※前回の山形の記事はこちら(20節・北九州戦)
※前回の松本の記事はこちら(22節・徳島戦)
前節・金沢戦(0-1)でジャエルが負傷交代するなど、就任早々からイレギュラーへの対応を余儀なくされている松本・柴田峡監督。
第三の移籍期間に突入し、フロントも大分で燻っていた佐藤和弘を獲得するなど、低迷打破になりふり構わない姿勢を示しています。
22節・徳島戦(1-1)の途中から、藤田を一列前に上げての攻撃に手応えを得たのか、フォーメーションを3-3-2-2へとマイナーチェンジ。
この日は藤田・前(前節から復帰)を2シャドーとして起用し、セルジーニョ・阪野の2トップ。
前半1分、ロングパス攻勢でチャンスを作らんとする松本。(藤田ロングパス→阪野収めてパスワーク→常田ロングパス→阪野収めにいって山形・野田と競り合い、反則)
3分にはGK村山のパントキックから、敵陣で落下点に入った阪野が野田に倒されて反則。
得た直接フリーキックで、距離があったもののセルジーニョが直接狙い、シュートはゴール左下を襲ったもののGK佐藤昭大がセーブ。
FWにロングボールを当てていく攻勢で、(反町康治監督時代への)原点回帰の趣が見られたものの、その後はショートパスやスルーパスを多めにしての組み立てで好機を作っていきます。
12分、スローインからダイレクトパスの連続、米原のスルーパスに前が走り込み、前のグラウンダーのクロスを藤田がシュート。(ブロック)
しかし以降は、柴田監督が「完成度の高いチーム」と評する山形の攻撃の前に苦戦。
ショートパス主体の攻撃を阻む事もままならず、サイド奥(主に左)への進入を許してしまう場面の連続となります。
それでも山形のフィニッシュは、13分の中村駿のミドルシュートぐらいが目立ったシーン。
左サイドでは良い組み立てが出来ても、逆の右サイドでの攻撃が今一つで、9試合ぶりのスタメンとなった右サイドバック・三鬼の突破力が冴えず。
対面となった松本・高橋諒のチェックに四苦八苦する場面が目立ち、それが全体としてシュートを放てない流れに繋がっていました。
飲水タイムを前後して松本が再び攻勢、23分にはセルジーニョが左サイドをドリブル、エリア付近で高橋諒とパス交換(高橋諒はヒールパス)したのちシュート。(枠外)
31分はコーナーキックから、クロスの跳ね返しを藤田が直接ミドルシュート(ブロックされGK佐藤昭がキャッチ)と攻め立てますが、得点は奪えず。
ここから松本の流れは途切れ、再び山形の攻撃が牙を向く展開に。
31分に渡邊がエリア内左からシュートを放った(ブロックされサイドネット)のを皮切りに、今度は良い組み立てをフィニッシュに繋いでいくシーンを量産します。
この時間帯で目立ったのが、機能不全だった右サイドを活かす工夫。
松本・高橋諒を剥がせない三鬼をカバーするべく、様々な手段を絡めていきます。
35分、ここも三鬼が高橋諒のアタックでこぼされた直後で、熊本が拾い最終ラインからの組み立て。
野田は浮き球で三鬼へパスを送ると、三鬼はヘディングで高橋諒をかわし、そのまま右サイドでパスワークに加わります。
そして渡邊からクロスが上がると南がヘッドで落とし、松本の戻しに中村駿が走り込んでシュート。(ブロック)
勢いを得た山形、以降も攻勢を続けます。
38分には左サイドから松本がクロス、ヴィニシウス・アラウージョが収め、中村充孝の戻しから再び中村駿がシュート。(枠外)
41分には左サイドへヴィニシウスが開き、彼の戻しを受けた松本からクロスが上がると、ファーサイドで渡邊がヘディングシュート。(GK守田セーブ)
43分には再び右サイド、今度は三鬼が中央に絞って(渡邊がサイドに張る)パスを受け、縦パスを送って攻撃を作る事に成功。(サイドチェンジの後左から南がクロスも繋がらず)
様々な攻撃を絡めて押し込むも、松本も寸前でやらせずという展開。
アディショナルタイムには、松本のCKから山形がカウンター。
右サイドで中村充が松本・セルジーニョから奪い、パスワークで前進を重ねて中央で受けた渡邊がエリア内に進入。
松本ディフェンスのアタックをリフティングっぽくかわし、シュートを放ちましたがここもGK守田が間一髪セーブしてゴールならず。
山形に得点の匂いが漂うも、0-0のまま前半を終えます。
22節・磐田戦で薄氷の勝利(オウンゴールにより1-0)を挙げ、暗雲を振り払う事に成功したか前節(群馬戦)は4-1の大勝。
石丸清隆監督が落とし込んだ、4-4-2による攻撃サッカーの躍動を予感させる山形の現状。
ただし守備面に目を向けると、GKに負傷者が相次ぐ(櫛引、ミンソンジュン)炎上状態となり、フリーとなっていた藤嶋(川崎と契約解除)を緊急的に獲得する措置が採られました。
この日まで全試合出場者は3人で、ボランチの中村駿とセンターバックの熊本は、この試合も含め全試合スタメンとフル回転。
後の一人は山岸で、攻撃の要・フィニッシャーとして欠かせない選手でしたが、この日はベンチ外に。
