酒匂川の下流部は、全国で絶滅危惧種(環境省)とされているコアジサシ(下記写真)の集団繁殖地です。
小田原市の「市の鳥」もコアジサシなんですよ(^_^;)
ところが、酒匂川で「1個体も繁殖しない」(つまり雛が全滅)なんて年が多いという問題を抱えてます。
■■■■■コアジサシってどんな鳥????■■■■■
コアジサシ(英名Little tern)の繁殖生態として以下特徴があります。
■(1)季節は?
5月に東南アジアから飛来して7月頃まで雛を育てて、秋に東南アジアへ戻る(夏鳥という)。
■(2)産卵環境と餌は?
中州などの広い砂礫地の地面に直接、卵を産み地上で雛に餌(小魚)を与える。
■(3)酒匂川のどこにいるの?
集団繁殖地(コロニー)を形成し、親鳥がキュリーキュリー鳴きがなら群れ飛ぶので、関心があれば見つけやすいですよ。
集団繁殖地(コロニー)が例年形成されやすい場所は、
・国道一号線酒匂橋あたりの中州
・飯泉取水堰~JR鉄橋の中州(下記写真)
・小田原アリーナあたりの中州
・大井高校あたりの中州など。
■(4)外敵は?
猛禽類のチョウゲンボウや野良犬、タヌキなどの肉食哺乳類に雛が食べられてしまいます。集団繁殖地(コロニー)を形成し、親鳥は集団で外敵を威嚇して雛を守ろうとします。
威嚇とは言っても、しょせんハトよりちょっと小さい鳥(全長27cm)。親鳥が外敵を追っかけ回してキーキー鳴きわめいて脅しをするだけ。嘴で外敵をつつくまでのことは滅多にやらない。実は臆病者なのです。
■■■■■繁殖失敗するのはなぜ????■■■■■■■
こんな弱気な性格なんで、問題点は以下のとおり。
■(1)雛は飛べないし泳げない
梅雨時期の台風等の大雨で、丹沢湖のダム放水の規模が大きいと、繁殖地である中州が水没し卵と雛が全滅する。
■(2)釣り人
鮎釣りの釣り人が中州に長時間はいると、親鳥が警戒して、雛に餌を運ばなくなり、雛の生育が遅れたり、飢え死にする。でも多くの釣り人は、なぜ鳥がキーキーわめいているのか知らない。漁協との協力関係が大切。
■(3)哺乳類による捕食
流量が減って中州が陸と繋がると犬、タヌキ、キツネ等の外敵が侵入し、雛を食べてしまう。
■(4)上空からの敵(チョウゲンボウ、カラス)
近年繁殖失敗がつづき、親鳥数百羽という大規模なコロニーが形成されない。数十羽程度の小規模なコロニーばかりになってしまった。小規模なコロニーだと、親鳥による集団防衛力が弱いのでチョウゲンボウ、カラス等の上空からの敵に雛を食べられてしまう。
■(5)繁殖地の劣化
大雨が無い年が数年続くと、中州に草が生えてしまい、繁殖地として利用されなくなる(平成21年までの要因)。大雨が全く無くてもダメで、大雨があるとその年は雛が全滅するというなんとも難しい鳥です。大雨の翌年から数年が、繁殖成功するチャンス。
などの問題があり、酒匂川では、近年、毎年、ほぼ全ての雛が死んでしまっている(繁殖失敗)。繁殖失敗しても、親鳥が死ぬわけではないので、翌春また飛来するのですが、何年間も繁殖失敗してると、親鳥も年老いて徐々に死んでしまいますし、酒匂川に愛想を尽かして、他の繁殖地を求めて他県へ行ってしまうんではないかと危惧されてます。
もともと、繁殖を毎年成功するような性格の鳥ではないのですが、他県の繁殖地も、毎年うまく繁殖しているところはほとんどありません。なので環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種になっているのです。
■■■■■■保護活動はやってないの???■■■■■■
やってますよ。産卵場所(中州)の環境整備などをやってるんですが、なかなかうまく成果が出ないというのが現状です。
いままでは、中州に草が沢山生えてしまい、産卵に適さ無くなっていたので中州の環境整備などをやっていました。また、大雨で中州が水没するときに雛が逃げられるように、相撲の土俵のような高台を中州に作ったこともありました。
産卵場所の整備は、地元企業も参加しての市民イベントにもなっているので、下記の朝日新聞のように昨日(2013/3/16)も「市の鳥・コアジサシの郷づくり」として行われました。
しかし、平成22年の台風9号以降酒匂川の環境は大きく変わりました。台風9号以降、数度にわたる台風などで、中州の草木は流出してしまいました。このため実は産卵に適した「広い砂礫地の中州」は、あちこちにできました。
なので今後は、産卵場所以外の保護活動に重点をシフトする必要があります。
市役所の募集案内「市の鳥・コアジサシの郷づくり」へのリンク
■■■関係者はどうなってるの??■■■
私ども野鳥の会だけでなくいろいろな方の協力を得てやっています。
・日本野鳥の会神奈川支部西湘ブロック(通称:野鳥の会)
・小田原市役所(環境部環境保護課)
・神奈川県小田原土木センター(県の出先機関、酒匂川を管轄)
・酒匂川漁協
・地元企業・市民の皆様
■■■もっと知りたい!、活動に協力したい方は■■■
■(1)ブログ「Little tern's Room」に過去の活動と繁殖記録が掲載されてます。
http://a011w.broada.jp/sasibatokoazisasi/
■(2)日本野鳥の会神奈川支部西湘ブロックの活動に参加してみて下さい。
非会員も参加できます。申込み問い合わせ先は、上記Little tern's Room。
以上、伊豆川哲也(ブリ森レポーター、野鳥の会西湘ブロック)
小田原市の「市の鳥」もコアジサシなんですよ(^_^;)
ところが、酒匂川で「1個体も繁殖しない」(つまり雛が全滅)なんて年が多いという問題を抱えてます。
■■■■■コアジサシってどんな鳥????■■■■■
コアジサシ(英名Little tern)の繁殖生態として以下特徴があります。
■(1)季節は?
