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DAZN観戦 2019年J2リーグ第13節 レノファ山口FCvs大宮アルディージャ

2019-05-14 16:50:26 | サッカー視聴記(2020年以前)

イケイケドンドン。
言葉は悪いですが、山口のイメージとしてはこんな言葉が真っ先に浮かびます。

2013年のJFL昇格から、1年毎にステップアップしていった山口。
2014年にはJFL4位で何とかJリーグ入りを果たすと、2015年にJ3で優勝し、あっという間にJ2での戦いに足を踏み入れました。

J3参入と同時に監督に就任した上野展裕氏の下、攻撃的なサッカーを展開してJ2初年度の2016年は12位。
上々の成績で終えたものの、シーズン終了で山口を待っていたのは主力選手の引き抜きでした。
中山(山形・現磐田)・小池(現柏)・島屋(徳島・現鳥栖)・庄司(岐阜・現京都)・福満(C大阪)・北谷(レンタル終了・現岐阜)・一森(岡山)・ユンシンヨン(韓国リーグに復帰)と一斉に移籍してしまい弱体化。
翌2017年はスタートから低迷し、上野監督は5月で途中解任。次期監督に選んだのは、元福岡選手であったカルロス・マジョール氏でした。

マジョール氏就任とともに、彼の出身国であるアルゼンチンの助っ人レオナルド・ラモスとマルセロ・ビタル、アベル・ルシアッティの3人を獲得し、なりふり構わずといった姿勢でチームの立て直しを図った山口。
それでも目に見えた効果は現れる事無く、低空飛行を続けながらも最終順位20位でギリギリのJ2残留を果たしました。
そしてシーズン後マジョール氏は解任、3人の助っ人もチームを去りました。

翌2018年、新監督には霜田正浩氏が就任。
日本代表の役員を務めた後、ベルギーでコーチの経験もしていた人物です。
彼が追求したのも、一言で言えば攻撃サッカー。
浦和からオナイウ阿道(レンタル・現大分)・東京ヴェルディから高木を獲得し、小野瀬(現G大阪)との3トップで開幕から破竹の勢いを見せ、前半戦を2位で折り返します。
しかし小野瀬が夏の移籍でチームを抜けると形が崩れ勢いは止まります。
それでも終盤に何とか持ち直し、最終順位は8位。

そして今季。
得点源のオナイウが移籍、再び編成からチームの形を作り直さなけらばならなくなりました。
岐阜から田中パウロ淳一、仙台から佐々木(前年はレンタルで讃岐)、広島から工藤を獲得しタレントには事欠かない状況は作れましたが、ここでも佐々木・工藤はレンタルでの獲得。
どうも他クラブからの引き抜きによって、自身の思想も短絡的に陥ってしまっている印象が拭えない山口の補強策。
救いは30歳超えの選手が坪井・佐藤だけと、ベテランだらけになってはいない点でしょうか。

この日の試合内容は意外なものとなりました。
上記のパウロ・佐々木・工藤いずれもスタメンから外す(工藤はベンチ外、故障か?)という策を採った山口。
そして実際にやったサッカーも、いつもの攻撃で前線が圧力をかけるものから一転。
前からのプレス+縦に速いサッカーというカウンタースタイルに近いものとなっていました。
生え抜きの池上・楠本がスタメンに入るなど、ついにニューモデルの山口が顔を見せたのか。

前半6分に岸田が大宮GK・笠原のフィードをブロックするなど、とにかく前線は激しくプレスを掛ける。
いつもとは違うサッカーながら、これも一種の「イケイケドンドン」ぶりには違いないでしょう。
というのも10分過ぎ頃からは大宮のペースで試合は展開。
1トップのファンマのポストプレイを中心に、中盤でのパスワーク・一発のスルーパス、そして大前のセットプレーという飛び道具と多彩な攻めを魅せます。
若さの山口vs老獪な大宮という図式が浮かび上がってくるや、若い山口は飛ばし過ぎて試合終盤に息切れを起こさないか、不安がよぎってきます。
実際速い攻めを繰り返すものの、前半30分までシュートはわずか1本。

そしてその不安をさらに進行させる出来事が32分。
センターバックのドストンが大宮のファンマと交錯、嫌な倒れ方をしてピッチ外に出されます。
続行不能のサインが出されますが、交代はせずピッチに戻るドストン。
しかしその直後、敵陣右サイドで得たフリーキックでした。
キッカーの池上はニアにクロスを上げると、これに誰も触れずワンバウンド。
そしてファーサイドに川井が走り込み、頭でゴールに押し込みました。

不安要素を忘れさせる先制点となり、その後は前半終了まで山口のペースに。
ゴールを挙げて勢いづいた左サイドバックの川井がどんどん攻撃参加し、大宮右サイドを抉ってガンガンクロスが上がります。
しかしそれでもシュートは放てず、逆に大宮は良い形は一度だけながら、ファンマのポストプレイ→大前のミドルシュートとインパクトの効いた攻撃を見せました(前半40分)。

