美容室グレープス (飯田市) 店長&スタッフ・ブログ

飯田駅アイパーク広場前「美容室グレープス」(グレープス.com)のブログ。 
本店「スズキ美容室」(飯田市)の話題も。

美容室が目指すもの ② 映画「あん」より

2016年04月29日 | 貴女にとって、美容室って?

 Presented by  グレープス.com  and スズキ美容室.com (長野県飯田市)

どんな商売でも「仕込と、仕入れに手間をかけること」が大切。

そして、プライドを持って仕事をすることが大切。と教えてくれます。

 

今日は、一見、美容室とは何の関係もないこの映画をご紹介させていただきます。

 

映画「あん」は、昨年公開された日本映画です。

 

監督は、カンヌ国際映画祭で、「萌の朱雀」で新人賞を獲得以来、

日本映画界で、ひときわ光り輝く女性監督、河瀬直美さん。

 

この映画は、

◆気鋭の実力派女性監督の新作であること。

 

◆樹木希林さんの、何かを悟りきったかのような昨今の出演作ラッシュ。

その中でも、彼女のフィルモグラフィー上に、

最重要作品として記憶されるに違いない主演作品であること。

と同時に、実の孫娘さんとの初共演作であること。

 

◆原作からのメインテーマである「ハンセン病」。            ※1

この病を患った女性が生きてきた人生の困難と、それを暗示する世の中の空気。

しかし、そんな逆境の中でも折れないこの主人公の強い職人気質とその技能。

そして、その彼女のつつましい人生の立ち回り方。

など・・など・・・

 

派手ではないのですが、見どころが沢山ある映画に間違いありません。

そしてなんといっても

一人のおばあさんを通して、世の中にある不条理を、終始一貫、抑制されたトーンで淡々と描いていることが、

後々まで心に残る映画となっている所以ではないか、と私は思います。

 

 

 <昨年のロードショー終了後、>

あらためて、「福祉映画」の秀作として、飯田市では特別鑑賞会が開かれました。

 私たちが昨年、介護職員初任者研修でお世話になった、「飯田ボランティア協会」さんが主催されたこの上映会。                         ※1

たいへんな盛況でした。

私たちのお店のお客さまにも多数ご鑑賞いただきました。

ありがとうございました。

 

上映会の後、深い余韻が残る会場の雰囲気からも、

多くの方が、様々な感想をお持ちになったと推察しました。

 

皆様のご感想は、その後、お店でのお話の中でいろいろお伺いさせていただきました。

 

それぞれのお客様の生きてこられた人生観なども投影され、

この映画に対しての思い、感じ方が、多種多様であることが印象的でした。

 

◆お子様たちにとっては、ちょっと難しい映画だったかもしれません。

(でも、そんな経験をたくさんして、みんな大人になってきたんですよね。)

 

そんなちびっ子たちには、

もう何年か経ったら、そして、もう何十年もたった時に、

改めて、見直してほしい映画です。

 

 ◆最後に、この映画にさまざまな感想がある中で、

美容室グレープスの本店・スズキ美容室の店主が、最も印象に残った場面・・・

というか、記憶に残しておくべき場面として、スタッフに推薦があった部分をご紹介します。

 これは、創業50余年の美容室の創業者らしい目のつきどころです。

 

その場面は、

「樹木希林さんが演じる老女が、長瀬正敏さんの営むどら焼き屋に、おしかけで、勤め始めてすぐのこと。

どら焼きの餡(あん)に、業務用の既製品の餡を使っていることに苦言を呈する場面です。

そして希林さんは、自ら、小豆から手作りのあんを作って見せます。

 (このあたりから、このお婆さんはただものでない・・という雰囲気が漂い始め、観客は皆、この人の人となりを想像し始めます。)

実際、希林さんが作ったそのあんの美味しさから、

長瀬さんは、これまで、(格好よく)どら焼きを焼く技術のみに力を注いできた自らの姿勢を省みます。

そして、材料の安直な仕入れを改め、自家製のあんの製造に取り組むことを決意する。」

・・そんな場面です。

 

◆人それぞれに、多様な観方、感じ方がある映画って、深い魅力があるってことなんですよね。きっと。

 

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 さて、

◆翻って、このことを私たちの「美容室」に置き換えてみたいと思います。

 

近年、私たちの美容室が行ってきた自社製のシャンプー、トリートメント、コンディショナーの製作は、

まさにこの精神に則ったものです。

 

そしていま、私たちの自社製のヘアケア製品は、既成品のそれよりも、良いもの

(私たちのお店のお客様に相応しいもの)になっていると自負をしていますが、

まだまだ発展途上であることも間違いありません。        ※3

 

