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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

サマータイムレンダ 全13巻(全139話)感想5:新たなループへの切り替えを含めて場面転換が極めて上手い!

2022-05-30 17:59:54 | サマータイムレンダ
その1その2その3その4から続く)


ホント、この作品は、場面転換がとても上手い

それもこれも、慎平が途中から、リゼロのスバルとは違って、自死によるループの切り替えを自分自身の意志で行うようになるから。

自殺が彼の最大の武器になる。

それは最終的に戦況を左右する戦略的兵器になるわけでw


とりわけ、8周目の分断は凄い。

もちろん、シデの身体が2つあるから可能なのだが、その結果、慎平が手を出せない場面が生み出せた一方で、
ひづるが大往生する場面をも生み出すことができた。

緩急のうまさ、静と動の使い分け、が奇跡的なまでに物語の隅々にまで浸透している。

ウシオが一時退場することで、代わりに影ミオが活躍する場面も生まれる。
一時的とはいえ、まさに「主役交代」
「留守の間は任せた!」の論理w
にしても、躊躇なく刃物を振るう、セーラー服アサシンの影ミオはヤバいw
完全に仕置人w

ウシオと影ミオを通じて(他の平行世界としての周回で起こったことの記憶含めて)人の記憶を共有できるという設定にしたおかげで、展開が早い。
慎平がいないところで起きた事件の概要も知ることができて、その分析結果を次の戦略に活かすことができる。

慎平の「俯瞰」という特性を、一種の能力にすることに成功。

シデのように我執しかないものは、いわば一生、鏡像段階にあるこどものようなもので、象徴界が欠如した存在なのだが、
それも「俯瞰する」、すなわち「自らを省みる」ことができない、人格欠陥者=サイコパスとして位置づけることができた。
そのサイコパスの世界にハイネを引き込んだのもシデだった。

一方、ひづるを「作家」にしたことは、物語を紡ぐことの意味を作中でメタ語りさせるには最適だった。


ところで、影ミオは影ミオで、本体の澪が存在していることで、自分が影であることを終始自覚している。その上で、まさに「澪の影」として、澪の「裏人格」のような振る舞いをしていく。

澪の本音/本性がダダ漏れ状態なのが影ミオ

その上で、しかし、澪の影らしく、ミオの人格を継承しており、慎平が必死になっている姿を目の当たりにして、完全に自分もまた慎平に惹かれていることを自覚する姿が描かれる。

このあたりはむしろ、影ミオを通じて「スワンプマン」の主題が、実践的に検証されているようなもの。
人格は転写された時点からちゃんと分岐して、まさに「双子」のような存在になっていく。
似て非なる存在、それが影ミオ。

その点では、オリジナルが早々に死去することで、その意志を継いでオリジナル以上にオリジナルを演じ、オリジナルを成長させていくウシオとは好対照。


影ミオからすれば、澪を救おうと懸命になる慎平の姿を見たら、そりゃ惚れ直すよね。澪も自分なのだから。
むしろ、戦闘のパートナーとして選ばれている分、慎平の澪に対する本気を知れる分、影ミオの慎平への崇拝がどんどん高まっていく感じ。
でも、それもまた影だからこそ見せつけることができるわけで。
うまいよなぁ。。。

ウシオが慎平のパートナーだとしたら、影ミオは、完全に慎平のサーヴァントだからなぁw
慎平が完全に使役しているw
しかも、もともと澪が寡黙な方だから、影ミオも余計な言葉は発さず、その分、行動が言葉よりも先に出て面白いw


続いて9周目

8周目のひづるの奇策をすでに「見た」上でその記憶とともに9周目の、シデvsひづる/竜之介戦が行われたため、圧倒的にシデが有利であり、そのためひづるに圧勝できた。
8周目の奇策で実体化できた竜之介も、9周目ではシデの鎧を剥ぎ取ることができなかったため、実体化できず。

ループの発動タイミングは、慎平にしか選べないが、
しかし、そのループで起こったことの記憶は、ハイネ・シデ組も保持したまま、次のループに移ることができる。
彼らもまた、戦略を描き直すことができる。
その意味で、作戦遂行中にループ改変が生じるのは、相手に手の内がバレた状態で攻め入られることになり、思い切り不利になる。

そういう意味では、
敵の全貌が見えた7周目の終盤以降の、物語の加速はすごい。
まさに手に汗握る、とはこのこと。
状況がどんどん変わる。
攻守が次々と入れ替わる。

7周目は、5周目、6周目で煮え湯を飲まされた慎平たちの逆襲だから。

体育館の攻防を生き延び、影ミオを仲間に引き入れ、菱形医院の秘密を解き、シデの正体を暴く、だが、その代償はウシオの消滅だった!

・・・って、マジすごくない?

その後、ウシオを失うだけでなく、ひづるも消える。

ひづるの弔い合戦の圧は、最後まで続くからね。ラスボスが、ハイネではなくシデのほうだ、と見抜いたのもひづるだからね。

ひづるはひづるで、ハイネのシデからの解放を慎平に託して死んだ。
それが遺言。

ひづるを失った無念は、慎平組のみんなに決意をもたらす。
このあたりの感情の制御はホント、上手いよ。
たとえば、ウシオが、桜貝に最低限のデータだけを残して8周目に乗り込んでいる事実に気づいたのは影ミオだった。
いつの間にか影ミオは、戦況分析というひづるの役割も引き継いでいた。

ウシオは、ハイネの良心の塊=影、であることも、影ミオは薄々感づいている。

そもそも、ウシオ不在のときの慎平の相談役/パートナーは完全に影ミオだったw

貝となったウシオのデータをデコードできるのは同じウシオだけ、というのは、完全に最初の頃にあった、潮のスマフォの鍵を開けるのに、影とは言え同じ指紋を持つウシオに委ねられていたのと全く同じ。

生体認証、すげぇ。

てか、バイオメトリックス、完全に身体の同一性が、個人のアイデンティティの要としてみなされている、現在の社会制度、法体制そのものの反映になっている。
その流れで行けば、沼男はオリジナルの男と変わらないことになる。

窓を相手にするとき、澪が影ミオを演じることができるくらい、澪と影ミオのキャラの違いは明確になっている。


そして、9周目のウシオ復活のトリック。

3周目でウシオと慎平が遭遇して以来、7周目の最後にウシオが殺されるまで、
つまり、
4周目、5周目、6周目、7周目、8周目、では、慎平たちは7月24日を迎える前にループの更新を繰り返している。
そのため、9周目に至るまで、この世界に2人のウシオが存在している問題が顕在化することはなかった。
少なくとも24日にならなければ、そのループのウシオが島の海岸に上がってくることはなかったから。

だから、正確には、4周目から9周目では、全ループにおいて、ウシオは二人いたことになる。

ただ、その二人のウシオがかち合うことはなかった。なぜならその前に慎平が死んでしまっていたから。

慎平やハイネは、平行世界を移動すると、その世界の自分の身体に「意識/魂」だけが上書きされる。
だが、3周目のウシオがその後7周目まで慎平について移動してきたときは、まさに一個の個体として意識も身体もそのまま移動してきた。

その理由は何だったのだろう?

不完全なハイネの右目を身体にしているから?
その右目の完成形が慎平の右目にあるから?
つまり、慎平の右目とウシオの右目/身体は、もとはいえば同じハイネの右目をもつ影から生まれているから?

なんで、ウシオはウシオのまま平行世界を渡ることができるのだろう?

この謎は最後まで解けなかったように思えるのだけど。。。

またしばらくしたら、読み直してみるかw
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