずかしい思いで下を向いて歩いた。


家に帰るとすぐ、
母が
『いくらにもならんやったやろ?
ええ勉強してきたなぁ。』と
ニカっと笑った。


私の行動は親には筒抜けで
それでも黙って行かせてくれたのは
社会勉強の一つだったと後から聞いた。


兄は私を思い、親には告げ口はしていなかったが、すべてお見通しの母に対して、なぜか、申し訳なさと、敗北感。
本を売ると言うのは、こんな厳しいものかと。



今はもう、子供がこんなことはできない。
今はもっと画期的に、スマホ一つで宅配業者が古本を取りに来てくれる。


いま、うちの家では色んな片付けの真っ最中。
サービス過剰と言われつつも、
それを利用することにした。


ダンボール箱2個を
『いくらになるか』
ほくそ笑みながら、宅配業者に渡した私がいる。

『いくらにもならんやったやろ?』

頭の上で母の声がしそうだ。


いやいや、リベンジだよ。
あの時の、、、か?


笑いがこみ上げてきた。
コーヒー何杯分になるかな?
もちろん、セブンの(笑)







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする