今週は、ダービーの歴史を振り返って、絶対勝つと言われていたハイセイコーやトウショウボーイの敗戦や、天才武豊騎手が苦しみながら、やっと10回目のダービーで栄光を掴むお話を致しました。一方、専門誌のダービー展望は、悉く、エフフォーリア絶対説ばかり。先週、単勝1倍台のソダシが沈んだばかりなのに。競馬に「絶対」などありません。今日は、少しひねくれて、そうした風潮にケチをつけてみたいと。
さて、馬の能力や状態はともかく、「競馬の神様の気分」に想像力を膨らませて、競馬の神様からの視点、すなわち「この馬だったらダービー馬に相応しい!」とか、「この騎手は、まだダービージョッキーに相応しくない!」「このオーナーにはダービーを絶対勝たせたくない!」という視点から、レースを占ってみたいと。
まず、不動の大本命が予想されるエフフォーリアですが、問題は鞍上の横山武騎手。関東の若手有望株の彼が、この最初のチャンスをモノに出来るのか? あの天才武豊でさえ、苦労に苦労を重ねて10回目のダービーまで勝利は掴めませんでした。競馬の神様が、あの天然で天狗になりやすい彼のキャラを見て、そう易々と「ダービージョッキー」の称号を与えるでしょうか? 全くイメージが湧きません。むしろ、残念ながら3着とか、4着に沈む候補にしか思えません。
それでは、2番人気が予想される牝馬サトノレイナスはどうか。国枝栄調教師と里見オーナーの宿願である日本ダービー制覇。それを実現するために、Cルメールがダービー挑戦を提案したとも伝えられています。先週のオークスに出ていれば、かなりの確度で勝っていたと思われますが、それを捨ててチャレンジしてきたことに、競馬の神様は「よくぞ来た」と褒めていると思います。しかし、問題は里見オーナー。JRAにとっては最大のスポンサーとも言える大オーナーではありますが、北島三郎オーナーのように万人に好かれるタイプではありません。ダービーでの勝負運にも乏しく、サトノダイヤモンドをもってしても落鉄でハナ差2着。今回も惜しい2着あたりが似合う気がいたします。
実は気になっているのが川田騎手。盟友ダノンザキッドの騎乗に拘って、京都新聞杯を勝った有力馬レッドジェネシスを横山典騎手に譲ったところ、ダノンザキッドがまさかの骨折。ダービー騎乗馬がない!と諦めたところに、友道厩舎からヨーホーレイクの騎乗依頼が舞い込みました。ダノンザキッドの無念と、それに誠実に向き合っていた川田騎手の行動に対して、競馬の神様が高い評価を与えたのだと思います。マカヒキの時の再現か、という感じにも思えます。
また、ステラヴェローチェの吉田隼人騎手も気になります。皐月賞3着馬ですから、ダービーでも有力馬の1頭なのですが、この馬の主戦だった横山典騎手がレッドジェネシスを選びましたので、なんとなく地味な存在に追いやられた感があります。騎乗する吉田隼人騎手は、ご存知のとおり、先週は大本命ソダシに騎乗、多くの厳しいマークにもあって、残念な結果になりました。今週は、ソダシと同じ須貝厩舎のステラヴェローチェと組んで、捲土重来、もっと大きな勲章で無念を晴らそうと。これも、競馬の神様は見逃すはずはなく、応援の風を送ってくれるはずです。
そして最後に、バスラットレオンと藤岡佑介騎手。そうです、NHKマイルCで人気になりながら、スタート直後に落馬、競走中止となった、あのコンビです。普通ならば、調教師も馬主も、騎手を降ろして、馬は秋に備えて放牧、という判断。しかし、矢作芳人調教師は違った。なんと、このコンビのままで、日本ダービー参戦を宣言したのです。けして自棄(ヤケ)を起こした訳ではなく、矢作調教師の冷静な判断があって、ちゃんとした逃げ馬不在の今年のダービーならば、スピードの持続力が持ち味のバスラットレオンにチャンス有りと。しかも、失意の藤岡佑介がこれで燃えない訳がありません。このような熱い雪辱戦を、競馬の神様が無視するはずはありません。
こんな風に、「競馬の神様」の視点で見てみると、大本命の横山武騎手エフフォーリアには冷たい視線、一方で川田騎手や吉田隼人騎手、藤岡佑介騎手には温かい眼差しが注がれている、そんな全く異なった風景が見えてきます。
さぁてと、何を本命に指名致しましょうかね?!