さらなる進歩をするためにも、私たちは、この映画の「希林さんの精神」を改めて、肝に銘じていきたいと思います。

 

 

※1 「ハンセン病」については、

  この病気の知識も必要ですが、この病気にまつわる歴史の知識も必用です。

  これからこの映画をご覧になる方は、この項目だけでも事前に検索されたらよいのではないでしょうか。

 

※2 飯田ボランティア協会さんは、毎年、「福祉映画鑑賞会」を開催されています。

  来年の上映作品は何になるのでしょうか。

 

※3 自社製 製品

 美容室での自社製製品の製造は、美容室のサービスの完成度を高めるため、また、自らの美容室の価値観をお客様と共有するためには、理想的な方法です。

 また、美容室が自ら使用する材料・薬品についての専門知識を持ち、さらに、いつでも批判的な検証が加えられる能力を持つことは、美容室の技術・サービスのレヘルアッブには不可欠なことです。       ※4

 

※4 この分野で(薬品の専門知識や製品製造能力の面で、)ハイレベルな美容室 

    美容業界では、「ケミカル能力の高い美容室」とも言われます。

  ●デザイン・ファッション面での美容室の頂点が、東京の港区周辺にあるとすれば、(前々回掲載)

  ●この分野でのトップ美容室さんは、全国各地に存在しています。

  例えば、私たちのお店が自社製品のOEM製造をお願いしているメーカーさんと、これまで永く取引されてきたような

  OEM製造の先輩美容室さんは、全国各地に存在していて、群雄割拠という状況です。

   また、早くから自社製品の製造を行っていたりして、ケミカル知識が豊富、独自の評価基準を持ち、商品製作のノウハウも持ち、

  その情報を発信をしている有力美容室さん、美容チェーンさんは、規模の大小を問わず、全国に相当数存在しています。

 ● このように美容室のレベルを「ケミカル面の能力」から測ってみると、  

   トップクラスの美容室の分布は、決して「東京一極集中」ではないということが明らかです。

   このことは、一般の皆さんにも知っておいていただきたい美容業界の実際です。

    

 ◆飯田ボランティア協会さん主催の「介護職員初任者研修」のお知らせ◆

   今年度の開催予定が発表されましたので、掲載させていただきます。

 「飯田ボランティア協会」さんが掲げるテーマ(モットー)は、

「心に寄り添う介護」です。

 


美容室が目指すもの ① 映画「マグノリアの花たち」より

2016年04月14日 | 貴女にとって、美容室って?

映画 「Steel Magnolias」  (邦題「マグノリアの花たち」)   ※1

1989年公開     ※2

 

◆ この映画は、

アメリカ合衆国の南部、ルイジアナ州の田舎町の美容室に集う、6人の老若の女性たちが織りなす群像劇です。

 

洋の東西を問わず、美容室を題材(メインの舞台)にした映画は、ありそうでなかなかない。というのが実際です。

特に、多くのアメリカの映画や、TVドラマの中で登場する美容室は、

「街のゴシップ情報の発信地」 的な、軽薄な意味付けしか与えられていないことが多いものです。    ※3

 

そんななかで、この映画は、美容室の本質というか、大げさに言えば、「存在意義」にまで迫ろうとする希少な作品です。

公開からもう、四半世紀になろうとする現在でも、

多くの良心的な美容室関係者のこころのよりどころとなっていることに、間違いありません。

 

そんなことから、今回は、この映画のご紹介をさせていただきます。

 

◆流行のファッションやヘア・スタイルを研ぎ澄まされた技術でお客様に提供することが、

美容室の当然の存在意義ですが。

美容室が、古くから普遍的に持っているもう一つの側面、

社会的な存在意義についても、

ここで、ちよっと理解していただければ幸いです。

 

◆この映画は、アメリカの片田舎の小さな美容室を中心に繰り広げられる女性たちの人間模様を描いています。

そして、そこで繰り広げられるドラマのテーマは、ズバリ「命のバトンタッチ」。

大変重厚なテーマです。

 

さて、まず、この作品で特筆されるべきことは、

ハリウッド映画では珍しい、名うての女優陣による、滋味深いセリフのやり取りが存分に楽しめる、

ドラマ(芝居)が存在していることです。

 

この作品のオリジナル版が、舞台でのストレイト・プレイ ということだけあって、

人間の生死を扱う重いテーマを、

一癖も二癖もある登場人物たちが、

辛辣(・・・というか、汚い言葉がバシバシ)でありながらも、

ユーモアを織り込んだセリフの応酬で、

・・・人間の一生の奥深さと、その目的を暗示しながら・・・

しんみりと、しかし、前向きにそのエンディングへと導いてくれます。

 

