※前回の水戸の記事はこちら(3節・岡山戦、1-1)
<水戸スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 左サイドハーフは最初鵜木がスタメンも、試合前練習での故障により小原と入れ替え。
- それに伴い、空いたベンチメンバーに井上怜を補充。
- 草野が今季初のメンバー入りで即スタメン。ベンチには高岸も今季初めて入る。
- 松田佳大がJ3・FC大阪へレンタル移籍(育成型)したため5節付で登録抹消。
- 黒石の故障が3/8に発表される。全治は未定。
<甲府スタメン>
- 佐藤が2節で負傷により交代、以降ベンチ外が続く。
雨中の一戦。
しかしピッチ内の芝の状態が悪い今季のケーズデンキスタジアム水戸では、ボールが転がり易くなる雨という要素は歓待なるものでしょうか。
それでも前半2分に右サイドで後藤田が送ったスルーパスは、ピッチの凹凸により軌道が変わりエリア内へ転がる(しかしそのおかげで武田に繋がりかかりコーナーキックに)など、その特性は健在。
そんな状況が示す通り、最終ラインからパスを繋いで攻める水戸の攻撃は一定の成果が見られるものとなり。
しかしなまじ自分達の持ち味が発揮できた故に、逆に相手対策という面を脇に追いやってしまった感がありました。
パスサッカーと言っても、水戸は後方から縦パスを急所へ通す事を第一とした攻撃。
ある程度のポゼッションを確保しつつも、勝負のパスを何処かで打ち込まなければただの「ボールを持たされるサッカー」となりがち。
水戸はそれを良く解っている風であり、次々と甲府ディフェンスの間を狙ってパスを送り、好機を作らんとします。
しかし甲府サイドもそれを遮断せんとし、カットに成功するとウタカを中心軸として縦に速く運び、水戸のベクトルの逆を突かんとするスタイル。
この攻防が基本となり、以降それは最後まで続いたという全体の印象でした。
水戸のビルドアップの形は、ドイスボランチが縦関係となり、「2センターバック+アンカー」を作るというもの。
アンカーに位置取るのはもっぱら前田の方で、安永は様々な位置に張り出して前線の攻撃を援ける役を担い。
甲府はハイプレスにいく事は稀で、基本はしっかりと4-4-2の守備体系を作って構えるスタイルなため、こうした最終ラインでの組み立ては阻害される事は少なく。
13分には最前線のウタカ・三平の前方でパスを受けた前田、そのままドリブルで2人の間を抜く事を選択する等、状況に応じたサッカーが出来ている風でありました。
敵陣へと運ぶ事は容易に行える水戸ですが、その後も前述の通り縦パス・スルーパスで積極的に前へ送る攻めを貫き。
前半25分までの間にCKも5本得る等、押し込みの成果は現れていましたが、若干攻め急ぎの印象もあり。
落ち着く間が無いといったサッカーで、今風に言うならば「パウサ」の要素が圧倒的に足りない感じでしょうか。
一方の甲府も、一度自分達の攻めになるとカウンター気味に縦に速く仕掛けるのが中心。
しかし落ち着きを齎すのが最前線のウタカの存在で、カウンターの橋頭堡として構えながらも、ボールキープで溜めを作るその姿は老獪という感じ。
チームに与える好影響はこの日は凄まじいものとなり、彼抜きならばただの「お互い縦に速いだけで、攻撃権が入れ替わり続けるせわしない試合」と評されていた事でしょう。
30分に品田が水戸最終ライン裏へ一気にロングパスを送ると、受けたウタカがGKと一対一に持ち込む決定機に。
GK山口を左へとかわしたものの、タッチが大きくなりシュートは撃てず終わったウタカ。
その後判定を巡ってか一揉めあり(映像では映らず、GK山口の声も響いていたのでゴールキックかCKかという所か)、直後の31分には反則を犯した松本凪が異議により警告を受けるという具合に甲府サイドは不満げな流れとなります。
すると水戸はそれを突き、直後の中盤からのフリーキックでキッカー前田が縦パス、受けた草野がすかさず前を向いてスルーパスと素早くチャンスを作りにいき。
