Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

秀山祭九月大歌舞伎

2007-09-29 23:50:17 | kabuki
9月ももうすぐ終わりですね。楽しかった秀山祭も終わってしまいました。
来月は吉右衛門さんに会えないのかと思うと、胸が切なくなりますよ。
熊谷次郎直実、秩父庄司重忠、加藤肥後守清正。
どの役も、また吉右衛門さんで観てみたいなぁ。
という訳で、ものすごく今さらですがさくっと9月の観劇日記。

「竜馬がゆく」
染五郎さんの竜馬の人なつこいとぼけた味が素敵でした。
でも、歌六さんの勝海舟がとびきりよかったですね。私の勝海舟の勝手なイメージは冷静沈着で学者肌の官僚(これ、思い切り間違ってました…)だったんですけど、懐の大きな考える幕臣をおおらかに演じていました。
立志篇ってことですが、続編もあるのかしら?

「一谷嫩軍記 熊谷陣屋」
3つの中で、もっとも印象深いのはやっぱり直実。
前半の苦悩する恐ろしいような直実とは打って変わった僧形での幕外の引っ込み。「16年は一昔、夢だ夢だ」と呟く直実に、それまで堪えていた感情がぐわーっと湧き上がってきました。
「熊谷陣屋」は二度拝見しましたが、二度目の方が特に直実の小次郎と相模への愛情を感じました。相模のクドキの場面で、直実は深く悲しんでいるんですね。でも、義経の面前で自分を殺すしかない。なんて残酷なお芝居なんでしょう。残酷であれば残酷なほど、悲しみは深くなる。分かっているのに、ついつい引き込まれてしまいます。
制札を用いた見得の凄みも重厚でよかったけど、私はその後の首実検ときの直実のうちに秘めた悲しみに深く心を揺さ振られました。きっと、女はハードボイルドな男の内側を覗いたときにほろっとしてしまうのよ(ほんとか?)。
福助さんの相模も、二度目の方がよかった。お顔の造作が大きい分、表情が出やすいんでしょうね。最初に拝見したときは、泣いてばかりいる相模に「悲しいのはあんただけじゃないのよ!」と少しげんなりしてしまいましたが、先日の相模は慎み深い後ろ姿で小次郎への絶対的な愛情と絶望を見せてくれました。
芝翫さんの義経と富十郎さんの弥陀六を見られたのもよかったです。
義経という人は、歌舞伎の世界においてはもう絶対なのね。いちばんてっぺんにいる(にもかかわらず)悲劇の人、っていう設定を作り出した日本人は凄いなぁ。
そして、義経を70を過ぎた役者が演じ切ってしまうっていうのも凄いなぁ、とまた感動。

「村松風二人汐汲」
クールビューティーな玉三郎さんとコケティッシュな福助さん。孤高のお姉さんとおきゃんな妹という雰囲気の二人、それぞれの魅力を一度に拝見できるのが楽しくて、計3度見てしまいましたよ。
狩衣を手にして行平を偲ぶ二人の姿が、とてもとても色っぽくていつもドキドキしながら見ていました。
踊りのことはさっぱり分かりませんが、無理矢理シンクロさせようとするのではなく、それぞれの個性を活かした踊り方で、その差から生まれる雰囲気がなんだかとっても素敵でした。
須磨の浜辺には月が出ていましたね。中秋の名月はご覧になりましたか?

「壇浦兜軍記 阿古屋」
こちらも「軍記」なんだなぁ、と今さらですが気付きました。頼朝の時代だから「熊谷陣屋」と時代設定は同じ筈だけど「熊谷陣屋」のような緊張感は、玉三郎さん演じる阿古屋の三曲の優雅な演奏の前に消えていました。
吉右衛門さんの重忠は、すっきりとした捌き役。このお芝居を始めてみる私は、阿古屋の美しさと浄瑠璃の面白さに心を奪われていました。よって、重忠の記憶は薄い…。
玉三郎さんはもちろん美しいんですが、衣装がまた凄い。帯は孔雀、内掛けは蝶と牡丹、頭には笄をぐさぐさと挿しているのに裸足です。そのギャップにすごく濃い色気を感じましたよ。
段四郎さん演じる岩永左衛門は、人形振り。まゆげがピクピク動いてましたね。この左衛門の可笑しさを引き立てていたのは、義太夫さんでしょうねぇ。泉太夫さんと段四郎さんのイキがぴったりでした。
この幕の浄瑠璃は、鳴門太夫さん、愛太夫さん、蔵太夫さん。
書き忘れましたが、「熊谷陣屋」の浄瑠璃は清太夫さんと綾太夫さん。こちらもとても素敵でした。

「身替座禅」
團十郎さんの右京と左團次さんの玉の井、思い描いたとおりでにこにこと拝見しました。
意外にも(ごめんなさい)、家橘さんと右之助さんの千枝・小枝が可愛くってずっと追いかけてしまいました。
上演記録を拝見して見たかったと思ったのは、富十郎さんの右京と吉右衛門さんの玉の井。平成15年に上演したようですが、見逃してました。

「二条城の清正」
お芝居としては、あまり好きなお話ではありませんでした。
しかし、吉右衛門さんの清正の気骨のある老武士が、よかったですね。なんていうか、どんな場にあっても己の信念を貫く傍若無人なほどの忠義心が面白かった。
しかし、どうも味方の援護が薄くて、清正一人で奮闘しており、その結果どうも白々しく感じてしまいました。豊臣軍がんばってよ、ってね。
ちょっとツボだったのは、前髪立ちの若衆たち。種太郎さんは若々しく可愛いのは言うまでもないけど、吉之助さんの前髪姿もなかなかお似合いでした。
福助さんの秀頼はブリブリに(笑)若くすっきりときれいでしたが、えーっと、烏帽子は取らない方がよかったです…。
歌昇さんの井伊直孝の存在がぴりりと効いていましたね。


今年の秀山祭、たいへん楽しく拝見させていただきました。来年もまたどんな素敵なお芝居を見させていただけるのか、楽しみです。
吉右衛門さん、ありがとうございました。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そうだわ、歌舞伎座 (Sa)
2007-09-29 23:57:53
なんだか9月は最後の週が盛り沢山で~とどめがタラフ、お疲れ様~笑)、歌舞伎座も行ったのですが、遠い昔になってしまうところでした。
アブナイ アブナイ もったいない。

昼夜で、一番印象深かったのが、なんとワタシは身替座禅でした。いやに平均年齢の高い身替座禅だなあ、というのでね。染ちゃんは今月頑張ってましたね。
吉右衛門さんの玉の井覚えてますよ~。ごつくってかわいかったです。怖かったです。

そうそう、秀頼@福助さん、あれはどうしても○村けんですよね~(あ。云ってもうた)なんで烏帽子とるんだ~って思いました

二人汐汲もまん前で見ました。お二人の普段のお肌のお手入れ状況が見えるぞ、なあんて思ってました。

今日など涼しくなりましたね。
秋ですね。

返信する
「覚え書き」拝見してきました~! (アクア)
2007-10-01 00:11:37
こんばんは、Saさん。すっかり秋ですね。

9月の最終週、ずいぶんお忙しかったみたいですね!お疲れさまでした。
昨日・今日とタラフのDVDで余韻に浸っていました。

染五郎さんの太郎冠者、すごく情けなくてキュートでしたね。あの二人に挟まれて、とても小さくなってましたもんね。いつの世も、サラリーマンはたいへんだぁ。

吉右衛門さんの玉の井、見たいです~。
返信する

コメントを投稿