大宮はというとJ2オリジナル10の一員であり、J1経験も豊富でスポンサーも安定しているクラブ。
それだけに前年プレーオフでの敗退が悔やまれる所です(東京ヴェルディに0-1で敗北)。

J1を経験する前の大宮(2004年以前)は、フロントトップに就いた清雲栄純氏の影響もあってか、ポゼッションサッカーの完成という理想を追い求めていたと聞きます。
それは渋谷洋樹氏(現熊本監督)が監督を務めていた近年(2014~2017年)もそれほど変わらず。
しかし前年は石井正忠氏、そして今季は高木琢也氏と、ポゼッションとは程遠いサッカーを展開する監督が指揮を執っている大宮。
とにかくJ1に戻る事を第一とした、理想から現実主義への転換が垣間見えます。
長らくJ1の舞台を戦ってきた事で、そうした理想を手放す事に躊躇が無くなった。
そんな意味でも、この日の大宮のサッカー=老獪というイメージを醸し出していたと思います。
少なくとも相手の山口よりは。

さて後半戦。
前半激しいプレスを受けた大宮は、前半以上にスルーパスを多用して山口ゴールに襲い掛かります。
開始早々大前からパスを受けたファンマが左サイドにスルーパス、河面が抜け出してクロスを上げた(誰にも合わず)のを皮切りに、後半2分にも大山がドリブルで持ち込んで右にスルーパス。
受けた奥井がグラウンダーでクロスを上げ、これも繋がりませんが大前が拾い、その後パスワークから大山が中央からミドルシュート(山口GK・山田がキャッチ)。

開始からチャンスを作ると、6分には山口DF・ドストンが限界を迎えてヘナンと交代します。
11分にはDFラインから石川が直接裏狙い、これが奥井に渡ってエリア内右からシュート。
GK山田に弾かれ、もう一度シュートしますがヘナンがカバーに入りゴールならず。
13分にもファンマのポストプレイから、茨田がダイレクトで右へスルーパスし奥井が抜け出してシュート。これもGK山田がセーブし、詰めた茨田が中央からループシュートを放つも、このシュートも山田の必死のセーブで得点はなりません。

一方の山口も7分に前貴之(水戸・前寛之の兄)がミドルシュート、GK笠原が弾いたボールを岸田が詰めにいきますがオフサイドと、久々のシュートを放ち抵抗。
15分には相手のパス回しにプレスで追い掛け、中盤で三幸がカットに成功するなど前線からの守備はここでも健在でした。

その後大前のフリーキックから大宮が惜しい場面を作った後(山越ヘッド→ポスト直撃・後半19分)、大宮ベンチはダヴィド・バブンスキーと小島が交代出場(畑尾・大山と交代・21分)。システムも3-4-2-1から4-4-2へとシフトします。
それが実ったのは26分。やはり茨田のスルーパスでチャンスを作り、奥井がエリア右側に入ってグラウンダーのクロス。
走り込んだファンマが蹴り込むだけのベストボールとなり、同点に追いつきました。

それと同時に山口は岸田→山下に交代。
35分には高木→パウロに交代と、フレッシュな選手を入れます。
一方大宮も、ポストプレイで文字通りチームの柱となっていたファンマに代えてもう一人の長身助っ人ロヴィン・シモヴィッチを投入。

勝負手を打った両者。先に点を取ったのは大宮で、ここでもスルーパスでした。
後半38分、大前のポストプレイからバブンスキーが左にスルーパス。今度は河面がエリア内左から低いクロス、シモヴィッチの後方を走る小島が合わせてシュートを決めました。

逆転を許した山口は何とか攻勢に出んとしますが、川井がパスの収めをミスしたり、山下が絶好のクロスに合わせられないという落胆を隠せない場面を作ってしまいます。
そして大宮は再び3-4-2-1のフォーメーションに戻したうえ、ウイングバックもDFラインに下がる所謂5バックシステムで逃げ切りを図ります。

しかし最後に若さが出てしまったか。
若年(22歳)の小島は後半44分、左サイドでボールを持つと速攻を選択し、まだ上がりきっていなかったシモヴィッチにクロス気味にボールを送りますがこれが雑で通らず、相手ボールに。
そしてGK山田のフィードから池上がスルーパスで一気に前線にボールを送ると、走りに走ったパウロがエリア内でボールを収めるという山口の絶好機に。
パウロが中央にカットインしようとした所を、河面がスライディングで倒してしまい審判の笛が。山口にPKが与えられました。

これをパウロが冷静にゴール左に決め、土壇場で同点に追いついた山口。
老獪な大宮のサッカーに苦しめられながらも、普段とは一味違ったサッカーで何とか勝ち点を取った事は意味があるでしょう。
逆に大宮は、あの場面小島が遅攻に徹してボールキープしていれば……というのは結果論でしょうが、逃げ切りに失敗してしまった事実が残ってしまいました。

コメント
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