そして中央・エリア目前という位置に走り込んだ小原も、進入では無くダイレクトでのシュートを選択すると、見事にゴール左へと突き刺します。
まさに電光石火の前進で、先制点を挙げた水戸。
しかしこの成果により、水戸は自身で果敢に縦へと向かう攻撃を続ける流れを固定化させてしまい。
続く34分にも、武田がパスカットからのドリブルで一気にエリア手前まで運び、右からのカットインシュート(ゴール右へ外れる)で脅かし。
リードを得て落ち着きが齎されるという事は無く、この意識がその後転落を招く事となったでしょうか。
一方の甲府。
カウンターを第一としつつも、ビルドアップの場面では最終ラインを3枚へと可変させ(品田が最終ラインへと降りる)、そのうえで須貝を前に上げるという立ち回りも見せ。
それを見た水戸側も、「前掛かりになる相手の意識を突きたい」という思いが生まれてしまった感がありました。
39分、バックパスでボールを持ったタビナスが最終ラインから自らドリブルで運ぶという選択を採り。
しかし三平を剥がせずに奪われる(前田へのコースを切りながらついて行った三平も巧かったけど)と、その隙を突かれてスルーパスがウタカに通るという具合に裏目に出ます。
ウタカは溜めを作ったのち中央の松本凪へパスを送り、受けた松本凪が豪快なミドルシュートをネットに突き刺し。
ゴラッソっぽいシュートで同点とした甲府ですが、水戸の立ち回りの拙さが浮き彫りとなった感が強く。
CBが持ち運ぶのはやはり時と場合を考えるべきであり、チーム全体が前へ向かう意識に飲み込まれていたという絵図になりました。
その後41分にカウンターに持ち込んだ甲府がこの日初のCKを得る等、形勢は逆転した風であり。
43分には再び三平のボール奪取から、品田を経由してパスを受けたウタカがワントラップで剥がして抜け出し。
そしてエリア内右へミドルパスを通し、走り込んで受けた品田がシュート気味のグラウンダーのクロスでゴールを脅かし。(ファーで長谷川が待ち受けるもその前でクリア)
このままでは終われないという水戸、アディショナルタイムに入ると決定機。
クリアボールを収めにいった草野が入れ替わりで前を向き、そのまま浮き球を裏へ送ると、走り込んだ梅田がシュート。
これがグラウンダーの軌道でゴールを襲うも、左ポストを直撃と惜しくも逃してしまい。
強烈な一矢を印象に残すも、結局は1-1のまま前半を終えます。
ハーフタイムでの交代は共に無く。
水戸は既に、試合前のアクシデントで予定外の起用を強いられていた(ベンチメンバーのはず小原がスタメンとなる)ので、スイッチを入れる采配がし辛い状況。
落ち着きが無いと評されても仕方無いサッカーを繰り広げていたのも、そうした余裕の無さが遠因かも知れません。
そして後半を迎え、後半2分に変わらぬスタイルで左サイドから攻める水戸。
ボランチの安永も加えて人数を掛けて奥を突くも、パスが繋がらずに切られると甲府がカウンターに持ち込みます。
クリアされたボールをウタカがポストプレイでスイッチを入れると、三平のスルーパスでウタカの下へと戻り、溜めを作ったのちエリア内中央へラストパスを送るウタカ。
走り込む須貝は合わせられずも、こぼれ球を三平がシュートしてゴールネットを揺らし。
縦に速く運びながらも、ウタカの溜めも巧く絡んだ極上のカウンターといった勝ち越し点だったでしょうか。
ショックを隠せぬまま試合を再開させた水戸。
直後の攻撃は実らず甲府の自陣エリア内からのFKとなると、GK河田のロングフィードからの攻めを切る事が出来ず。
三平に縦パスを通されると、渡った先はよりによってウタカであり、今度はペナルティアークからシュートとフィニッシャーと化し。
そして強烈なボールがGK山口のセーブを弾いてゴール右に吸い込まれ、今季初ゴールを挙げたウタカ、喜びを露わにして篠田善之監督の下に駆け寄ります。
これで一気に2点差を付けた甲府。
一気に窮地に立たされた水戸、当然ながらその後も落ち着きを齎す事は出来ず。
9分にベンチは早くも動き、ジョーカーとして結果を出している寺沼の投入に踏み切ります。(梅田と交代、同時にタビナス→長井へと交代)
