会長の遍路日記 栗田孝和 昭和17年7月生
歩き遍路を終えて その5 ~お接待~
『お接待』 ということを遍路に行くまでには余り考えたことがなかったです。
東予市国安の田舎道で人家がまばらだった集落を歩いていると年老いた女性が遍路姿の私をみると何か思い出したように、家の中に引き返し紙に包んだ何かを渡そうとしたのだが、何のことか分からずに断りました。今思えば失礼な事をしたのですが、それが 『接待』 のはじまりでした。
添蚯蚓(そえみみず)
中土佐町久礼から四万十町床鍋へ抜ける昔からの古道、遍路路です。みみずがはった跡のように曲がりくねっていることから付けられたといわれています。この道の入口あたりを歩いていると若い婦人が出てきて 「少し待って下さい、すぐにお婆さんが来ますから」 と言うので腰掛して待っていると86歳のお婆さんが古い布で手作りした巾着袋と、お茶、お菓子をくれました。巾着袋を毎日つくり、出来た分だけ遍路さんを呼び止めて渡しているとのこと。この古道を近所の人たちと手入れしていること、この道は松山の宮崎さんという人が泊まりこんで整備してくれて、又遍路さんが通るようになった事など話してくれました。久礼の添蚯蚓を歩くお遍路は年間400人だそうです。現在の歩き遍路は年間おおよそ5000人だそうです。久礼には他にも七子峠 (ななことうげ) 道、本蚯蚓道 (ほんみみずどう) があります。
我々は豊かになった暮らしの中で見失ったもの、とっくに忘れ去ったもの、見失ったり忘れたらいけない何かを我々のまえにさりげなく示し、優しく説明してくれるのがお接待のような気がしています。
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