名人戦の第4局が7月27日28日に、第5局は8月7日8日に行われて、挑戦者の渡辺明二冠が、両局ともに接戦から徐々にリードを広げて快勝、2連勝を遂げて3勝2敗となり、名人位獲得まであと1勝に迫りました。
ところで渡辺明二冠は、7月16日の棋聖戦第4局で、藤井聡太七段に敗れて棋聖位を失った訳ですが、そこからの名人戦2局の闘い方が変化した気がします。2局ともに、用意周到で準備万端だった作戦が当たったと見ることもできますが、130手とか140手にもなる勝負の全てを、最初から計画通りに指すことは不可能ですから、そうではなくて、最初から最後まで、大局観を大事に、そして1手1手、緊張感を絶やすことなく、失着どころか、最後まで疑問手がありませんでした。
これは藤井聡太七段とのタイトル戦を通じて、また従来のレベルから超越した水準へ飛躍したように感じました。このことは、永瀬二冠についても同じことが言えます。永瀬二冠は、棋聖戦と王位戦の挑戦者決定戦で、いずれも藤井聡太七段に敗れましたが、そのあとの叡王戦七番勝負で、豊島竜王・名人と2回の持ち将棋、1回の千日手という激戦を繰り広げており、昨日の第7局も勝利して、これもまた従来のレベルから超越した闘いを続けています。
天才たちが、ギリギリの世界へ追い込まれると、そこからトンデモナイものが生まれてくるという典型に見えます。今の渡辺明二冠も、永瀬二冠も、そして王位戦で闘っている木村一基王位も、「天才にしか判らない超越した世界」へ入りつつあるのかもしれません。