オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

九月末のオベロン会報告

2011-09-25 | のどぼとけ

21日には台風15号が激しく暴れ回り、
すっかり涼しくなってきた中、
24日の土曜日は、秋らしく晴れ上がり、
気持ちの良い外出となりました。

ちょっと息切れしながら鳥居坂を上り
前日初冠雪となった富士山同様、
美しい青空を背景に堂々とMORIビルが聳え立つのを見ながら、
国際文化会館に入りました。

この日は、千葉康樹さんが
「18世紀ゴシック小説とセンチメンタル・ノベル」
と題した発表をなさって下さいました。

実は、この日は最初別の方が発表予定だったのですが、
都合がつかなくなり、(困ったときの)千葉さんに
ピンチヒッターをお願いしたということでした。

いつものように発表前の楽しい雑談があり、
もっと話したいのを抑えて、千葉さんの
いつもながらに精力的な知的冒険の旅に出ました。

たまたま現在千葉さんが翻訳中の、ウォルポールの
ゴシック小説の代表作『オトラント城』
Walpole, The Castle of Otranto(1764)のあらすじを
とても分かりやすくお話しして下さった後、いよいよ本題に。

The Oxford World Classics の序文から、
『パメラ』(Pamela, 1740)を書いたリチャードソン(Richardson)や
センチメンタル・ノベルに対抗するかのような
ウォルポールの意気込みを見た後、
悲劇に喜劇的要素を持ち込むシェイクスピアのように、
『オトラント城』の描写、とりわけ名場面とされる
ManfredによるIsabellaの誘惑や奇っ怪な亡霊が出現するところや、
Isabella が地下を抜けて逃げていこうとする場面、
あるいはDiegoやJaquezなどがManfredと交わす会話の場面など、
昔の貴族の城館で、今のように電気などない時代だから、
きっと城内は恐ろしく暗くて不気味な感じがしていたのだろうとは想うものの、
よくよく読むと、いろいろな言葉の綾に
じつにコミックな感じが滲み出てくる。

そのあたりのところが、後のリーヴスの『イングランドの老男爵』
(Clara Reeve, The Old English Baron, 1777)の喜劇的な場面に
影響を及ぼすことになるらしい。他にも、な、なんと、
『パメラ』の文章をパクったような文章が『オトラント城』に見られたりする
という指摘など、尽きぬ興味を喚起する発表でした。
千葉さん、ご苦労様! 

愉しい知的興奮を味わった後は、いろいろ質疑応答があり、
和やかなうちに、いつもの生ビールとサンドイッチの会となった。

談笑の後、外へ出ると、
東京タワーがライトアップされていて綺麗だった!



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