<両軍スタメン>
FC東京ベンチメンバー=波多野(GK) 木本 エンリケ・トレヴィザン 東 常盤 塚川 西堂 小柏 野澤零温
川崎ベンチメンバー=チョンソンリョン(GK) ジェジエウ ファンウェルメスケルケン際 橘田 瀬川 河原 エリソン 伊藤 宮城
2週間空き再開、というタイミングで丁度良く組まれた多摩川クラシコ。
代表ウィーク明けで、その代表に選ばれている選手がお互い在籍している(FC東京=長友・川崎=高井)という点でも注目度は高く。
しかし長友は負傷により欠場(放送席の談)と、若干アテが外れた格好となりました。
川崎の常勝軍団への進化に伴い、対戦成績が大きく傾くに至ったダービーマッチ。(リーグ戦では2017年から、川崎の11勝2分3敗)
2017年のFC東京の1勝1分という星から、良くもまあここまで川崎の方に開いたのだから、クラブの成り上がりがなせる業と言うべきか。
近年の川崎の衰えから、これで五分に戻るのかという予感を孕ませたものの、前年も川崎の2勝。
しかも2戦とも3-0と、FC東京は優位に立つどころか、長らく後れを取る事によりコンプレックスまで得てしまったかのような成績を描き。
挽回を図りたい一年なのは言うに及ばずですが果たして。
立ち上がりは良好だったFC東京。
ボール保持で川崎のプレッシングを呼び込んで剥がし前進、という流れを作るポゼッションスタイルならではのペースの掴み方を見せます。
前半6分にGK野澤大を交えてのパスワークで剥がしに成功、右から運ぶ状況となるやすかさず土肥が対角線のロングパス。
これを受けた俵積田がワイドからのカットインを経てミドルシュート(GK山口瑠キャッチ)と、前線に数多並べたスピード型アタッカーの持ち運び一辺倒とはならず、組み立てによる好機。
すると直後の7分に決定機が訪れ、センターバック⇔ボランチのパス交換でマルシーニョを中央に寄せた事で、右から運ぶ余地を作るというこれも保持型の崩しによる起点。
そして佐藤がボールキープでの溜めを経て裏へのミドルパスと、緩急を使って裏を取った末に、走り込んだ俵積田がまたもシュート。
今度は至近距離でのフィニッシュでしたが、これを距離を詰めたGK山口瑠が顔面ブロックの形でセーブと、ハイレベルな攻防が炸裂します。
尚も繋ぐFC東京が、安斎が左ポケットからカットインシュート(ブロックを掠めて枠外、コーナーキックに)とひとしきり川崎ゴールを脅かし。
一方後れを取った川崎、こちらも地上で繋ぐ色を高めに掛かるも、FC東京のハイプレスの前に前進の機運が高まらず。
5-2-3の基本形から、ウイングバックを前に出してのプレッシャーによりサイドで運ぶ道筋が失われ。
ならばと11分、家長が降りて高井と佐々木の間に立つ事でその導線を作りに掛かると、その逆の左からの攻め。
丸山ミドルパス→マルシーニョスルーパス→脇坂走り込んでグラウンダーでクロスと、縦に速い運びに成功するも山田には惜しくも合わず。
川崎の次なる手は14分で、高井が一つ飛ばしのパスで左に預けると、三浦に対し佐藤が詰めにいった所を剥がして前進に入る三浦。
FC東京は三浦に対し白井が詰めたかった状況で、高井→丸山→三浦と循環する想定をしていた所で(佐藤が丸山に詰める予定が)裏を掻かれたため隙が生まれ。
ここでは前進からの裏へのパスがカットされて終わるも、変節により徐々に形を作る元王者らしい振る舞いを見せていきます。
その後再び保持の時間を高めるFC東京ですが、エリア内を突いても中々フィニッシュに持ち込めず。
19分にカウンターを浴びかかった所で、橋本が奪い返して逆カウンターの形を作り、俵積田が左奥を突いての戻しから高がミドルシュート(枠外)というのが唯一のものとなり。
ややダレてきた状況で、24分に再び降りてきた家長がボールに触れたのちの保持から形を作る川崎。
佐々木ミドルパス→山田ポストプレイがディフェンスに遭いこぼれるも、脇坂が拾って継続し左ポケットをマルシーニョが突く好機に。
そして細かなタッチを経てシュート(白井がブロック)と、全盛期を思い出させるかのように、家長のボールキープでリズムを生み出しに掛かります。
その川崎の姿に脅威を覚えたか、FC東京は27分の攻撃で、センターバック(ビルドアップ時は主に土肥がサイドバック化する形)の木村が持ち運びを選択。
しかしこれが丸山に奪われるとその背後を突かれ、またもマルシーニョが持ち運ぶ状況となり、戻しを受けた大島が仲川に倒されて反則。
