Presented by グレープス.com and スズキ美容室.com
and スズキ美容室・訪問サービス.com (長野県飯田市)
◆ 「脱・施設カット」へ 気迫にあふれる会場 ◆
「明日から始める訪問美容 ワークショップ」 と題されたこのセミナーに集った首都圏のトップスタイリストの皆さんと
訪問美容について学ばせていただいた貴重な時間。
このセミナーで最も盛り上がった場面は、
「施設カット」 ※1 と呼ばれる、かつて訪問美容の代名詞だった? カットスタイルを変えたいという、
スタイリストさんの力強い決意表明の場面。それは、会場全体の熱気が最高潮に達した瞬間でした。
そしてそこには、トップサロンのスタイリストの皆さんらしい、美容の技術に対するプライドと熱い志がありました。
一方で、
首都圏の訪問美容をお手本として、学ばせていただいてきた私たちとしては、
いままで参加させていただいた首都圏の現場では、「施設カット」に該当すると思われる施術に遭遇したことはなく、
首都圏の訪問美容で、それはもう 「過去のもの」 という認識だっただけに、
このスタイリストさん方の認識には、違和感を抱かずにはいられない部分もありました。 ※2
しかし、ワークショップの討論の中で、
自由が丘にあるサロンの女性のスタイリストさんが、
人気サロンがサロンワークのかたわら、わざわざ、訪問美容に着手する動機を
「担当するお客様から、要介護のお母様のカットをお願いされたこと」 ※3
とおっしゃられた事例などから考えてみると、
( 田舎の状況から比べれば、格段に進んでいる。と思われる首都圏の訪問美容においても )
要介護のお客様へのカットに、
・・・主にデザインの面で・・・
まだまだ十分ではないと評価されるところがあることも、事実なのではないでしょうか。
訪問美容の業界でも、介護の業界でも、その理念や技術の進歩が、
時に想像以上のスピードで進行することを、私たちは目の当たりにし、理解もしているつもりでいました。
しかし、今回、無意識のうちに「既成概念」をつくって、思考停止していたことを
気付かされました。
このセミナーに参加れたスタイリストの先生方のお客様方が、訪問美容を必要とされる時代になるまでには、
訪問美容の在り方も、さらに大きく変わるのではないか(「第3の波」)、と予感させてくれる貴重なワークショップでした。
つづく。
※1 施設カット
高齢者介護施設に入所された女性の利用者様が、その施設でカットされる「特別な髪型」を総称する用語。
ヘアスタイルが均一的であることが特徴。 男性風の刈上げ、短髪、などが代表的なスタイル。
介護保険制度・施行後の初期の段階に発生した現象(「訪問美容第1の波」)であり、
それが、一種の社会問題として取り上げられたため、一般の人たちも知るところとなった。
その原因は、「介護保険制度」という新しい制度に、誰もが手探りの状態だった中で起こった「錯誤」と「需要と供給のミスマッチ」に集約されます。
① 高齢者介護施設への入居者の77%を女性が占める実状にもかかわらず、 ※4 利用者様へのヘアカットに理容業者さんが供給されるケースが多かったこと。 ※5
② 「髪への美容」 (「理容」・「その他の美容」も一緒です) のサービスは、そもそも介護保険の対象業務ではないのですが、多くの介護施設では、介護保険サービスと同じ様に、同一内容、同一料金で一律に提供されるべきもの、という誤解が生じていたため。
③ 一部の施設では、介護保険以前の「社会福祉施設」時代の形態が継承されたことにより、利用者様へのヘアカットの提供者が「ボランティアさんや練習生」という枠組みがそのまま持ち越されていたため。 ※6
加えて、
◆「施設の担当者様は、(当然ですが・・・) 美容の専門知識をお持ちではなかった。」
