BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

魔法科高校の劣等生 横浜騒乱編(6、7巻) 感想

2014-06-22 15:43:53 | さすおに
なかなか盛り上がらない九校戦編だけど、先に、横浜騒乱編と来訪者編を読んだ。
とりあえず、先に、横浜騒乱編の方について。

二つ読んでわかってきたのは、アニメが盛り上がらないのは、必ずしもアニメ制作者だけのせいではない、ということ。原作は相当クセがある。

ともあれ、ネタバレもあるからスペースを開けておく。












































で、原作にクセがある、というのは、正直なところ、このシリーズは、ノベルの体をなしていないと思ったから。

ぶっちゃけ、このシリーズは

魔法的設定 + 魔法バトル + 萌え + 軍事シミュレーション

が、大してプロットも考えられずに、ただ、バラバラに並べられているだけのものだから。

ラノベといえども、ノベルであり物語のはずなので、当然、プロットはあるし、そのための場面展開や会話があって当然なのだけど、このシリーズにはそんな要素はほとんどない。

ていうか、このシリーズ、物語とはいえないよ。

やっぱり、会話付き、バトル付き、謀略付き設定集、という感じ。

同じタイミングでチャイカの方も読んでいたので、なおさらそう思う。
チャイカの方は、きちんと起承転結があるし、地の文と会話もきちんと計算して分けられている。で、その上で面白い。

でも、この「魔法科高校の劣等生」は、いやー、マジでヒドイ。

特に、横浜騒乱編の酷さといったらない。

何がヒドイか、って、複数の場面で同時並行に異なる人物たちの描写があるから、当然、最後には、そのバラバラの動きが一点に収束する、つまり、何らかの形で繋がると思って読んでいたら、全くそんなことはなく、ただ、達也が超スゲエ!って場面しか出てこないのだから。

いやはや呆れる。

それに、誤字脱字も多い。
これは、単純に担当編集者がサボっているとしか思えないのだけど。
なにしろ、固有名詞を間違えているからね。
「魔法協会」を「魔法教会」にしたままとかね。

あと、作者の文章の悪い癖は、一人ツッコミにあたるカッコ書きが異様なくらい目立つこと。設定に関する注や、読者の世界、つまり現在の日本ではこうだね、というコメントがうじゃうじゃ付けられる。

このシリーズが基本的に「設定集」と感じたのはそういうところ。

あ、そうそう、よく、この作品は、ソードアート・オンラインと同じように、ウェブ上の公開で多数のアクセスを集めていた、ということが強調されて、いかにもSAOと同系統の作品であると言われるけど、作品の中身でいえば全然そんなことはない。

SAOの作者は、仮にもAWで電撃大賞だっけ、受賞してからデビューしてるでしょ。
その分、川原礫はちゃんと、ストーリーテラーとして物語の流れに注意しているし、若干くどいところはあるけれど、文章もちゃんと校正している。

でも、この魔法科~、は、そんなことない。

ほんとに、カッコイイシーンだけをブツギリで繋げただけのもの。

そりゃ、アニメの製作者たちが扱いに困るわけだよ。
だって、どこにも物語らしき流れがないんだもの。

いやー、ホント、典型的な中二的設定だよね。

多分、大元にあるのは、元のオンライン版が書かれた時期から見ても、コードギアスなんだろうね。

ロボの代りに魔法を使うようにしたギアス。
ロボがない分、ルルーシュとスザクが一体化したのが達也。
で、呪われた家族の話と高校生活を無理矢理両立させる設定。
だから、深雪はナナリーね。
ルルーシュがナナリーを庇護するのと同じように達也が深雪を庇護する。
皇帝シャルルにあたるのが、四葉の叔母。

で、こういう人間関係をベースにして、
あとは、魔法の設定を、基本的にはコンピュータ・ソフトウェアを基礎にして、時々最先端の物理学の知識(余剰次元とか)を使いながら、もっともらしい説明を加える。

その上で、こんな家族?関係と魔法設定の上で行うのが、戦前の日本の、士官学校があった時代の軍事戦略。
軍事技術を巡る魔法師争奪戦。

・・・という感じ。

あ、そうそう、九校戦あたりではまだわからないと思うけど、魔法といっても、現代魔法と古式魔法に分かれていて、現代の方はコンピュータプログラムみたいだけど、古式の方は、基本何でもありのオカルトで、ここに、陰陽道や道教、あるいは精霊ちゃん!とかまで出てくる。