セットプレーの好機を得た川崎、この左ワイドからのフリーキックで、キッカー三浦のクロスを高井が跳び込んでヘディングシュート。
GK野澤大のセーブに阻まれますが、尚も左CKで継続すると再びキッカー三浦のクロスを高井が合わせヘディングシュート。
ネットを揺らして決まったかに見えたものの、その前に家長・山本のGK野澤大に対するブロッキングが反則を取られたようで、幻のゴールとなってしまいました。
お互いボール保持をベースとする、傍らから観ればスローペースに映りながらも、密度の高い攻防が繰り広げられ。
33分のFC東京、右から土肥が立ち上がりのように対角線のロングパスを送るも、これをカットした川崎が保持の姿勢に入ると高井が最後方から対角線のロングパス。
これがマルシーニョに渡る(トラップ際を奪った白井がハンドの反則)という具合に、今度はFC東京の得意手を折ったうえでかつ同じ手でそれを上回りに掛かったでしょうか。
元王者かつ、ダービーマッチで優位性を取るクラブに相応しいその姿が面白く映り。
そうした立ち回りにより、次第に攻撃機会で上回りを見せる川崎。
何度も鋭いクロスが供給され、その度に山田が走り込むもののあと少しで合わないという場面が頻発し。
40分には最終ラインでのパスワークでハイプレスを剥がし、右から家長が持ち運んだのち山本のミドルパスで突かれるエリア内。
左ポケットで受けたマルシーニョが、ここでは戻しを選択し、中央ペナルティアークから脇坂がシュートと変幻自在の攻め。
橋本がブロックして何とか防いだFC東京ですが、これにより橋本が痛むその絵図が示すように、立ち上がりの勢いは削がれる格好となりました。
結局スコアレスで前半終了。
時間が進むにつれ押されていたFC東京ですが、ボールは握れていたという事もありこのハーフタイムでは静観を選択します。
しかしそれが拙かったか、後半のキックオフからは、一転してハイプレスに転じた川崎に対し押された末に逃げのロングボールを回収されて終了となり。
そして敵陣で保持を続ける川崎、ここでもポジションチェンジを繰り広げる家長を掴まえられず窮地に陥る事となり。
後半3分、ボールキープで右ハーフレーン→ワイドへと移動する事で岡を引き付けた家長、これによりポッカリ空いた右ポケットへ(佐々木から)送られたスルーパスを受けた脇坂。
奥へ切り込んで上げたクロスは誰にも合わずも、逆サイドで拾ったマルシーニョから再度奥を抉り三浦のクロス(GK野澤大が直接キャッチ)と、敵陣でサイドを振られ続ける厳しい攻めを浴びます。
いきなり面食らった感のFC東京ですが、直ぐに立ち治り前進体勢を整え。
5分に自陣で高のボール奪取から右サイドを前進、パスに入れ替わりからドリブルに入った佐藤に対し、丸山がオブストラクションの形で反則。
これで右ハーフレーンからの直接FKになると、キッカー安斎は壁の外から巻くように直接シュート。
ネットが揺れて一瞬沸き上がった味の素スタジアムでしたが、サイドネット外側という結果でスコアは動きません。
これを切欠に、右サイドからの攻めを増やすFC東京。
しかし10分に長いボール保持から、橋本の斜めの縦パスが丸山にカットされると一転川崎のターンとなり、その丸山の展開からこちらも右サイドでの攻め。
(家長の)スルーパスを受ける事で深さを取った佐々木が、家長とのパス交換からカットインを選択すると、高を剥がした末にポケットからグラウンダーでクロス。
脇坂のトラップが丁度スイッチのような形になると、受ける側の山田はダイレクトでシュートを選択、土肥のブロックを掠めてゴールに吸い込まれるボール。
前半同様、FC東京と同じ攻め(右サイドアタック)で上回り先制点に辿り着きました。
追い掛ける事を余儀なくされたFC東京、ホームである以上許されない敗戦。
しかし失点により色を失ったか、右サイドアタックは取り止められ。
左ワイドに俵積田を固定化させ、安斎や土肥が内に絞るという可変も取り入れながら繋ぐ体制に。
それでも一度失った流れは取り戻せず、逆に川崎の右サイドから押し込まれる絵図が続きます。
例によって家長のボールキープを軸に、彼を中心としたトライアングルを形成させて繋ぐ事でポゼッションを高め。
中々それを切る事が出来ないFC東京ディフェンス、反則への傾倒も見せる事となり。
