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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

サマータイムレンダ 全13巻(全139話)感想4:『サマータイムレンダ』には 現代における創作資源が全て詰まっている!

2022-05-30 17:42:59 | サマータイムレンダ
その1その2その3から続く)

といっても、途中で、慎平たちが採用した味方にする方法がちょっと雑に思えるところも何箇所かあったけどw

だって、ウシオの記憶で疑似体験させちゃうわけでしょ。

特にトキちゃんの参加は当初はこれだまされてるんじゃん、と思わせられたw
でも、そんなミスリードがふんだんにあるのも、ミステリーとしては上等。

ともあれ:

タイムリープ
死に戻り
ボーイミーツガール
ミステリー
SF
ホラー
民話
妖魔
デジタルゲーム
平行世界
四次元宇宙(ひも理論?)
ラスボスに操られた黒幕の願望 一種の洗脳
ドッペルゲンガー コピー 双子 鏡像
スワンプマン 沼男

これだけの中身がそこかしこに込められているのだからw

それがどれもこれもうまくはまっている!
実際、読み終わって、えええ???と思うところもあったので、タイムリープものにふさわしく、2周目の読み直してみて、あちこち前後を確認しての感想だけど。

いやマジで、全く穴がない。

むしろ、読み直せば読み直すほど、キャラと設定と物語の展開がカッチリ組み合わさっていく音がどんどん聞こえてきてしまうくらい。

唯一解けなかった謎といえば、結局、誰(の影)が、潮の影をコピーを作ろうとフラッシュをたいたのか? その疑問だけ。そこだけはループのしかけが終盤で明らかにされた後もはっきりしなかった。

ウシオの素体が、竜之介殺害事件で分離した「ハイネの右目の影」だとすると、はたしてそこに、その右目の分離を促した「オリジナルである雁切波稲の意志」が働いていたのかどうか。
そこだけは、最後までわからなかった。

面白いのは、「もう一人の自分」という主題が常にこだますること。
スワンプマン=沼男がずっと通奏低音として流れる。
ウシオとミオのことを考えると、むしろ、スワンプガール=沼娘の話だけどねw

ひづると竜之介、にしても、双子の魂を生き残った一人の身体に載せるうまさ。
しかも、ひづるはきちんと年令を重ねる一方、竜之介は殺害された14歳のまま、という非対称な位置づけがニクイ。
結果、ひづるが指揮官、竜之介が戦闘員の役割分担がなされるわけだし。

シデにしても、影のボディの方の肉体を使って自身のコピーを孕ませる、というキチガイじみた行為をもともとしていた。
その上で、自分の魂をハイネにコピーさせ、そのコピーを新たな肉体に定着させることで、事実上の不死を実現するのだから。

子孫の身体に自分の魂を定着させる秘術という点では、理屈は、リゼロのロズワールと同じなんだけどね、

(しかし、そう思うと、アクセル・ワールドの黒雪姫が、魂を上書きされた、というのも、別に珍しい話ではないわけだね。自分の子孫を(望むらくは自分の複製体を)バックアップの身体として確保していくやりかたは、極めてフツーの方法だから。)

で、ハイネも凄い。
友人であるひづるの弟である竜之介を食らってしまった事実に、ハイネのオリジナルである雁切波稲の残存人格が驚いてしまって、ハイネから分離してしまった。
その飛び出したハイネの一部が、雁切波稲の残存人格を伴いながら、ウシオの素体としての影となった。

とはいえ、これは実のところ、相当都合のいい設定。
あと、誰がもともと潮をコピーしようとしてフラッシュをたいたのか、それも不明。まさかハイネじゃないよね?となると、他の既存の影ということになるのだけど。。。)

あと、このオリジナルの波稲が分離してしまったことの波及効果は大きく、まず、ハイネは、ハイネとしては不完全な欠損を抱える存在になってしまったわけだが、しかし、すでにオリジナルのはいねはこの世にいないため、その欠損を埋め合わせることはできない。(だから、あかり?の姿を借りることになった)。

波稲の人格と、ハイネの右目をもつ影が素体となってウシオが誕生したことで、ウシオは影の中でもハイネの支配を受けない特異な存在となった。
なぜならハイネの分身でありオリジナルであるから。
さらにいえば、ハイネの良心であるから。

その結果、最終決戦において、ウシオのなかから「雁切波稲」の残存人格が分離されて実体化されることになったのと、ウシオの右目が、ハイネの右目と同じ機能を有するものにまで成長させることができた。

その背後には、雁切波稲の残存人格がすべての元凶である、300年前の影クジラとの遭遇を「起こらなかったこと」として抹消したかったら。

最終回を知った後から振り返れば、この波稲の根本的な願いがあったからこそ、ウシオも活躍を続けることができた。

また、その波稲の残存人格の驚愕、という衝動が生み出したものが、ひづる&竜之介、という稀代のバイプレイヤーだった。

波稲/ウシオを軸にして、慎平だけでなく、ひづる/竜之介も、この作品の主人公といえる。

したがって、終盤も押し迫ったところで、ひづるが死に、竜之介の魂が慎平の身体に託された、というのも当然といえば当然だった。なぜなら、ひづるもまた慎平同様、「影の」主人公だったから。

「波稲」が右目を分離させた張本人であることに気づいているからこそ、ひづるは、ハイネが、なにをどれだけ食そうとも回復しないことを知っている。
なぜなら、ハイネが負った傷は、身体(データ)に対するものではなく、人格を軽視するデータの欠損であったから。そして、右目とともに欠けてしまったものは、オリジナルの雁切波稲がもっていた良心であり人間らしさであったから。

影は、人格を奪って以後は、基本的にその奪った人格に基づいて(ひきづられて)言動を行う。オリジナルの人物になりきって人格エンジンが作動し続ける。
ただし、影の中には、その人格エンジンのスイッチのオンオフを決めることのできる、さらにもう一段俯瞰した「メタ人格」というか「ウル人格」のようなものがある。

・・・といいたいところだが、ハイネ以外の影は、みな、黒いエキゾチック物質に、フラッシュで抽出した人物の魂がいきなり定着させられるだけなので、その意味では、一番最初に定着させられた人格が、その影のウル人格として機能し続けることになる。
ただし、ハイネの指示を受信することで、自らがもともと影であったという自覚だけは当初からもつことになる。


多分、ウシオが、初めて潮に遭遇したとき、自分が影であるという自覚がなかったのは、ハイネの意志を受信しない、という特性があったからだろう。あきらかに、ウシオは、自分自身が影であることに、事後的に気づいていったわけだから。

しかし、そうなると、そもそも潮にフラッシュをたいたのも、未来の完成した、しかし消える直前のウシオだったのかもしれない。

慎平に右目を上げる前、ひづるにメッセージを残す前に、自らの素体だった、ハイネの右目つきの影を見出して、その影に潮の魂が定着させるようにしたのかもしれない。

もっともそうなると、もはや完全に自作自演の物語になってしまうわけだけどw

そうでないとなると、波稲の右目が意思を持って、むしろ自らの成長素体として潮を見出し、自らフラッシュをたいたとしか思えないのだけどね。

最終的にはそこが一番気になったかなぁ。

まぁ、ループものに必ずまとわりつく、最初の最初。

ビッグバンはなんだったのか?みたいな問いなのだけどw
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