かわいそうなことをしたな、と思った。
通勤路で拾ったドングリをポケットに入れておいた。
暖かったのかもしれない。
はじけて種子が飛び出した。
今更、土に戻してもだめだろうな。
四季の移ろいが不安定になると、ドングリでさえ戸惑うのかもしれない。
それにしても、自然の営みは不思議なものだ。
こうやって、幾千、幾万の木の実が地上に落ちて、生命をつなごうとする。
人間もそうだ。
生まれる命もあれば、死滅する命もある。
何かが生き残るためには、何かが犠牲となる。
美辞麗句だけで生存することはできない。
過去から、人類の歴史は犠牲の上に成り立ってきた。
自然を汚し、他者を傷つけて、生き延びてきた。
それを正当化することはできないが、現実を捉えることは大切なことだ。
人類は、野生の動物を飼い慣らして、家畜としてきた。
家畜を屠ることを罪悪だとは誰も言わない。
等しく生を持つものを犠牲にして生存していることを認識し、自然の恵みに感謝することを忘れてはいけない。
いつもそう思っている。
今日、NELのファンド申請書を書き始めた。
***********
【前文】
自然界には、分散したエネルギーを統合化する自然エネルギーレンズ(NEL)が存在する。
たとえば、台風は海面水温という熱エネルギーが作り出す小規模な渦が数多く統合化されて巨大な低気圧渦を形成したものである。
琵琶湖では、環流という大きな渦が形成される。
水中の熱対流や風による応力が、地球の自転による転向力(コリオリ力)とバランスして半径10㎞にもおよぶ巨大な渦を作るのである。
環流の流れは一定方向で安定しているので、工夫をすれば持続的なエネルギーを取り出すことができる。
このような、大規模なNELにエネルギーバイパスを作る。
それを人類が利用することによって、自然界で発達するアンバランスなエネルギー配分を調整し、低炭素社会の実現に貢献することを目的とする。