前節2得点を挙げ上昇機運に乗っており、またこの日が5連戦の最後と(束の間の)休息が待っている日程なのに何故……という采配となりました。
そして1トップにヴィニシウスを起用したものの、キッカーも兼ねているヴィニシウス、CKの際には「1トップがターゲット役ではない」という珍妙な事態となっていました。
明らかに山岸不在によりイレギュラーな対応を強いられている状態で、緊急的な措置はGKだけでは無かったという事象でしたが、それが後日確信に変わる事となります。
後半立ち上がり、双方攻め込む場面を作るもシュートは生まれず。
松本がゴールキックからヘディングを繋ぎ、高橋諒が左サイドをドリブルで持ち上がる事でCKを得たのが後半4分。
その左CKで、セルジーニョの低いクロスをニアサイドで米原がフリック。
これが上空に浮いたボールとなり、橋内の前方への落としを大野が合わせゴールに突き刺します。
鈴木がオフサイドポジションに居たため、大野の抜け出しを山形ディフェンスが見落としていた形となって松本が先制。
押し込みながらも先制を許してしまった山形、前半同様にパスワークで攻め上がります。
しかし焦りもあったのか、7分には松本のカウンターを誘発してしまう場面も。(高橋諒が自陣から一気にドリブルでエリア手前まで進むも、阪野へのラストパスをカット)
嫌な流れが襲いつつあった中、8分。
左サイドで松本のパスカットから、南のスルーパスを受けたヴィニシウスがグラウンダーでクロス。
ニアサイドで南が触れると中村充へと収まり、そのままシュートをGK村山の股を通してゴールに突き刺した中村充。
早い時間帯で同点に追い付きます。
しかし安堵の時間はあまりに短かった。
10分、敵陣で藤田が頭でパスカットして松本がショートカウンター、拾ったセルジーニョのパスがペナルティアークに走り込む前へ。
前のシュートがゴール右へと突き刺さり、再度リードを奪った松本。
これが移籍後初ゴールとなった前、本来は守備的な選手ながら、この日は攻撃的なポジションで見事に結果に結び付けました。
これで山形サイドは意気消沈したか、その後も松本ペースが続く展開に。
ようやくの反撃機会は17分、左サイドで形を作ったのち松本が奥へスルーパス、受けた南がグラウンダーでクロス。
ニアで中村充が潰れ、エリア手前へ流れたボールを中村駿がシュートしますが、GK守田のセーブに阻まれます。
この直後、三鬼・渡邊→山田・末吉へと2枚替え。
右サイドを手当てし、末吉の突破力を生かそうという姿勢を取ったと思われますが、その思いは直後のセットプレー攻勢で肩透かしに。
20分に左サイドで直接FKを得てから、FK2本・CK2本と続く、両チームともに我慢を強いられる攻防に。
最後のCKで、クリアボールを南がシュートするもブロックされ結局モノに出来ず、飲水タイムを迎えます。
それと前後して、山形の意図を汲んだ松本は交代カードを切って対策。
19分に米原・藤田→山本真希・中美へ、25分に高橋諒→山本龍平へと交代し、中央~左サイドの運動量を補填します。
これで山形はボールを握って攻勢をかけるも、シュートまでいけない展開に。
再び交代カードに手を掛け、ヴィニシウス・岡崎→大槻・小松へと交代(28分)して突破口を図らんとします。
しかしその直後(30分)、ミスから危機を招きます。
GK佐藤昭のパスを阪野にカットされ、エリア内でボールを持たれる大ピンチに。
阪野のシュートこそ佐藤昭が防いだものの、直後阪野が横パスを出した先にセルジーニョが待ち構えておりジ・エンド。
熊本のブロックも及ばず(股を抜かれる)、手痛い追加点を与えてしまいました。
以降ようやく右サイドで末吉の突破力を活かした攻撃に取り掛かるも、時既に遅く。
33分末吉が松本・山本龍から反則を受けて得たFKで、キッカー中村駿のニアサイドへのクロスに熊本が合わせるもこぼれ、そのボールを熊本がシュートするもゴール左へ外れ。
34分には末吉のクロスがブロックされるも、大槻が繋いで山田から再度クロスが上がり、ニアサイドで大槻がヘディングシュートを放つも枠を捉えられず。
可能性があったのはここまでで、以降も攻め上がりクロスの山を築いた山形でしたが、成果は45分の大槻のヘディングシュート(ゴール左へ外れる)ぐらい。
反対に松本は、カウンター狙いにシフトし守りを固めつつ、43分にセルジーニョと阪野をアルヴァロ・ロドリゲスと服部に交代。
3-4-2-1へとフォーメーションを弄り、前をシャドー→ボランチへとシフトして5-4-1の守備ブロックを築く体勢へ。
そうして山形に何も起こさせず、無事に柴田監督の初勝利に辿り着きました。
試合から2日後、山形を揺るがすニュースが公に。
この日欠場した山岸の、福岡への完全移籍が決定という一報が流れ、伏線回収となってしまいました。
思えば前年も、J2下位に沈む岐阜から完全移籍で山形に加わったという経歴の山岸。
溢れ出る上昇志向を抑えられずの選択は責める事が出来ず。
果たして今季こそ昇格を味わう事が出来るでしょうか。