で、そういう古式成分が増えてくると、物語はとたんにホラーやオカルトっぽくなっていく。

その分、まぁ、みきひこは活躍するようになるんだけどね。

あ、そうそう、話が進めば進むほど、一科と二科の違いがホント、馬鹿らしいくらい逆転していく。

一科といっても心技体で凄いのは、結局のところ、十師族という、魔法世界の支配一族だけ。つまり、七草や十文字、それに、四葉の流れをくむ深雪ぐらい。

あとは、むしろ、二科の、達也の仲間たちのほうが、異能集団である分、活躍してしまうことになる。ていうか、この点では、エリカの設定とか、マジで反則もの。あ、あと、美月の「目」もね。

なんていうか、普通の試験はダメでも、AO入試ならオッケー、みたいな世の中?、というかネット中毒の人たちあたりに受けそうな展開で、正直ドン引き。呆れるよ、このあたりは。

まぁ、だから、ホント、このシリーズは、ネットの中で、主にはネットをウロウロする人たちにウケるべくして書かれたものが思惑通りその中ではウケてしまった、って感じがする。

この点は、メカクシなんとか、と全く同じ。
あっちもそうとうヒドイことになってるけど、あちらは、もともと初めにポエミーな音楽ありきでそのポエムをむりやりノベルの格好をさせたら、あんな形になった、ってことなんだろう。そりゃ、シャフトもやる気をなくすはずだよ。

同じことが多分、魔法科~、の方にもあてはまる。ネットでクリックしながら読むにはちょうどいい感じのものでも、本にしたら、ブツギリの連続になる。だから、一応は、プロットを前提にして脚本や絵コンテをかいて制作する人たちからしたら、実は取り付く島がないのだと思う。

だから、アニメがつまらなくても仕方ないんだよ。
もともと、アニメに期待されるプロットもなにもないのだから。
だから、アニメ化するなら、なかば別バージョンとして大きく物語の構成を変えるべきだったのだけど、まぁ、それができなかった、ってことだよね。

あ、ついでにいえば、同じ設定満載の話でも、ホライゾンの方は、文章もプロットもギャグもちゃんとしているので。ホライゾンの難点はひたすらその長さにあるわけだけど、あの長さ、というか、厚さは、むしろ、背後にある設定を活かして、時に話者の発言や対話を通じて説明しようとするから、あれだけの長さになってしまうわけで。その分、ものすごく緻密に手を入れている。

でも、魔法科~の原作には、そういう配慮は一切ない。

いやー、ホント、作品としてはヒドイ、という言葉に尽きる。

じゃ、そのブツギリの物語が面白いか、といえばねー。

横浜騒乱編は、なんていうか、中国系の魔法集団が横浜にやってきていろいろと騒動を起こしました。そこに論文コンペでやってきてた達也たちが巻き込まれました。文化系クラブの九校戦みたいなものだから、三高の人たち(なんちゃってスザクとか)もいて、懐かしのキャラも出てますね、って感じ。でも、結局、いろいろあったけど、そこで活躍するのは、魔装大隊で少年兵やってた達也が、その立場も一高の仲間にばれて、ますます達也、タダモノじゃねー、すげー、ってことになっただけ。その上で、達也の魔法すげー、さすがは戦略級、もうほとんど核兵器じゃん!みたいな感じ。

・・・いやー、ホント、アタマワリー、って感じの中身のない展開。

ていうか、見どころは、深雪による達也にかけられた制約の解放、という部分くらい。
とはいえ、それもねー。

多数のキャラがいても活かせきれない。
謀略はあるけど、陳腐なもの。
戦争バンザイ、軍事バンザイ、謀略バンザイ、な感じが漂う。
それを昭和テイストといわれてもなー。
さすがにどうかと思うよ。

あ、一応補うと、多数のキャラを動かす点では、来訪者編は大分マシになっていた。
でも、それも、達也を含めて、登場人物たちの異能が一通りお披露目されて、かつ、達也の能力を含めて互いに知るところとなっているからなんだよね。

しかし、そうなるまで、7巻も費やすのはどうなのだろう。。。

ということで、アニメが盛り上がらないのはしょうがないし、多分、九校戦編もそんなに期待できないな、という感じ。

しかし、こうなると、アニメで横浜騒乱編がどう扱われるのか、のほうが気になる。

ある意味、実は「魔法戦争」と大して変わらないんだよね、というのがバレるだけなのではないか、という気がしてならない。

来訪者編については、改めてちょっと書いてみたいと思ってる。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 魔法科高校の劣等生 第11話... | トップ | UQ HOLDER! 第39話 感想 »

さすおに」カテゴリの最新記事