撮影協力 稲垣来三郎匠 (飯田市 上郷黒田)
飯田の老舗味噌蔵 「稲垣来三郎匠」さんの工場、味噌蔵をバックに。
おなじみのお味噌、漬物のみならず、いま、「稲垣来三郎匠」さんのホット・プロダクツは、甘酒。
米と米麹からつくられる、砂糖無添加の甘酒は、健康食マニアからも熱い注目を集める発酵食品。
お味噌の老舗だけに、発酵食品の取扱は、お手の物でしょう。
また、風越山麓を源泉とする清らかな水も、美食食品の製造に一役買っていることでしょう。
この夏は、甘酒アイスも発売中。
背後にそびえる風越山 (「権現山」という別称もあります。) 山麓の東端。
地元では、野底山と呼ばれます。
涼を求めて、「稲垣来三郎匠」さんから、 野底山方面に歩を進めた先の地に、この橋はあります。
( 実際は車で、10分ほど山側へ上りました。)
野底川は、風越山の東側を源流に、飯田の旧市内と旧・上郷町との境をなぞるようにすすみ、天竜川 ※1 に流れ込みます。
ちなみに、前出の名水100選の「猿庫の泉」は、風越山の西側のすそ野に。
風越山を挟んで、ちょうど反対側になります。
「蛙橋」 意味深なネーミング。
橋の下は野底川の清流。
渓谷は、川水の蒸発によって、熱が放出されるため、涼を求めるのには、最適な場所なのだそうです。
やっぱり・・・出ました、「カエルくん」
全国的に大流行のご当地キャラ。でしょうか。
でも、この子は、だいぶ年季が入っています。
最近の大乱発のご当地キャラブームの前から、この地に鎮座されている模様です。
というより、何を隠そう、この野底山地区の上流には、日本古来の品種で、絶滅危惧種の「モリアオガエル」の生息地があり、
長野県の天然記念物に指定されているそうです。
そういうことだったんですね。
ここの「カエル」キャラは、そんじょそこらのユルキャラなんかとは、ちょっとちがう筋金入りのご当地キャラだったんです。
上流にいる「モリアオガエル」さん。
そのほか、野生の猿、カモシカなどもこの地に生息しているそうです。
そっとしておいてあげたいものですね。
野底川の川岸、蛙橋のすぐ手前にある「姫宮神社」。
こちらも、意味深な名前の神社です。
小さな神社。
小さな社。
しかし、厳かで、どこかおどろおどろしい雰囲気。
太古からの歴史の繋がりを感じさせる、古木の杉。
「姫宮神社」は、人身御供(ひとみごくう)伝説 ※2 によりまつられた神社です。
「教科書では学べない歴史」の分野と言えばよいのでしょうか。
「日本むかしばなし」に登場しそうな、典型的な、アニミズムの世界。 ※3
この野底山地区には、ほかに「八王子神社」なる、神社もあります。
こちらは、江戸時代の山林の「入会権」 ※4 をめぐる抗争に由来する神社。
◆原始的な、アニミズム、山岳信仰と、実利的な山の利権抗争の血なまぐさい歴史。
この地域には、自然と人間が、野性の本能むき出しに生息してきた歴史が生々しく刻まれて。
現代の世の中では、なかなか体感できない、貴重な遺産が残っているように感じました。
◆渓谷の涼しさとは、ちょっと違った涼しさも感じられるんじゃないでしょうか。
霊感の強い方には、特におすすめです。
つづく。
※1 長野県最大の湖、諏訪湖。 天竜川は、ここから流れ出し、
伊那谷 (飯田も中央アルプスと南アルプスに挟まれた、伊那谷と呼ばれる盆地の一部になります。)
を縦断。静岡県に入り、浜名湖から太平洋に注ぎます。
◆諏訪湖周辺の諏訪地域も、古代のアニミズムや、記紀以前の歴史や信仰の言い伝えが多い地域です。
※2 豊饒の神様に、年頃の娘を生贄にささげる風習。
姫宮の「豊饒の神」の正体は、ヒヒ。 ヒヒが退治されて伝説は完結。
※3 「民俗学」とか、「文化人類学」とかのむずかしい講義でしか学べないのが残念です。
◆ 「着物や髪型など」の文化・風俗の歴史や、「庶民の生活の変遷」の歴史についてのケースとよく似ています。
いずれにせよ、学ぶ機会が少ないということでは、同じですね。
学校はもとより、この分野の学者、研究者の先生方には、是非頑張っていただきたいです。
※4 権利の共同所有
近、現代の私有財産制へのアンチテーゼとも解釈できます。歴史の重さ。なのか、民族性を象徴する事象なのか。
入会権は、現在も社会の中で生き残っているようです。難しいテーマです。