
地元でもふだんあまり通らない道を、用事があって歩いてゐたら、思ひがけず藤を見つける。
そこに自生のやうな棕櫚の木があることは知ってゐたが、それに藤が絡み付いてゐたとは、今まで全く知らなかった。


藤は単体で見れば美しい花だと感心するが、

かうして他の植物に絡み付いてゐる様を見ると、生き物としての獰猛な本能を認めずにはいられない。
そして、歴史マニアどもがよく引き合ひに出す、
“天皇家に絡み付く藤原氏”
を、思ひ起す。
もっともそれは、なにも天皇家と藤原氏に限らず、浮世のありとあらゆる場面で目撃されるが、これ以上そんなことを話すのは野暮なりけり。
「ここは役所ですよ。甘い汁なら、先に吸うてます!」
──落語「ぜんざい公社」より
部屋の窓から西の空を見上ぐれば、澄んだ三日月が笑ってゐる。

ここは鶯が唄ふ町。
花鳥風月。
住めば都?
住まずとも、
自分がさうと決めた場所が、
都じゃよ。
そこに自生のやうな棕櫚の木があることは知ってゐたが、それに藤が絡み付いてゐたとは、今まで全く知らなかった。


藤は単体で見れば美しい花だと感心するが、

かうして他の植物に絡み付いてゐる様を見ると、生き物としての獰猛な本能を認めずにはいられない。
そして、歴史マニアどもがよく引き合ひに出す、
“天皇家に絡み付く藤原氏”
を、思ひ起す。
もっともそれは、なにも天皇家と藤原氏に限らず、浮世のありとあらゆる場面で目撃されるが、これ以上そんなことを話すのは野暮なりけり。
「ここは役所ですよ。甘い汁なら、先に吸うてます!」
──落語「ぜんざい公社」より
部屋の窓から西の空を見上ぐれば、澄んだ三日月が笑ってゐる。

ここは鶯が唄ふ町。
花鳥風月。
住めば都?
住まずとも、
自分がさうと決めた場所が、
都じゃよ。