※前回の水戸の記事はこちら(25節・千葉戦)
※前回の山形の記事はこちら(24節・松本戦)
※前回の両クラブの対戦はこちら(4節)
エース・山岸の突然の移籍に揺れる……と思いきや、そこから3連勝を達成とリバウンドメンタリティを発揮している山形。
その穴を埋めるように、助っ人のヴィニシウス・アラウージョが本領発揮し、3試合で4ゴールという大活躍。
Jリーグ経験皆無の新助っ人という博打になり易い補強策(攻撃的な選手は特に)でしたが、ここに来て成功の側に針が振れて来たのは目出度い限りでしょう。
好循環を持って挑んだこの試合ですが、山岸移籍に合わせるようにレンタルで獲得した前川を初めてスタメンで起用。
J1では殆ど出番が無かったとはいえ、前年は福岡で場数を踏んできた選手(40試合出場)であり、即戦力の働きが求められる現状でも問題無さそうです。
得点はリーグトップと、攻撃面ではJ2トップクラスの水戸。
しかしこの日の山形は、立ち上がりからプレス重視の守備でその攻撃陣を封じ込めていきペースを握る事に成功します。
ビルドアップを思うようにさせず、ロングボールを蹴らせては回収し、攻撃に切り替える山形。
その中で新加入の前川も奮起し、前半7分にはコーナーキックから、ショートコーナーを経てのグラウンダーのクロスがこぼれた所をエリア内右からシュート。(サイドネット)
19分には三鬼の落としを拾ってシュート(ブロック)と、積極的にゴールを狙う動きを見せました。
長短織り交ぜて攻撃を組み立てる山形。
両サイドバック(右・三鬼、左・山田拓巳)も、ただオーバーラップで攻めに加わるだけに留まらず、中央へ絞ったりターゲットになったりという動きで引き出しを増やしていきます。
水戸は相手の流れを断ち切らんと、何とか散発的に攻撃を仕掛けていきます。
しかし全体として流れを奪う事は出来ず。
29分にCKで攻勢に出るも、2本目でのクロスがクリアされると山形のカウンターが炸裂。
クリアボールを前川が拾ってロングパス、これをヴィニシウスが前向きのまま収め、そのままエリア手前まで進んでシュート。
GK松井がセーブして何とか防ぎます。(そして山形もここから2本CKが続く)
これで水戸は浮足立ったか、35分にはGK松井のキックをヴィニシウスがブロック、そのままエリア内で拾い山形の絶好機。
パスを受けた渡邊が切り返しからシュートしますが、ここも松井がセーブして凌ぎます。
たまらず以降は両サイドバック(岸田と河野)の位置を入れ替え、右に河野・左に岸田が回りました。
山形の左サイドハーフ・渡邊の跳梁が目立ち、そこに前川も加わる左サイドからの攻撃をケアしようというのが水戸サイドの狙いだったでしょうか。
しかしその直後の39分に右サイドから攻撃する山形。
三鬼縦パス→前川ポストプレイ→北川スルーパスに前川走り込んで受ける→ドリブルでエリア内右へ進入という流れから、前川がシュートしますがゴール左へと外れ。
2トップの一角として登録されていたこの日の前川ですが、4-2-3-1のトップ下に近い感覚で両サイドの攻撃に加担していました。
水戸の弥縫策も物ともせず、結局前半終了まで攻撃を仕掛け続けた山形。
しかし肝心の先制点は奪えず、スコアレスのまま後半へ。
押されっぱなしだった水戸、前半のシュートは1本という有様。
流れを変えるべく、ハーフタイムで交代カードに手を付けたのは当然過ぎるほど当然で、3枚替えを敢行します。
岸田・村田そしてアレフ・ピットブルに代え、外山・松崎・山口が投入されました。
後半は静かな立ち上がりながら、後半3分に山形が流れるような攻撃。
右からのスローイン、ヴィニシウスが擦らしたのち前川→中村駿→渡邊と渡って逆サイドへ展開したのち、渡邊がエリア内へスルーパス。
走り込む北川には繋がらずシュートにはいけなかったものの、裏狙いが統一されているようなシーンでした。
しかしメンバー交代でリフレッシュした水戸も反撃。
前半は山形のプレスの激しさに、ピットブルや村田を目掛けてのロングパスで逃げる事が目立っていましたが、その両者を下げた事でパスを繋がなくてはならなくなった後半。
一見「背水の陣」的な交代策で危うさを感じさせたものの、それによりパスワークが冴え始めます。
7分、左サイドで浮き球を外山が落としたボールを山口が受け、その山口のスルーパスで奥田が抜け出してクロス。
グラウンダーのボールが中央の松崎に入り、対面の山田拓の股を抜くシュートを放った松崎ですが惜しくもゴール左へ外れ。
山形も簡単に主導権を渡さず、13分の右からのCKでニアサイドへのクロスを北川が擦らし、中央で山田拓がヘディングシュート。(GK松井セーブ)
