棋聖戦第3局の藤井聡太七段ばかりが注目されていますが、昨日は、新人王戦のベスト4争いの闘いが、西山朋佳三段と斎藤優希三段の間で行われました。西山三段は、奨励会三段リーグで、女性初の日本将棋連盟プロ棋士を目指している方です。
前期の三段リーグでは、惜しくも14勝4敗の3位で、「四段昇格=プロ棋士」が実現できませんでした。この新人王戦は、三段リーグでも成績の上位者、それからアマチュアの成績上位者も、六段までのプロ棋士に混じって参加できるプロのトーナメント戦です。過去の優勝者には、羽生永世七冠、森内永世名人、渡辺明三冠、永瀬二冠、藤井聡太七段など、蒼々たるメンバーが名を連ねており、若手プロの登竜門と位置づけられている棋戦。西山朋佳三段は、ここでベスト8まで勝ち上がってきたのです。残念ながら、昨日の将棋に敗れ、ベスト4入りは成りませんでしたが、ベスト8は大健闘と言える内容です。
ちなみに、全世界を巡って調べてみても、男女が同じ土俵で勝負を行っているフィールドを私は知りません。おそらく、日本の将棋および囲碁と、馬術競技の世界ぐらいではないでしょうか。よく、ものが判っていない人は、「筋力とか関係のない世界なので、将棋の世界は男女でハンデを設けていないのは当然」と、したり顔で言い放ちます。
しかし、マイノリティにはマイノリティにしか判らない、大きなハンデキャップが存在します。例えば、訓練の場で一緒に切磋琢磨する仲間の存在や、仲間の間での情報のネットワーク、あるいは連日深夜におよぶ勝負日程や移動に関する環境の違いなど、であります。西山三段は、ただ一人のマイノリティとして、「さまざまなハンデキャップ」を背負いながら、この三段リーグで闘っているのです。だいたい、マジョリティに属している人は、自ら意識しないうちに多くのハンデをもらって戦っていることが認識できていません。
人類が数百万年の間、まったく無意識に築いてきた「高くて厚いジェンダーの壁」を、まったくハンデを貰っていない一人の女性が、今、ぶち壊す寸前まで来ています。この歴史的な意義はもっと注目されるべきだと思います。