DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

湖の鎮魂歌(116)

2013-11-29 17:28:49 | ButsuButsu


一夜明けたネズミは、誰かに踏まれて平たくなっていた。

やがてこうしてアスファルトと同化していくのだろう。

それにしても、他の生物が食べに来ないのはなぜだろうか。

周辺には草地もあるのに、わざわざ歩道の路面で死んでいるのはなぜだろうか。

死期が近づいた動物は、他者から見えないところで死ぬと思っていた。

ということは、突然、死期が訪れたということなのだろう。

自分の人生を、ネズミと重ねてしまう。

準備が整わない内に死期が来れば、おそらく路面に倒れて人目にさらされるのだろう。

通行人に踏まれるかもしれない。

さすがにアスファルトに溶け込むことはないだろうが、とてもみじめな気がする。

思わずネズミに同情する。

そう言えばモンゴルで、鳥インフルエンザで死んだ野鳥を見つけたことがある。

手で触るのがためらわれたので、木の枝で突いてみた。

広大な湖のそこかしこに横たわる死んだ野鳥は、獣にも食べられずくちかけていた。

ネズミよ。

おまえはなぜ死んだのだ。

こんな路上にさらられて、悲しくはないのか。

口惜しくはないのか。

まるで石ころのように転がったままのネズミは、他者に食べられもしない。

このことが、たまらない悲しみを引き起こす。

死してなお、役に立たないとは。

巨大な輪から外れたネズミが、再び立ち上がって走り出すことはない。

11月28日(木)のつぶやき

2013-11-29 05:12:53 | 物語