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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

サマータイムレンダ 全13巻(全139話)感想3: なぜ、潮ではなくウシオが、慎平のパートナーとして活躍できたのか?

2022-05-07 17:53:03 | サマータイムレンダ
感想1感想2から続く)

この作品の面白いところは、キャラの配置がものすごくよく考えられているところ。

メインは
慎平
潮 ウシオ
澪 ミオ

朱鷺子
南雲ひづる 竜之介
根津
凸村

このチーム慎平に敵側の
ハイネ
シデ
が対峙する。

あとはバイプレイヤーとして
雁切
菱形
アレン
らが名を連ねる。

でも、そうしたサブキャラにしても、舞台が「離島」であるため、少数に特定されてしまっても違和感はない。

基本的にタイムリープを繰り返すため、関わってくる人物も最初に出てくる人たちでほぼ固定される。
そのかわり、それぞれのキャラのバックストーリーも深掘りされていく。

アメドラっぽい構成。

上手いなぁと感じたのは、その各人のバックストーリーが、何らかの形で、影や、島といった背景事情の説明につながっていること。
そうして新たな情報が開示されると同時に、新たな「状況」が生まれる。
このあたりはミステリー風でありながらホラー風でもある。

まぁ、昔あった『ひぐらし』とかのノリに近いんだけど。
でも、それが今風に、というかSF的に洗練されている。

よく指摘されるように、影がデジタル風にバグっているところとか。
実際、あの描写だと、読んでる最中に、あれ、この作品ももしかして「ゲーム内世界」のデジタル世界だったりする? とか邪推してしまったりw
最後まで読むとそうじゃないことがわかるわけだけどw
でも、物語の途中でその可能性もあるかも?と思わせるところは、ちょっとズルいが、これも上手い。

その上で、ハイネの「最善・最良」の部分の分身が、実はウシオの中にあった、という設定によって、最後には、ハイネもピュアな心で浄化される側に立つようになっても不自然でないこと。
そういう意味では、我欲の追求にだけ走ったシデが一番たちが悪い、ということになるのだけど。
でも、裏返すと、シデが変な気を起こさなければ、ウシオが死ぬこともなかったんだよね。


この物語の一番のポイントは、(潮ではなく)ウシオこそがすべてのカギを握るワイルドカードだったということ。

なにしろ、結局、ひづるを島に戻らせたのも、慎平にハイネの右目の能力を与えたのも、すべて、最終局面で、常世でシデに勝利したあとの、そして、ヒルコの島への漂着を「なかったことにした」あとに、ウシオが時間を超越して行ったことだから。

その意味では、ウシオが本当の主人公であって、慎平は、いわゆるプレイヤーキャラとしての進行役にすぎなかったといえなくもない。

まぁ、「潮」がもう死んでしまっていて手を下せないから、代わりに慎平が、影のウシオの手を借りて、問題解決にあたる、という形式を取らざるを得なかったわけだけど。

もう少し正確に言うと、
影であるウシオが、
ハイネからは、常世の世界から世界を眺めることができる右目を
オリジナルの潮からは、慎平に対する恋心と、島のみんなを救おうとする勇気を
それぞれ引き継いでいたことが大きかった。

その結果、ウシオは、ハイネやシデにも挑むことができる特異な影になることができた。
そうなった理由が明らかになったとき、スムーズに納得できるだけの描写の蓄積もなされていた。

もちろん、その特異なウシオを、影ゆえに躊躇せずに、ある意味使い魔のように使役した慎平の度胸もすごいのだけどw

ただ、見ようによっては、潮と瓜二つのウシオを「使役する」ところに慎平の異常さが現れているようにも思える。
もっとも、それにしても、当初から彼の性格として「俯瞰する自分」をもつという特性が示されていたため、こちらもそれほど違和感がなかった。
むしろ、「俯瞰する自分」という、慎平の「人格」があればこそ、右目を最大限に利用することができたように思えたので、途中から、右目がしかるべき人物に移植された、と納得もできた。

ともあれ、こうした設定の組み立て方、ならびに、物語の流れに沿った読者へのプレゼンの仕方が、とてもうまかったんだよね。

そのため、慎平が、ハイネとシデというラスボスを正確に認識し、彼らを倒して島のみんなを守る決意に至った3周目の最後以降は、物語を読む速度が加速度的に速まっていったのは確か。

最初に紹介された人物たちが、途中で裏切ることがなく、むしろ、多くの人がともに戦う仲間になっていくところも、ストレスなく最後まで物語を読み進めることができた理由だったと思う。

その意味では、影のミオを仲間に引き込んでからの展開は実に秀逸。

ウシオだけでなく、影ミオや、ひづるのなかの竜之介、あるいはトキちゃんのゴズ?たちのように、影の能力をもつ者たちを仲間に引き込めていけたのも大きい。

その一方で、ハイネが慎平をトレースできるようになったことも。

なんだかんだいいながら、ハイネとの間で勢力が均衡しながら勝負が進んでいくのだから。

そりゃ、頁を繰る手も速まるというものだよねw
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