オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

5月の例会報告

2009-05-31 | てこな姫
この週末は、日本英文学会が東京大学駒場キャンパスで開かれています。


そんなわけで、
オベロン会例会の集まり具合が気になっていたのですが、
初参加の方もあり、
ほぼ、いつもどおりの人数が集まりました。


東條さんの発表で、
ワーズワスの "Poems on the Naming of Places" を読みました。

今回、主に扱われたのは、5編の短詩のうちの最初の3編。


Dorothy Wordsworth の名を授けた "Emma's Dell" をうたった第1歌。

Mary Hutchinson(ワーズワスの妻) の末妹 Joanna Hutchinson の
名を授けた "Joanna's Rock" をうたった第2歌。

それから
詩人ワーズワス自身の名を授けた峰 (Eminence) をうたった第3歌です。


ドイツ留学 (1798-99) から戻って
湖水地方に居を定めたワーズワスが、
大自然に抱かれて、
Excursion を繰り返す生活を始めた
その頃の軌跡をたどることのできる作品です。


第1歌の冒頭、早くも
ワーズワス的としか言いようのない行が現れ――

The budding groves seemed eager to urge on
The steps of June; as if their various hues
Were only hindrances that stood between
Them and their object; ...


東條さんから、実に詳細かつ緻密な読解が披露されました。

(この4行については、
 "various" の含蓄もふくめて
 活発な質疑応答がなされました。)


また、第2歌中盤の自然描写――

    such delight I found
To note in shrub and tree, in stone and flower,
That intermixture of delicious hues,
Along so vast a surface, all at once,
In one impression, by connecting force
Of their own beauty, imaged in the heart.


ここでも、先の引用と並んで、
自然の「色調」や「多彩」に惹きつけられながら、
それを繊細かつダイナミックに読み込んでいく詩人を
みることができます。


"Poems on the Naming of Places" について、
『リリカル・バラッヅ』の中では「散文的」な作品であるとの
指摘がありましたが、
随所にワーズワスならではの自然との共感・交感があり、
自然空間と内的時間との織り成しは、
詩人ならではの独自の世界といえるでしょう。


オベロン会では、ひさびさのワーズワス。
すっかり堪能させていただきました。


東條さん、どうもありがとうございました。







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