金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】アラブの闇

2019-02-05 07:25:48 | 金融マーケット
 サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件については、このまま幕引きとなりそうです。
 最後までムハンマド皇太子の関与の可能性が取りざたされていましたが、確証は出ておらず、このまま収束に向かうと思います。ここでは、この事件の真相について云々するつもりは一切ありませんが、そもそもサウジアラビアやUAEなど、アラブを代表する国々について我々日本人は殆ど知見がありません。たくさん原油を買っている貿易相手国ですから、もう少し先方の事情を勉強する必要がありそうです。

 サウジアラビアもUAEも、ごく一部の王族たちが富の殆ど全てを独占している国です。富の源泉はもちろん原油です。そして、一般の国民たちは王族からの施しを受けて生活をしています。もし、アラブ諸国にさまざまな産業が根付いて、一般国民たちがそこで働き、賃金を得ていくことができれば、他の資本主義国と同様に、中間層がたくさん育っていくことができるのですが、今はそういう状況ではありません。

 普通に考えてみて、一部の特権層に富を独占され、いくら努力しても豊かになることができない世界では、一般国民に不満が充満し、いつか爆発するはずです。そうならないために、歴史上の支配者たちは、
①国民への施しを充実させ、人気取りを続ける。
②共通の敵を作り、不満のはけ口を外に向かわせる。
ということをしてきましたが、今のアラブ諸国の実態もほぼ同じだと思います。特に②の共通の敵として、まず指名されているのが「シーア派」。特にシーア派の国家であるイランは第1の標的になっています(さらにイランに同情的だとされているカタールも標的になっています)。そして派生的に、ムスリム以外の「異教徒」も共通の敵として認識されていると思います。

 ここからは想像ですが、共通の敵であるシーア派と戦うための資金や武器が、一部の王族から一般市民へ提供されることもあっただろうと私は考えています。「イスラム・ステート」の発生は、国内の不満を外へ追いやるプロセスの中で芽生えた可能性があります。
 退任する前のオバマは、親米国であるはずのサウジアラビアに妙に冷淡でしたが、こうしたウラの事情を捕捉していて、距離を置いていたのかもしれません。トランプの時代になって、またアメリカとサウジの関係は戻ってきていますが、ここへきての記者殺害事件の発生に、トランプ政権も頭を抱えたことでしょう。

 民主主義とは正反対の体制という意味では、アラブ諸国は、中国やロシアよりも遥か遠くで停止している地域と認識すべきだと思います。

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