バカ犬

ちょっとバカ犬になって、本音を言ってみたいと思いませんか?

日本政府のシステムについて

2020-11-08 | Weblog

 アプリケーションの設計の経験がある者から見たら、日本政府が作っているシステムのメチャクチャさは、なぜだろうと思っている。

 今回、菅さんは、デジタル庁を作って、日本の遅れたICTを世界水準まで上げると言っている。経験のある僕から見ると、今までの日本政府の作ったシステムはすべて失敗作だと思う。

 最近の新型コロナ騒動で明らかになったいくつかの問題点を挙げてみると、
 ・定額給付金の支給が簡単に行えなかったこと
 ・休業助成金の受付システムがちゃんと動かないで支給が遅れたこと
 ・コロナの感染者のデータ収集が、全て手作業で行われ、紙の情報とFAX、ないしは電話で連絡を取って感染者状況
を把握したということ
が明らかになっている。

 さらにはマイナンバーシステム、マイナンバーカードの問題も出てきているが、そこに現れていることはすべて、システム音痴の人が、思いつきで設計したとしか考えられないシステムになっている。

 遡って考えてみると、最初の失敗は住民基本台帳ネットワークシステムだろう。一応、日本全体を同一システムで、住民票、戸籍簿の管理ができるようになったが、それを発展させることができるような拡張性は確保されてはいなかったようだ。

 日本国に、情報管理のCIO( Chief Information Officer)がいるのかどうかを調べてみたらば、いることはわかった。その領域が「政府のCIO」となっているので、日本国のシステム全体を担当しているのかどうかは分からない。どちらにしても、何もやってないということは明白だ.

 ICT時代にちゃんとしたシステムができていないのは、先進国としては非常に恥ずかしい状況だ。国にとって、ICTシステムは、基本インフラであり、その上に乗って各種のアップリケーション・システムが作られていくことは、各国をみれば、よく知られていることだ。

 一番、最初の住民基本台帳システムは総務省がオーナーだ。国民総背番号制度を意識して開発を始めたらしいけれど、反発があって結果としては、行政が自分達のための情報管理システムとして、日本で統一した形にするという結果になってしまった。住民サイドから見れば、戸籍謄本が近くの役所で取れるということは、一歩進んだ感がある。でもそれ以上ではない。

 このシステムに、総額1兆円以上の金がかかっていることはしらなかった。基本ベンダーは、富士通。システム開発費として一括400億が支払われた。そのメンテナンスに毎年約130億円。 この13年間で2100億円以上の金が、このシステムに投下されている。このシステムの導入に付随して、各地方自治体が自分の所で持ち出したシステム費用などは把握されていないが、ざっと総額1兆円かけて、国民背番号制度のシステムを作ったということになる。

 さらに納得できないのは、このシステムには地方情報センターがあって、そこは総務省を中心とする官僚が、天下りポジションを確保しているとも聞く。許せない。

 マイナンバーシステムというものも、また新たに約3000億円、かかったと言われている。常識的なシステム 屋だったら当然のこと、住民基本台帳システムとのデータのやり取りを考えて設計するのが当たり前だろうと思う。だがマイナンバーシステムは単独で設計されたようで、データのやり取りはできないようだ。

 マイナンバーシステムに、マイナンバーカードをくっつけて国民とのインターフェイスにしようとしている 。現物を見ていないから分からないがマイナンバーカードの申請には、申請者が手書きですべての項目を書き込むということを要求されているようだ。住民基本台帳とデータのやり取りをすれば、各市町村に住んでいる住民登録をされている国民のすべてを捉え、必要な情報、例えば住所、生年月日、電話番号、郵便番号、など一括して捕まえることができて、申請者に対しては、単にそのデータを確認するということで、十分なはずだ。しかしそれを全て手でやらせている。そして、住基システムとの照合は、係員が手作業でやっていると聞く。

 システムを本当にユーザーに使ってもらうことについては、一番重要なのはユーザーインターフェイスを、どれだけフレンドリーに造り、信頼を持って簡単に処理ができるということは必須である。そしてユーザーが利用価値を実感できることは基本の基本だ。そういうことに関する技術の伝承、連携の不足で全く考えられていないということになってくる。

 マイナンバーで唯一具体的にユーザーに価値があるのは、今のところ確定申告の際にマイナンバーを付けてオンラインで、確定申告を税務署に送れるようになったことしか思いつかない。

 マイナンバーをつけて国税庁に届ける情報の中には当然のことながら、確定申告をする人の取引銀行名銀行口座番号などが必要となっているので、これを使えばマイナンバーに付随する送金は、本当は簡単なのだ。10万円の給付金などは、簡単に送付できたはずだ。

 CIO人はどんな人だろうと探してみたが、CIO 補佐官という人がぞろぞろ出てきた。デジタル 庁になると、新しくアサインされた平井さんが、これらの問題を全て取り扱うことになるのだろうが、それだけのシステム基本設計ができる人を、信頼できる人材を簡単には集められるとは思えない。またしてもベンダーに丸抱えで発注するという、一番簡単な狡い方法しか取れないのではないかと心配している。

 さらに悪いことには、各省が自己完結型のシステムを既に作っていることだ。それを横にしを入れてデータを吸い上げる、ないしはインターフェイスを作るということは至難の技だということは簡単に予測できる。例えば「みずほ銀行」の、旧来の日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行のシステムを統一するだけで、何年も掛けて、4、500億円を投資してやっと昨年こぎつけたという例があるように、システムを統合するということは簡単なことではない。

 どちらにしても国民に個別のマイナンバーを持ってもらうことが前提であり、それに対する利便性を国は国民に説明すべきだと思う。巨大な金をつぎ込むのだから。そこから始まるのが本当だろう。

 一説によれば健康保険証、おくすり手帳、運転免許証になるなどと言われているが、本当に、そんな新しいシステムを作ることが簡単だとは思わない。 よく考えないで、マイナンバーカードの IC チップ上に、こういうデータを載せると簡単に言っている大臣がいるようだけれど、全くのお笑い草だ。やはりクラウドにデータを持って、それにアクセスするということが基本設計だろう。データ項目を増やすとしても 、ICチップ にいちいち書いていくことは、不可能だ。一括のシステムのアップデートもできない。当たり前の話だ。そうであれば、スマホ的なものの利用のほうが、当然保守が楽になる。

 こんなことを考えると、ヨーロッパや、アメリカ、さらには韓国、中国にも遅れている日本国の ICT を国際水準まで引き上げるということは、すごく金と人材とエネルギーを必要とすることだと思う。やるなら、ちゃんとやってほしい。