トンボロ:〘名〙 (tombolo) 陸地に近い離れ島と、陸地とを結ぶ砂州。陸繋砂州。
海岸からそれほど離れていない距離に島があると,海流の浸食,運搬作用によって運ばれてきた岩屑が陸地と島の間に堆積し,細長く低平な砂州を形成して両者をつなぐ。つながれた島を陸繋島と呼ぶ。日本では潮岬,函館山などがその例である。
妣(亡くなった母)の実家は海岸に近かった。近くに「ナギサ」という浜があってそこでアサリをよく採ったと聞く。そこは砂浜ではなく岩がゴロゴロした海岸で石ころをどけたりガリガリと砂礫を掘り返して浅蜊をとったという。砂浜より何倍も苦労はあるがそういうところの浅蜊は味が良いという。「ナギサ」の浅蜊はどこより一等美味いといって自慢だった。そういう話はよく聞く。岩場の浅蜊はうまいと。そして自分の所の岩場がいちばんで、ここの浅蜊を食ったら他所の浅蜊は食えんと。
妣が言っていた「ナギサ」は「ナ」にアクセントを置く。田舎のことだがハイカラな「渚(なぎさ)」のことじゃないのと聞いたことがあったがそこの地名だという。土地の人の中には「ネギソ」と発音する人もあったと聞く。
「渚」は砂浜のイメージが強い。辞書では波が寄せる所。波打ち際を意味する。「思い出の渚」「渚のシンドバット」どうも砂浜のイメージで「ナ」は低く「ギサ」を高めに発音する。
私の空想癖が動き出す。「凪(な)ぐ磯」かな?なんてね。砂浜でなく岩礁帯や転石(石ころ)の多い海岸は「磯」の方がふさわしい。戦前の海に面した漁師の子であった母の生活・遊びの場だったんであろう。
先日、暑い中トンボロを見に行ってきた。陸繋島(りくけいとう)は前島。むかし、観光用にうさぎやホロホロ鳥を放し飼いにして「うさぎ島」と呼ばれた時期がある。前島(まえしま)を生まれながらのの地元民は「まいじま」と発音する
トンボロは数百mこのことについては昨年8月にもブログを書いた。☞ココです
望遠で見る前島・照葉樹に覆われる。
トンボロの近景
前島の沖にある沖ノ島、昔はサルを観光用に放し飼いにして猿ヶ島とよばれた。
沖ノ島のアップ、沖ノ島の右手の灯台にある岩礁は「毛無島」と呼ばれる、
これはトンボロではなく平らな岩礁。これが昔、母たちが浅蜊を採った「なぎさ」
これはトンボロではなく岩礁と寄り洲。海岸にコンクリート護岸ができたのは昭和の高度成長期である。
海図に現れたトンボロとナギサ。赤い文字は私が記入したもの。海図で0mは大潮の干潮時を基準面として0mとする。この図で薄緑の区域が0mより浅い(高い)土地。普通の潮では水没している。
ナギサの先端に「ナギソ岩」とある。地元の人がなまって「ネギソ」と言っていたのが偲ばれる。
ここから数キロ離れた海岸で私は生まれ、8歳まで育った、小さい頃はこのトンボロまでは歩いたことはない。この年で昔と変わらぬギンギンの太陽の下をまた歩いてみようと思う。
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