瓢簞舟の「ちょっと頭に浮かぶ」

こちらでは小説をhttps://kakuyomu.jp/works/16816700427846884378

その六

2015-08-30 18:25:50 | こんにゃく問答
「それは何?」
「これ?」
「そう、それ」
「何? って訊かれても……」
「知らないの?」
「……」
「知らないものをよく売り物にするね」
「知らないものでも売り物にするのは可能でしょ?」
「そうかい?」
「ま、知ってるから売ってるんだけど」
「なんだ、知ってるのか」
「……」
「早く教えなよ」
「わかる人にはわかるから……」
「わからない人には教えなよ」
「わからない人には教えてもわからないから……」
「バカにしてんの?」
「……」
「焦らさないで教えなよ」
「…怒ってるでしょ?」
「怒ってないよ」
「いや、怒ってる」
「怒ってないって」
「今日はもう店じまい」
「おい、ちょっと……」
「これが何だかわかるようになったら、また来なよ」


いつだか、こんなやり取りをした。ふと思い出しあの店へ足を向けた。だが、どこをどう探してもあの店が見つからない。
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