18分に大島ミドルパス→山田ポストプレイを起点とし、中央→右への展開ののち家長が奥へと切り込み。
キープに入って溜めを作る家長に対し、高があろう事か後ろから腕で激しくチャージ。
これに倒れなかった家長ですがボールはこぼれ、俵積田が拾ってロストしたその刹那、高に対し激昂する一幕へと発展してしまいます。
慌ててプレーが止められるも結局反則無しという絵図に「世界基準の判定」がまたも悪目立ちしたような格好で、チャージに対しての「倒れない損」は一層色濃くなった感じであり。
これにより不穏な空気となりましたが、追い掛けるFC東京は後ろめたさはあるもののそれを利用しない手は無く。
直後の20分にベンチが動き、橋本・俵積田→東・小柏へと2枚替えを敢行します。
ここからさらに保持の色を強め、ボランチ付近へと可変する土肥(この動き自体は前半中頃から見せていた)を中心に、後方の縦パスを軸に組み立て。
しかしこの日の前線はターゲットタイプが不在なため、クロスに辿り着いてもフィニッシュが遠く。
川崎は高井・丸山を中心に中央を固め、多少サイドを抉られても冷静な守備対応でやり過ごしていきます。
そして26分、双方交代を選択しFC東京は佐藤→塚川。(仲川がシャドーに回る)
川崎はマルシーニョ→伊藤へと交代します。
不足しているターゲットの投入と判り易いFC東京の采配でしたが、その効果が現れる前に非情な結末が待っていました。
川崎はスローインによる漸進を経て、27分に右奥でのスローインからの繋ぎを得点に結び付け。
パス交換から上がった佐々木のクロスが、ニアでの東のクリアがフリックのようになってしまい、流れた所を素早く反応した伊藤が合わせシュート。
綺麗にゴールに突き刺さる、伊藤の投入直後でのゴールでリードを広げるに至りました。
苦しくなったFC東京を尻目に、川崎は33分に大島・山田→橘田・エリソンへと2枚替え。
豊富な駒を活かしながら、リードを保つ王道の立ち回り。
その直後、前に出た高井が小柏と交錯しながらボール奪取、こぼれ球を拾った伊藤が中央を前進してシュート。
土肥がブロックして防ぐも、交錯した小柏が肩を痛める事態になった事で顔面蒼白といった格好に。
札幌時代から癖になっている個所で危ぶまれましたが、幸い無事でプレーを続けるに至った小柏。(ピッチ外→復帰)
それでも反撃の機運が高まらない状況は変わらないFC東京。
焦りや苛立ちといった要素から逃れられない、という所でついに決定的なミスをやってしまい。
38分、敵陣での繋ぎで最終ラインから作り直しに入るも、東のバックパスが短くなって木村の眼前で脇坂がカット。
そのまま木村をかわしてドリブルに入った事で完全に抜け出し、そのままエリア内に進入しGKと一対一、と見せかけて並走してきたエリソンへ横パス。
難なくシュートをネットに突き刺したエリソンにより、止めとなる3点目が齎されました。
これでどうしようも無くなってしまったFC東京、止むを得ず後半当初である右サイドアタックの色を強め。
白井が推進力を見せるものの、時既に遅しのそしりは免れません。
41分に最後の交代を敢行、土肥・仲川→常盤・野澤零へと2枚替え。(4-2-3-1へシフト)
すると直後に川崎も、山本・家長→河原・瀬川へと2枚替え。
家長が退いたものの右サイドで攻める意欲は旺盛で、FC東京が四苦八苦する状況は変わらず。
相手のクリアボールも拾って攻め続けた末に、アディショナルタイムに右ワイドからエリソンがカットインでエリア内へ。
これは遮断されるも拾い直したのち再度右から攻め、瀬川が佐々木とのパス交換の末に右ポケットからトラップ→シュート。(GK野澤大キャッチ)
何とかその流れを切ったFC東京は、左サイド深い所から安斎がドリブルで持ち運び、高井を股抜きした所でその高井に倒され反則。
これでセットプレー攻勢に入った事で、最後の意地を見せたかった所でしたがフィニッシュは生まれず。
最後は左CKから、ターゲットとして起用されたはずの塚川がクロスを収められずに終了と、チグハグ感が最高潮という感じで幕を閉じました。
0-3で試合終了となり、これで3試合連続同スコアでクラシコを制した川崎。
ここから過密日程で、リーグ戦のみの7連戦が待ち受けています(ACLによる日程調整の結果)が、果たして王者復権はあるでしょうか。
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