駅から続く道の先にラクダの群れが・・・
ここは、かの日本画の巨匠が残した美術館。
小さな、そして独創的な建築の駅からつづく不思議な空間のすぐ先にあった小さな美術館。
思いがけず、この旅の終着点にふさわしい場所に、たどり着いた気がします。
思わずスケッチブックを広げていました。
音楽の世界で言えば、「コンセプトアルバム」のような、ひとつのテーマによって構成されたユニークな美術館。
そして、平山郁夫画伯の終生の創作のテーマは、「仏教伝来の道、シルクロード」。
生前、画伯がお気に入りだったというこの場所に、この美術館が建設されたそうです。
それにしても、ここにいるラクダのこぶが印象的でした。
さて、本題。
この場面でのモデルさんのスタイリングのお話です。
テーマは、「昭和初期の美大生のスケッチ旅行」。
「風立ちぬ」をはじめとする、堀辰雄が遺したいくつかの小説の「創作の源」となっていると言われる、早逝した彼の恋人。
その「美大生の恋人像」をイメージして、スタイリングしました。
まず、着物の足回りのチェックです。
伊達襟と帯の色に合わせて、淡いピンクの色足袋に、漆黒の下駄をあわせました。
ヘアスタイルは、超シンプルなオールバック。
グロスを少々足して、「日本髪の鬢付け油」風の味付けをしました。
このあたりは、日本髪の結髪のキャリアを持つ美容師にとっては、お手の物の演出です。
後頭部にご注目。
ここでは、シニヨンにも編み込みなどはせず、シンプルなおだんご型のにまとめ髪に。
そこに、かわいらしく、「染の花」の小花の花束を飾りました。
このスタイルの制作担当
ヘア・セット+着付け 鈴木文子 (スズキ美容室)
髪飾り 小島博子 (染の花)
メイク 佐々木京子 (美容室グレープス)
★制作後記★
モデルさんの髪型について。
この場面では、シニヨンの位置を少し上にあげて、もう少しポップな感覚を加えてもよかったのかな、・・・なんて思います。
※ 江戸時代、人々の髪型が日本髪だった時代から、まげの位置が上に上がるほど、若々しさを表現する、というひとつのセオリーがあります。
(当然、セオリーには、「ブレイク・ザ・ルール」(型破り)の楽しさもありますが・・・)
※ また、そのように、シニヨンの位置を高く上げていった場合、それに伴って起こる、人相の変化をコントロールすることも重要なポイントになります。
「つり目」などが、もっともわかりやすい部分なのですが、顔の印象が、かなり変わってくるからです。
⇒ さて、この連載も、ここでいよいよ終着点を迎えていますが、このポイントは、ぜひ記憶に残しておいていただいて、
この連載の続編 「旅の着物に…番外編」での、モデルさんの変身ぶりを、チェックしてみてください。
「旅の着物に・・・」風立ちぬ/八ヶ岳編 完
続編へ。