お雛様

床の間に赤い布を広げて、持っている全てのお人形を並べて飾るのが私の幼い時の雛祭りでした。
と言うのも雛人形が無かったからです。
母は、市松人形・大きなキューピーさん・眠り人形・抱き人形・こけし・動物の縫いぐるみまで順序よく並べて飾ってくれました。この代用雛でも雛祭りの気分は味合えたのも記憶に残っています。

雅な雛人形に憧れ「女の子が生まれたらお雛様を買おう」と思っていましたが、残念ながら女の子には恵まれず、雛人形を買うチャンスはありませんでした。
ある寒い晩、名古屋の大須商店街に出掛けた時、内裏雛に目が留まりどうしても欲しくなって買いました。
30年ぶりに思いが叶った私のお雛様、代用雛ではなく内裏雛です。

後年、初孫に女の子が誕生した時「この内裏雛を孫に引き継いて欲しい」と言うと、息子夫婦は快諾してくれました。
今は少々お顔が煤けてはいますが、美しい顔立ちで月遅れの雛祭りまでお出ましです。