その直後の10分に、小原の左サイド奥でのクロスから早々とヘディングシュートを放つ寺沼。(GK河田キャッチ)
しかし調子は変わらず、水戸はボール支配の時間こそ長くなるも、甲府が守備意識を強めた結果でもあり。
ブロックの外側で何とかグラウンダーの長いパスを繋ぎ、サイドから運ぶものの実りは少なく。
逆に15分、再びゴールキックでのロングフィード、今度は誰も触れずバウンドした所を繋がれて甲府の好機に。
三平がウタカとのワンツーからスルーパスを通すという具合に、甲府の前線のパワーに縦横無尽にされる(その後鳥海がクロスも中央の長谷川には僅かに合わず)水戸ディフェンス。
たまらず直後の16分、再びベンチが動き小原→唐山へと交代。
その後も17分に三平がヘディングシュート(枠外)、20分に鳥海が右ポケットからの際どいクロス(GK山口弾く)など、甲府にゴールを脅かされるシーンが続き。
何とか毛色の違う攻撃で流れを変えたい水戸。
21分にカウンターの好機が訪れ、右サイドで前進する草野、クロスと見せかけて直接シュートを狙い。
ゴール左へ外れるも、甲府のブロックが整う前に仕掛けるというのは悪くなく。
(直後の22分に甲府は三平→ジェトゥリオに交代、長谷川がトップ下に回る)
その後裏へのロングパス一本でCKを獲得したり(22分)と、その意識が奏功して再び押し込む流れが生まれかける水戸。
しかしそれも一瞬で、甲府はウタカや松本凪がエリア内からシュートを撃つ(前者はGK山口キャッチ・後者は枠外)など、前への意識を突かれるのは相変わらず。
そして27分に最後のカードを切る水戸ベンチ、大崎・草野→井上怜・柳町へと交代します。
以降前田は左SHへとシフトしたようでしたが、攻撃の際はボランチないしは左センターバックのような位置取りをする前田。
それに伴い両サイドの後藤田・井上怜が高い位置を取るなど、3バックへの可変を行っている節を見せ。
これで攻撃権を支配する流れを得た水戸。
甲府が30分に交代を敢行(鳥海・松本凪→宮崎・山本)しても、今度はそれを継続させます。
そして31分、GK山口からの繋ぎで左サイドへ展開し、井上怜のドリブルで奥を突いてグラウンダーでクロス。
これが寺沼に僅かに合わずクリアされるも、得た左CKですかさずショートコーナーから再開、後方に戻した後再びスルーパスで奥を突いて入れられる井上怜のクロス。
今度は高いボールで寺沼のヘディングシュートに繋げ、見事ゴールに突き刺さり奏功。
またもジョーカーの期待に応えた寺沼により、1点差に迫った水戸。
しかし直後の33分、甲府はクリアボールを宮崎が右のスペースへ蹴り出すと、自ら拾って一気に好機に持ち込み。
そしてクロスが入れられると、後方からジェトゥリオが果敢に走り込んでヘディングシュートを放ち、GK山口が辛うじてセーブ。
何とか防いだ水戸でしたが、流れはこの強烈な一撃で失われた感がありました。
その後も攻め方は大きく変えず、寺沼の下にフィニッシュを集めて追い付かんとする水戸。
終盤を迎え、甲府はそれに対して最後の交代(41分、小林・品田→荒木・関口)とともに、3-4-2-1つまり5バックシステムへと布陣変更。
盤石なブロックの前に圧された水戸、以降フィニッシュまで繋ぐ事はほぼ不可能となり。
そしてその隙を突く甲府。
44分のウタカのエリア内への進入こそ長井のシュートブロックで止めたものの、ATに再びウタカの下に決定機が。
長谷川が斜めの縦パスをウタカに送ると、楠本が前に出てパスカットにいくも及ばず渡ってしまい、そのままGKと一対一に。
そしてエリア内に入った直後に山口の左へと蹴り込んだウタカ、ダメ押しのゴールを齎します。
以降万策尽きたかのように、放り込み体制へと移行する水戸の攻撃。
甲府はその後もカウンターチャンスを迎えるも、流石に時間を使う体制へと移行してシュートには向かわず。
反則の際の遅延行為で宮崎が警告を受ける一幕もありましたが、無事に逃げ切り。
2-4で試合終了の時を迎え、一本調子な水戸を逆手に取る勝利を挙げた甲府、これで3連勝となりました。