オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

2月の例会報告

2009-03-01 | Weblog
今年はカラッと晴れた
東京らしい冬の日が少ないですね。

2月の日照時間は、記録的な少なさだとか。
27日には、雪も降りましたし。


28日のオベロン会、
川井万里子さんが『シンベリン』で発表してくださいました。


愚鈍で邪悪な王子クロートンは、
ヒーローであるポスチュマスのダブルであるという、
刺激的な指摘にはじまって、
イモジェンもポスチュマス同様
ヒロインでありながら不完全な存在であるという解釈が、
ていねいになされました。

そうした読みを踏まえて、
『シンベリン』における問題の場面
5幕2場の「首なし死体」のシークエンスについて
実に魅力的な解釈が提示されました。

不完全な主人公たちが、経験をへてより高い存在へと
変容を遂げていく――
『シンベリン』はその過程を描いた悲喜劇であり、
「首なし死体」の場面は、
登場人物たちの成長のプロセスにおける
大きな転換点の役割を果たしていると、
ラカンの精神分析まで援用して
鮮やかに展開してくださいました。


シェイクスピア作品の中では、
論じられることが比較的少なく、
「失敗作」と断じられることも多い『シンベリン』ですが、
今回の発表は、まさに「目から鱗」の連続でした。

川井さんもすごかったけど、
これだけ豊かな解釈を許してくれるシェイクスピアのテクストも
これまたすごいですね。

川井さんとシェイクスピアに乾杯です!










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