◆「訪問美容の担当者には、介護現場の知識がない。 さらに、シニアのお客様への美容の知識、実績もない場合も多かった。」
◆利用者様、ご家族様は、その施設にお世話になっている立場上、「我慢してしまう」
という当事者の間の三角形の「お見合いの構図」ができてしまい、なかなか問題が表面化しなかった経緯があったと聞きます。
ただし、首都圏の介護現場での、「問題の表面化」以降のサービスの刷新の流れは、極めてスピーディだったともいわれています。
⇒ 訪問美容の「第2の波」 ⇒ LLP全国訪問理美容協会設立される。
⇒ こちら http://スズキ美容室訪問サービス.com/info/1257839 もご覧ください。
(LLP訪問理美容協会・藤田理事長のインタビュー記事から、当時の高齢者介護施設での生々しい状況がうかがえます。)
※2 「施設カット」 の現在
◆ 首都圏の介護施設の経営者の中には、美容の提供を、食事の提供に匹敵するほどの重要事項ととらえて、施設を経営されている事業者様があります。
◆ そもそも、美容のサービスが介護保険の対象事業ではないため、専門外でのリスクを負うことを避けて、美容の専門業者に業務委託して、サービスの向上を図る事業者様もあります。
また、その一方で、
◆ 現在も、施設全体で入居者様への「施設カット」のオーダーを出されている事業者様もある。そうです。
~ このセミナーの後、4月に行われた、「LLP全国訪問理美容協会」の情報交換会にて、首都圏の訪問美容で確かなシェアを持つ事業者の経営者様からいただいた情報です ~
※3 要介護のご家族様へのカットのご依頼
かつて、私たちの本店「スズキ美容室」が、「訪問美容に本腰を入れなくてはいけない」と決心したのも、同様の、「ご家族様からのご相談」がきっかけです。
< 誰に相談してよいかわからない ご家族様からの S.O.Sです。>
⇒ こちら http://スズキ美容室訪問サービス.com/free/aisatsu もご覧ください。
(「スズキ美容室訪問サービス」代表のご挨拶のなかで、当時の状況の回顧が語られています。)
※4 厚生労働省 「平成28年介護サービス施設・事業所調査の概況」 より
※5 男女別にみた、「美容」と「理容」の利用比率 ※7
<リクルートライフスタイル「美容センサス2017下期」の調査結果による>
◇60代女性の82%が過去1年間に美容室の利用経験があり、(理容店の利用率は調査結果なし)
◇70代女性の74%が過去1年間に美容室の利用経験があり、(理容店の利用率は調査結果なし)
◆60代男性の4%が過去1年間に美容室の利用経験があり、◆男性の66%が理容店の利用経験がある。
◆70代男性の4%が過去1年間に美容室の利用経験があり、◆男性の68%が理容店の利用経験がある。
◎ 法律などで、性別による利用制限、利用の誘導がなされているわけではありません。
しかし、「髪を切ったり、セットしたりする」目的は一緒でも、男女の消費傾向の違いは顕著です。
それほど業態によるサービス内容の違いが存在するということなのでしょう。
◆ 介護保険制度施行直後に、高齢者介護施設で起こった、理容と美容の発注の際の錯誤は、ほとんどがこの理・美容の違いをご理解いただいてない場合に発生しています。
◆そんな背景もあり、現在、「消費者保護」の観点から、理容、美容の業種表示については、厳格さが求められています。
「理・美容室」の表記が認められるのは、
「理容・美容の両方の開設許可を得ていて、両資格を有する者のみによって営業されている事業者」です。
(平成28年4月7日施行 改正「理容師法施行規則」、「美容師法施行規則」より)
とはいうものの、
その「理・美容室」の先生の実質の技術のキャリアはどちらなのか?