16分には山田拓の左サイド手前からのクロスをヴィニシウスがヘディングで合わせるもオフサイドに。
流れが容易に変わらない中、水戸は18分に決定機を得ます。
木村の左→右へのサイドチェンジを受けた河野が奥へ切り込み、低いクロスが入ると、抑えにいったGK佐藤があろう事かファンブル。
これを山田康が詰めてシュートしたものの、三鬼がブロックして何とか防ぎました。
後半に入り水戸サイドにも得点の匂いが漂い、好ゲームの様相へ。
前節から「全とっかえ」でこの試合に挑んだ水戸。
出場時間が2000分を超えているのはセンターバックのンドカ・ボニフェイスただ1人と、主戦力を入れ替えながらの戦いを繰り広げている今季。
おかげで選手層は厚みを増したものの、それが目に見えて結果に繋がっているとは言い難い成績面となっています。(9勝8分10敗)
良いゲームを展開したかと思えば、連勝は1度だけ(21・22節の2連勝のみ)とそれが続かないのは、メンバーが安定していないからなのか。
この日に限っても、ピットブルや村田(とこの日欠場の中山)が居ない後半と前半での戦いがガラリと変わる点からもそれが窺えます。
これだけ大胆にターンオーバーを繰り広げているチームは、水戸の他には甲府ぐらいなものですが、両チームとも「前年のレギュラー組の大部分が移籍」という共通点があり。
監督以下首脳陣が手綱を巧く操らなければ、上位進出どころかチームの体制を整える事すら難しい状況。
甲府は昇格枠を狙える(といってもギリギリでしょうが)位置をキープしていますが、中~下位をうろついている水戸の、その戦略は果たして正しいのか。
それでも発展途上と割り切って来季以降へと繋ぐ采配、という事も考えられ、答えを出すのはまだ時期尚早なようです。
さて、水戸の決定機で冷や汗を掻いた山形、その直後に2枚替え。(渡邊・ヴィニシウス→加藤・大槻)
以降も双方好機を作っていきますが、フィニッシュに結び付けるという点では山形に針が振れたようです。
飲水タイムが明けた26分自陣右サイドから熊本が中央へ縦パス、受けた大槻が大きく戻すポストプレイ、それを受けた中村駿が左へ展開と大きくボールを動かしての攻撃。
そして左サイドから中村駿が裏へロングパス、走り込んだ山田拓からグラウンダーでクロスが入り、北川がシュートに向かうもあろう事か空振りしてしまいます。
しかしその後相手のクリアを右サイドで回収し、三鬼のクロスに大槻がヘディングシュートを放ちますがゴール上に外れ。
次第に「後はシュートを枠に入れるだけ」という展開へと移っていく山形、31分には小松・前川→岡崎・南へと交代。
そして33分、歓喜の瞬間が訪れます。
左サイドからパスを回し、南から受けた加藤が、相手守備が戻り切れていない(ンドカが南に釣られていた)のを確認してかなり手前からクロス。
これが裏を突くスルーパスのようになり、エリア中央に走り込む大槻の足にピタリと合い、シュートがゴール左へと突き刺さり待望の先制点となりました。
これで逃げ切り体制に入ろうかという山形でしたが、その前に捕まってしまいます。
35分、右サイドでの乱戦からボールが繋がり水戸の攻撃に、中央を松崎がドリブルで進んだのち山口へボールが渡ります。
その山口もドリブルで進み、エリア手前からシュートを放つと、手前でバウンドした難しいボールをGK佐藤が何とか弾きます。
しかしそのボールを深堀(山田康と交代で出場・32分)が詰めて同点ゴール。
リードを保てたのは僅か2分と、山形にとっては痛すぎる失点となりました。
意気消沈気味の山形を尻目に、ボールを握って逆転を狙いに行く水戸。
サイドチェンジを交えて山形守備を揺さぶっていきますが、中々フィニッシュに結び付けられず。
最終盤を迎え、先に山形が好機を迎えます。
43分、左サイドで加藤のスルーパスを南が受けると、カットインしてエリア手前からシュート。
しかしGK松井のセーブに阻まれると、その直後に水戸も反撃。
44分に鈴木(木村と交代で出場・24分)の縦パスを受けた山口が左へ展開し、受けた外山はクロスは上げずに中央へと戻すと、松崎がエリア内へと縦パス。
中に絞っていた外山のフリックを経て、山口がエリア内左からシュートするも、GK佐藤のセーブに阻まれます。
ともにGKに救われた格好となり、勝ち越し点は生まれず。
アディショナルタイムを迎えて流れは水戸に傾き、何度もエリア内にボールを送るも、深堀のヘディングシュート(枠外)に留まります。
そして1-1のまま試合終了を迎え、引き分けの痛み分けに。
持ち味は発揮した両チームでしたが、やはりここから昇格争いに加わっていくには厳しさが残る一戦となりました。