◆日本では、古くから美容室を「街の奥様方の社交場」とか、「女性たちの社交場」と例えられてきました。

 し、今でもその文化は、受け継がれています。            ※4

ところが、この映画を観ていると、 アメリカの片田舎、ルイジアナのビューティー・ショップ(美容室)も、

まさに、同じ役割を担っていることが理解できます。

 

◆さらにこの映画は、美容室を、「女性が本音でモノが言い合える場所」としてとらえて、      ※5

美容室のオーナー、スタッフはもとより、そこに通う常連のお客様とが、喜びも悲しみも分かち合う、

コミュニティとして描いていることが、特に印象に残ります。

 

    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

◆さて、わたしたちの美容室グレープスの本店・スズキ美容室は、創業以来54年を迎えました。

 

創業以来、ご来店いただいているお客様とは、ご一緒に年月を重ねさせていただいています。

ここまで、ご一緒させていただいているお客様とは、お互いに山あり谷ありの道のりでした。

しかし、50年超という時間の経過は、さすがに重く、

道半ばで、お別れをしなければいけなかった方々もいらっしゃいました。

 

いま、私たちは、この映画のように、お店のお客様と同じ船に乗せていただいている心境です。

そして、私たちは、お客様と少しでも先までご一緒させていただけるよう、

・・・お客様にとってなくてはならない存在でありつづけて・・・

その船を前に進めてゆきたいと決意しています。

 

そして、そのためにも 

(お客様が集っていただけるに相応しい場所であるための最低条件として)、

美容室の基本業務のさらなる向上と、

新しい業務(訪問美容)の充実に努めてまいります。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

◆飯田でもマグノリアの花が咲いています。◆

ここは、「飯田創造館」。

 

飯田市内の桜では、もっとも開花が早い地点でもあります。

飯田創造館は、旧・風越高校(飯田高等女学校)の移転後の跡地に作られた、文化施設です。

 

当店のお客様のご関係では、華道の池坊さんの展覧会が開催されることでもおなじみです。

また、今年の茶道の裏千家さんの初釜が開催された場所がここになります。

 

マグノリアの花

私たちは、このモクレンをマグノリアと呼ぶことが多いのですが、

映画に登場するマグノリアは、同じマグノリア科に属する、タイサンボクを指しているそうです。

(いずれにしても、花のかたちはよく似ています。)

 

桜の開花を追いかけるように、飯田創造館のモクレン(マグノリア)は満開です。

飯田創造館前は、「風越窯址」。

ここは、江戸時代後期に、飯田藩主の命で瀬戸から陶芸家を招いて

造られた窯の所在地。

そんな所以からか、創造館では、陶芸教室も盛んに行われています。

 

※1 映画のタイトル、「スティール・マグノリアズ」とは、直訳すると「鉄のマグノリア」。

   ルイジアナ州の州の花であるマグノリアと、気丈な南部の女性の代名詞「鉄の女」をかけあわせています。

   「ルイジアナ州の女性達」 を指す、ニックネームが、「スティール・マグノリアズ」ということになります。。

 

※2  1980年代のアメリカ映画全般の印象とはかけ離れた、繊細な佳作です。

   主演は、その後のブレークが華々しい、ジュリア・ロバーツさん。  ※6

 

※3  これも洋の東西を問わず、そういった評価も、必ずしも間違いとは言えません。

 

※4  日本映画の中で、美容室が 「街の奥様方の社交場」 として登場するもののひとつとして、

   「細雪」1983年(市川崑監督)があります。

   美容室が登場する場面は多くありませんが、(とはいえ、歴史的遺産、昭和初期の「電発パーマ」のシーンは、お宝もの。)

   やり手の美容室の先生が、常連のお客様(主人公)のお見合いのお相手探しに奔走して、大活躍です。

   ◆当ブログのアーカイブ ◆ 「映画と着物 ②」 のページも併せてご覧ください。

 

※5  この作品の原作者(脚本家)は、男性で、実の妹さんをモデルにして、この作品を書き上げています。

   男性のシリアスな観察眼を通して、「女性たちの城」である美容室て゛の人間模様を分析して、

   このリアリティのある作品を作り上げました。

   当然、この映画での美容室の描写もリアルです。

 

※6  この映画の中で花嫁姿を披露しているジュリア・ロバーツさん。

   その後も、多くの作品でウエディングドレス姿を披露され、花嫁衣装のトレンドを左右するほどの存在となりました。