そして、お客様にとって最も重要な情報である、
そのお店のサービス内容が理容なのか、美容なのか、その中間なのか・・・については、
傍目からは判断できません。 事業者さんが積極的に情報発信をされていればよいですが、
そうでなければ、お客様が実際にお店に行って、判断していただくほかありません。
※6 ボランティア&練習生による施設カット
「介護保険制度の施行以前の社会福祉施設での利用者様へのカットの提供方法として一般的にあった。」
~ これは、「介護保険以前」から活躍されている (公社)日本毛髪科学協会の会員でもある、理容業の大先輩からおうかがいしたお話しです ~
地域的には、関東より西の地域で多くあった事例のようです。
※7 「美容」と「理容」の業態の違いについて
それぞれの業態のお店に行かれた経験をお持ちの男性諸兄なら、すでにお分かりのことと思います。
① 理容店と美容室では、カットの技法が違います。 また、サービス・メニューの設計、考え方が全く違います。
◆これ以降は、お客様にとっても 「知っていれば、得することもあるだろう・・・」 レベル の業界ネタになります◆
~ よろしかったら、お付き合いください ~
② 「理容業」と「美容業」は、それぞれ「理容師法」と「美容師法」によって管理されています。
それゆえ、それぞれの業態の違いは、「法律によって分けられているだけのもの」といったご意見も散見されます。
が、
☐明治維新の際の断髪令によって、導入された「西洋理髪」を起源とする理容業と、江戸時代の「女結髪」を起源とする美容業の業態の違いは、歴史をさかのぼれば、それが法律(昭和中期の制定)以前から脈々と続く文化的なもの、伝統的なものであることが容易にご理解いただけます。
(参考文献 「洋服・散髪・脱刀 服制の明治維新 」刑部 芳則著 ほか )
しかし、
☐近代以降の現代社会では、ファッションのグローバル化の波に影響されてか、「理容」、「美容」+「その他の美容」という産業構造が、世界で同時に発展し、定着してきた現実があり。そこからひも解けば、この違いは、実は普遍的なものであることも、ご理解いただるのではないでしょうか。
(参考文献 「欧米理容美容の歴史」 R.T. ウィルコックス著 ほか U.S census データベースより)
では、
③ 産業としての「美容業」「理容業」の違いを観てみます。 併せて、周辺業種との関係も観察してみます。
◆「総務省 産業動向調査による」 産業別年間売上高は、以下の通りです。◆
2016年 日本全国での集計
◆美容業(美容室・美容院) 約1.6兆円 / 42.5万人(就業者数/常勤・臨時)
◆理容業(理容店・床屋) 約0.4兆円 / 19.8万人(就業者数/常勤・臨時)
◆その他の生活衛生サービス・美容(エステ・ネイル店を含む) 約1兆円 / 17.0万人(就業者数/常勤・臨時)
※①現在、「美容」と「理容」が、異業種間でシェアを争う「男性のヘアカットのマーケット」での市場占有率は、☐美容・約4割 ☐理容・約6割 と算出されます。(リクルートライフスタイル「美容センサス2017下期」より。15歳から69歳が対象の調査)
※②同様に、「美容」と「その他の美容サービス」の内のエステサロン・ネイルサロンが異業種間でシェアを争う「エステ&ネイル」の市場の占有率のマーケットリサーチは見つかりませんでした。
⇒ ①の「理容」×「美容」のシェア競争は、理容師法と美容師法という同種の法規制の下でイコールコンディションの競争が行われています。現在の、この競争による市場の活性化が消費者利益につながっていることは男性の皆様は特に実感されているのではないでしょうか。
<「ザ・バーバーブック」 枻出版より>
◆ 東京・渋谷区を中心とした cool な理容店さんが、ファッション誌にフューチャーされています。
◆美容商材の卸問屋さんのブックコーナーに、バーバーテクニックやバーバー情報の本が並ぶ風景は、10年前にはあり得ませんでした。
<「TOKYO HAIR 最先端のヘアスタイルストーリー」 トランスワールドジャパン より>