5月に東南アジアから飛来して7月頃まで雛を育てて、秋に東南アジアへ戻る(夏鳥という)。
■(2)産卵環境と餌は?
中州などの広い砂礫地の地面に直接、卵を産み地上で雛に餌(小魚)を与える。
■(3)酒匂川のどこにいるの?
集団繁殖地(コロニー)を形成し、親鳥がキュリーキュリー鳴きがなら群れ飛ぶので、関心があれば見つけやすいですよ。
集団繁殖地(コロニー)が例年形成されやすい場所は、
・国道一号線酒匂橋あたりの中州
・飯泉取水堰~JR鉄橋の中州(下記写真)
・小田原アリーナあたりの中州
・大井高校あたりの中州など。
■(4)外敵は?
猛禽類のチョウゲンボウや野良犬、タヌキなどの肉食哺乳類に雛が食べられてしまいます。集団繁殖地(コロニー)を形成し、親鳥は集団で外敵を威嚇して雛を守ろうとします。
威嚇とは言っても、しょせんハトよりちょっと小さい鳥(全長27cm)。親鳥が外敵を追っかけ回してキーキー鳴きわめいて脅しをするだけ。嘴で外敵をつつくまでのことは滅多にやらない。実は臆病者なのです。
■■■■■繁殖失敗するのはなぜ????■■■■■■■
こんな弱気な性格なんで、問題点は以下のとおり。
■(1)雛は飛べないし泳げない
梅雨時期の台風等の大雨で、丹沢湖のダム放水の規模が大きいと、繁殖地である中州が水没し卵と雛が全滅する。
■(2)釣り人
鮎釣りの釣り人が中州に長時間はいると、親鳥が警戒して、雛に餌を運ばなくなり、雛の生育が遅れたり、飢え死にする。でも多くの釣り人は、なぜ鳥がキーキーわめいているのか知らない。漁協との協力関係が大切。
■(3)哺乳類による捕食
流量が減って中州が陸と繋がると犬、タヌキ、キツネ等の外敵が侵入し、雛を食べてしまう。
■(4)上空からの敵(チョウゲンボウ、カラス)
近年繁殖失敗がつづき、親鳥数百羽という大規模なコロニーが形成されない。数十羽程度の小規模なコロニーばかりになってしまった。小規模なコロニーだと、親鳥による集団防衛力が弱いのでチョウゲンボウ、カラス等の上空からの敵に雛を食べられてしまう。
■(5)繁殖地の劣化
大雨が無い年が数年続くと、中州に草が生えてしまい、繁殖地として利用されなくなる(平成21年までの要因)。大雨が全く無くてもダメで、大雨があるとその年は雛が全滅するというなんとも難しい鳥です。大雨の翌年から数年が、繁殖成功するチャンス。
などの問題があり、酒匂川では、近年、毎年、ほぼ全ての雛が死んでしまっている(繁殖失敗)。繁殖失敗しても、親鳥が死ぬわけではないので、翌春また飛来するのですが、何年間も繁殖失敗してると、親鳥も年老いて徐々に死んでしまいますし、酒匂川に愛想を尽かして、他の繁殖地を求めて他県へ行ってしまうんではないかと危惧されてます。
もともと、繁殖を毎年成功するような性格の鳥ではないのですが、他県の繁殖地も、毎年うまく繁殖しているところはほとんどありません。なので環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種になっているのです。
■■■■■■保護活動はやってないの???■■■■■■
やってますよ。産卵場所(中州)の環境整備などをやってるんですが、なかなかうまく成果が出ないというのが現状です。
いままでは、中州に草が沢山生えてしまい、産卵に適さ無くなっていたので中州の環境整備などをやっていました。また、大雨で中州が水没するときに雛が逃げられるように、相撲の土俵のような高台を中州に作ったこともありました。
産卵場所の整備は、地元企業も参加しての市民イベントにもなっているので、下記の朝日新聞のように昨日(2013/3/16)も「市の鳥・コアジサシの郷づくり」として行われました。
しかし、平成22年の台風9号以降酒匂川の環境は大きく変わりました。台風9号以降、数度にわたる台風などで、中州の草木は流出してしまいました。このため実は産卵に適した「広い砂礫地の中州」は、あちこちにできました。
なので今後は、産卵場所以外の保護活動に重点をシフトする必要があります。
市役所の募集案内「市の鳥・コアジサシの郷づくり」へのリンク
■■■関係者はどうなってるの??■■■
私ども野鳥の会だけでなくいろいろな方の協力を得てやっています。
・日本野鳥の会神奈川支部西湘ブロック(通称:野鳥の会)
・小田原市役所(環境部環境保護課)
・神奈川県小田原土木センター(県の出先機関、酒匂川を管轄)
・酒匂川漁協
・地元企業・市民の皆様
■■■もっと知りたい!、活動に協力したい方は■■■
■(1)ブログ「Little tern's Room」に過去の活動と繁殖記録が掲載されてます。
http://a011w.broada.jp/sasibatokoazisasi/
■(2)日本野鳥の会神奈川支部西湘ブロックの活動に参加してみて下さい。
非会員も参加できます。申込み問い合わせ先は、上記Little tern's Room。
以上、伊豆川哲也(ブリ森レポーター、野鳥の会西湘ブロック)