<町田スタメン> ※()内は前節のスタメン
<群馬スタメン>
- 秋田からレンタルの武は前節の秋田戦に出場出来ず。
「高校サッカーの名門である監督が、個の力が強力なプロクラブを率いたらどうなるか」という実験台のような今季の町田。
就任したのは青森山田高校の指導者として長年働いてきた黒田剛氏で、その青森山田高サッカー部は、とにかくインセンシティの高いサッカーを展開してきたとの事。
そしてフィジカル面で高校サッカーの上をいくのが必然的なプロの土壌で、高校時代より質の高いサッカーが出来るのは当然である、という考えは理に適っているのでしょう。
後は結果のみ、という感じで始まった新生・町田の戦い。
この日の相手は群馬で、高校時代に何度もユースチームとの大会で相対してきた大槻毅監督(元浦和ユース監督)と相まみえた黒田氏。
群馬所属の櫛引や天笠といった、青森山田高出身の面々を懐かしがっている風でもあり。
大胆な補強策を進めてきたオフの町田、そのメインディッシュはやはり前線に控える、デューク・エリキといった強力助っ人勢。
それを最大限に活かすべく、立ち上がりからロングボールを蹴り続け、かつ前からのプレスを旺盛にするスタイル。
対する群馬もその圧力から逃げるようにロングボールを蹴り続けるという絵図の中、数多生まれた競り合いから選手が痛むシーンが多発する事となります。(開始3分足らずで反則3度……)
そして前半7分にデュークと競り合った酒井が頭部にチャージしてしまい、早くも反則・警告を受ける有様に。
このシーンのように、相手の圧力に対抗していく姿勢を見せるも、やはり苦戦は免れ得なかった群馬。
5分にはパスミスを犯してしまった所をダイレクトで高江に繋がれ、受けたエリキがドリブルからミドルシュート(枠外)と素早くフィニッシュに持ち込まれ。
そうしてパワーサッカーの下地を作った町田は、飛距離の長いスローインも交えてさらにその色を高め。
それでも最終ラインからはセンターバックが距離を取ったうえで繋ぐビルドアップを見せる等、前年まで積み上げてきたサッカーの色はまだ残っているようで。
全く良い所の無い立ち上がりとなった群馬ですが次第に落ち着きを取り戻し、前年と同様に攻撃時に3バックへと可変しての、パスワークで攻める体勢を見せ始め。
16分に右ポケットを突く攻撃でコーナーキックを獲得すると、キッカー佐藤のクロスを中央で畑尾が落とし、ファーで拾った天笠がシュート(高橋大がブロック)と際どい好機。
以降主体的な攻撃を見せる群馬のビルドアップに対し、その可変にやや戸惑いを見せる町田。
プレスを嵌められずに、エリキが単騎でプレッシャーを掛けては空回り、といったシーンが目立ちます。
特に天笠と、降りてボールを受けに来る長倉を捕まえるのに難儀しているようで、ボランチの高江はその長倉の動きにピン止めされた格好となりプレスに加われず。
22分には左サイドでボールを引き出した長倉が、川本とのスイッチを経てドリブルに入りハーフレーンからエリア内へ進入。
そして奥で切り返してシュートを放ちましたが、ここは角度がやや足りずにGKポープがセーブ。
こう書くと群馬がポゼッションで押し込んでいるかのようですが、クオリティ不足からか、自陣でのパスミスが目立ち攻撃機会は中々作れず。
この辺りは町田の前線のプレッシャーが自然と効いており、ワンミスからの失点危機を常時脳内に抱えているようでありました。
時間が進むにつれて、町田はロングボール以外の攻め手を増やし。
主に右サイドで平河の突破力を押し出し、意識させた所に逆の左で翁長が高い位置を取って攻撃に絡む、といったスタイルでしょうか。
21分にはゴールキックでも、左サイドで密集を作り、左に蹴ると見せかけたうえでポープが右の広大なスペースへフィードという逆を突くシーンもありました。
32分・34分とエリキがシュートを放つ(両者とも枠外)など、フィニッシャーがその実力を発揮しつつあり押し込む町田。
そして36分、中盤でのパスカットから右サイドで平河のドリブルに持ち込むと、川本に後ろから倒されて反則。
これで川本に警告が出されただけでなく、右サイド奥からのフリーキックという好機を得ます。
そしてキッカー下田のファーサイドへのクロスを、池田がそのフィジカルを活かし強引に合わせてヘディングシュート。
体勢を崩しながらもゴールへと突き刺し、セットプレーで先制に成功した町田。
スコアが動いた事でビハインドの群馬が、元来採っていたポゼッションの下地を押し出さざるを得ない展開に。
相変わらず天笠・長倉が浮いてボールを受けられる事で、ペースを握り押し込んでいきますが、火力不足は否めずという時間が続きます。
好機は43分に得たCKからで、クロスの跳ね返りから細貝がエリア内へボールを送り続ける流れになると、中央で収まった末に川本がシュートしますが池田のブロックに阻まれ。