◆ 迎え撃つ?美容業界。 メンズスタイルのトレンドをクリエイトするリーディング・カンパニー peek a boo さん監修のメンズファッションのスタイルブック
◆ Barber V.S Stylist いま、エキサイティングなメンズヘアのマーケット争奪戦が展開されています。
一方
②「美容」×「エステ・ネイルサロン」のシェア競争については、美容業のみに厳格な法規制という負荷が課せられていることを、消費者の皆様にもご理解いただきたいところです。 しかし、 裏を返せば、美容室でのエステ・ネイルの施術には、「衛生法の管理」という安心の付加価値がついていることもご理解いただきたいポイントです。
つづいて、同種の統計を、アメリカの経済センサスから引き出してみます。
◆2007 全米国勢調査より ◆
◆引用元・JETRO 「米国における教育産業、人材派遣産業、理容・美容産業制度調査」(2013年1月)◆
(少し古いデータになりますが、全米での美容業と理容業、そして、その周辺業種との関係、産業構造が、日本のそれと同型であることがご理解いただけるのではないでしょうか。 /「JETRO」の公式サイトには、いくつかの国の美容とその周辺産業のリポートの掲載があり、それぞれ大変興味深いものです。)
◆美容業(ヘアサロン・ビューテーサロン) 約3.6兆円 / 62.7万人(就業者数)
◆理容業(バーバー) 約0.3兆円 / 6.2万人(就業者数)
◆ネイルサロン 約0.6兆円 / 8.1万人(就業者数)
◆その他の美容サービス(エステを含む) 約0.7兆円
※ 為替レート 1ドル/105円で算出。
ところで、現在、
④ 「ヘアサロン」 「カットサロン」など、「美容」「理容」の肩書をつけない名称の店舗も、多くあります。
そのネーミングには、
そのお店が、普遍的な、理容・美容とはちがった枠組みでサービスを設計をしていますよ、とうメッセージが込められている、とご理解いただいてよいかと思います。
ただし、名前が「ヘアサロン」でも「カットサロン」でも、その属性は、「美容室」か「理容店」のどちらかです。
そこで、あからさまでないまでも、ご来店いただくお客様には、その部分の情報(属性)をお知らせすること。それが「お客様へのマナー」という業界の暗黙のルールです。
その、「あからさまではない、お客様へのお店の情報提供」の例を挙げさせていただきます。
◇例1 「ヘアサロン丘の上ゆず花」~紳士と淑女のための美容室~
⇒ 僭越ですが、わたしたちの系列サロンのネーミングです
◇例2 「三色のサインポール」
これは、古代の外科医を起源とする誇り高き西洋理髪業(理容業)の目印です。
店舗名が「ヘアサロン×××」であっても、サインポールが、かかげられていれば、
それは、理容店(バーバー)さんに間違いありません。
⑤ 「訪問美容業者のネーミングにもご注意を」
個人のお客様や、介護施設様が、訪問美容をオーダーされる際の事業者の選定の際は、
さらに紛らわしいネーミングに、注意をおはらい下さい。
◆ここまでお付き合いいただいたお客様は、すでにお分かりのことと思います。◆
ネーミングに惑わされることなく、業者さんの実態を把握されることが、間違いのないオーダーにつながります。
◆「訪問美容」なのか、「訪問理容」なのか?はもとより、
◆シニアのお客様への対応の実績があるのかないのか、
◆出張担当のスタッフが自社のスタッフなのか、外注スタッフなのか、あるいは人材派遣業なのかの違いによって、
サービス内容、価格、施術のレベルから始まって、訪問美容で最も重要な品質管理の有無まで。
その結果に大きな違いが発生することが、ご想像いただけるのではないでしょうか。
いずれにしましても、
◆お客様が必要とされるサービスにふさわしい業者をお選びになる最善の方法は、
「実店舗での営業内容」を確認されることです。
都会の環境下では難しい場合も多いですが、地方のお客様にとっては、有効な方法になること間違いありません。
◆飯田下伊那地域のお客様には、「かかりつけ美容室」制度があります。
お世話になっている先生がいらっしゃるお客様は、
まず、かかりつけの美容室にご相談されることをお勧めします。