そして町田にカウンターで陣地を回復され、前半はペースを失う事となりました。
1-0のまま前半を終え、ハーフタイムでの交代は無く。
好機は作れている群馬、そのまま流れを維持する体勢を採ったものの、後半は町田の対策が光る展開へと移り変わります。
入りで細貝の反則によりFKを得た町田、そこからの二次攻撃でクロスの跳ね返りを翁長がミドルシュート(GK櫛引セーブ)とパンチの利いたフィニッシュ。
対して反撃したい群馬は、後半7分にゴールキックでのフィードを長倉が直接ポストプレイで繋ぎ、受けた川本がドリブルからミドルシュート。(枠外)
相変わらず長倉の繋ぎが肝となっていた群馬の攻撃ですが、その一方でボランチの天笠に町田はデュークがマンマーク気味のチェックで自由を与えない体勢に。
これでパスの出し所を一つ失った群馬の最終ライン。
さらに長倉に対しては高江が常時チェックを欠かさずと、マーカーを合わせて来たような恰好に。
群馬の手段は、長倉がさらに降りて受けて返したのちに裏へ走り込んでロングパスを引き出す(10分)か、岡本が前に上がる右サイドからの前進に活路を見出す事となった節がありました。
18分に最終ラインから右へと展開して前進、エリア付近で細かく繋いだ末にクロスに持ち込む攻撃。
佐藤のクロスはブロックされるもこぼれ球を岡本がダイレクトで入れ、ファーに上がったボールを長倉が合わせヘディングシュート。
乾坤一擲というフィニッシュでしたが、ゴールポストを直撃して同点ならずに終わってしまいました。
直後の19分に、川本→山中へ交代。
対策はしたものの、それでもボールを握られている時間が激増した町田。
攻撃ではデューク狙いのロングボールの比重が増え、GKポープのフィード力もそれに一役買い。
20分にはそのパターンでのゴールキックから、跳ね返りを下田が裏へ直接ミドルパス、そしてエリキが走り込むという形でシュートを生み出し。(枠外)
単純ながらも高威力な攻撃で、手数が少なくなるなか追加点を生み出したい状況となります。
フィニッシュにプレスにと勤しんだエリキは24分にお役御免となり、荒木と交代。
いかにも燃料切れという交代ですが、それはどのチームにも平等に訪れる物であり、群馬も26分に再度動き。
大ベテラン・細貝とターゲット役の武が退き、風間・平松を投入します。
ボールを握っている群馬ですが、フィニッシュに辿り着く事は稀というポゼッションスタイルの悩み所に陥り。
シュートは29分でここもCKからで、クリアボールを佐藤が直接ミドルシュートに持っていくもGKポープがセーブ。
セットプレーで仕留めきれずにいると、逆に町田にセットプレーを浴び、そこでの攻防が勝負の分かれ目となりました。
33分に敵陣で攻撃を展開する町田、荒木のエリア内への突撃でこぼれたボールを、拾いにいった平河が天笠のチャージ受けてしまい反則。(天笠に警告)
これで右ハーフレーンでの絶好の位置で直接FKとなると、キッカー下田は左足で直接シュート。
しかし壁の上部を掠めて枠外となり、その後のCKもモノに出来ず。
それでも町田は、息切れが目立つ群馬に対し勢いを取り戻した結果、39分に再びそのチャンスが到来。(37分に下田・高橋大→稲葉・沼田へと交代)
池田の裏へのロングパスを受けた沼田、そのまま左奥でキープの体勢に入った所を岡本に倒されて反則。
今度はサイドからのFKで、クロスを選択するであろう状況のなか、キッカー翁長は直接シュートを選択します。
すると巻いて落ちたボールが綺麗に右サイドネットへと突き刺さり、GK櫛引が一歩も動けないという芸術的なゴールとなり。
再びのセットプレーからの得点で、リードを広げます。
窮地に陥った群馬、キックオフの前に中塩→北川へと交代。
中塩が抜けた左サイドバックに山中が入り、玉突き的に佐藤が左サイドハーフ・長倉が右SHへと移り、残り時間を戦います。
しかしただでさえ「ボールを持たされる展開」となっていた所に、守備意識を高めた相手が立ちはだかる状況では既に厳しく。
攻撃が途切れると、相変わらず強力なデューク目掛けたロングフィードで陣地を押し戻され、あわよくば攻撃に持ち込まれます。
そしてアディショナルタイム、もはや距離のある位置からのFKでも放り込みを選択するしかない群馬。(町田はその間に翁長・平河→太田・黒川へと交代)
右サイドからキッカー風間がクロス→中央で長倉収める→岡本後方からシュート(枠外)、というのが唯一のフィニッシュとなり。
時間も押し迫り、陣地を押し戻した町田が悠々と左サイドでパスを回す攻撃を展開、そしてクロスの跳ね返りから高江のミドルシュート(枠外)まで繋げ。
最後まで満足な反撃体制を作れなかった群馬を尻目に、試合終了の笛が鳴り勝利への進軍を歩みきった町田。
補強したストライカーでは無く、最終ラインの面々が先に得点を挙げたのは珍妙な結果となりましたが、この初勝利が上位争いへの宣言となるでしょうか。