Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

六月大歌舞伎 昼の部

2006-06-26 23:15:16 | kabuki
千穐楽の歌舞伎座に行ってきました。
今月の歌舞伎座は魅力的な演目が少なく、まぁなんとなくな感じだったんですが、ちょっとびっくりするくらい楽しみました。

*荒川の佐吉*
真山青果か、新歌舞伎かぁと全く期待しないで拝見(笑)しましたが、涙と鼻水で顔がべたべたになるくらい泣いてしまいました。

とにかく仁左衛門さんの佐吉がいい。15代目羽左衛門にあてて書いたお芝居だそうですが、長身で華のある仁左衛門さんにピッタリの役柄。
序幕の佐吉はまだまだヘタレなやくざだけど、群集の中から現れる仁左衛門さんの若さったら!友人の大工辰五郎役の染五郎さんとの違和感がまるで無い。着幅の短い縞の着物が似合います。
この場では、佐吉よりも段四郎さんの浪人郷右衛門の落ち着いた不気味さが鈍く光っていましたね。
次に佐吉が現れるのは、親分鍾馗の仁兵衛(芦燕さん)が落ちぶれて、孫で盲目の卯之吉の世話を頼まれるところだけど、甲斐甲斐しく卯之吉をあやし面倒を見る仁左衛門さんに、どことなくご本人と重なるイメージを抱き「いいおじいちゃんなんだろうなぁ」なんて感じてしまう。ただただ子供が大好きで、親分の孫だから、とか目が見えなくて可愛そうだから、とかじゃなくて生まれながらの子供好きなんでしょうねぇ。だから、滞在先の甲府でも麻疹をうつされてしまうんだわ。
この「子供好き」っていう設定はズルイよね。子供と動物が出てきたら、それだけで涙腺はゆるんでしまうよ。
それから6年(?)が経ち、卯之吉は大きくなり佐吉は辰五郎と一緒に貧しいながらも楽しげに暮らしている。ここでの佐吉は、貫禄が付いてきたけれど、まだ若くて下っ端なやくざ。
そこに、卯之吉の実父母から卯之吉を返して欲しいと使いの白熊の忠助(團蔵さん)がやってくるところから、ぐんっと急展開。
忠助が無理矢理に卯之吉を奪おうとするのを必死で止める内に、忠助を殺めてしまう。この初めての殺人が佐吉を本物の侠客にしてしまう。覚悟を着けてしまう。
で、親分仁兵衛の仇・郷右衛門を討つことになるんだけど、大親分の相模屋政五郎(菊五郎さん)、郷右衛門(段四郎さん)、佐吉(仁左衛門さん)が並ぶ舞台は3人の役者さんの個性がぶつかり合う豪華で迫力のあるものでした。佐吉は、もう2人の侠客と対等に渡り合える才覚を身に着けていて、今までの若い下っ端やくざじゃなくなっている。この佐吉の変化が面白くて、仁左衛門さんのきれいなだけじゃないハラのあるお芝居を観たように思いました。
郷右衛門を討ち、すっかり立派なやくざになった佐吉だけど、やっぱり卯之吉は可愛くて、だから盲目なのが可哀想で心配なのね。そこにまた、実母お新(時蔵さん)が卯之吉を返して欲しいとやってくる。
ここからラストまでずっと泣きっぱなしでした、私。。
己の勝手で子供を捨て、また欲しいというお新。でも、彼女にもそれなりの理由があるし、佐吉にしてみれば卯之吉の幸せがいちばんだし。
お新と政五郎を前にした佐吉の長台詞は、仁左衛門さん涙を流しながらの熱演でしたね。
結局、卯之吉をお新に返し、二代目仁兵衛を継いで欲しいという政五郎の申し出を断って江戸を離れる佐吉。
翌朝、桜の花の中を旅立つ佐吉はもう卯之吉と決別していて、すごく悲しいのに清々しくて美しい旅姿。一方で、染五郎さんの辰五郎は初めから変わらない町人の姿で、佐吉の変化をより鮮やかに見せてくれます。
仁左衛門さんの佐吉はそれはもう素晴らしかったけど、菊五郎さん、染五郎さん、段四郎さん、時蔵さんと脇を固める役者さんたちのイキもぴったりで、会場内の落涙率はかなり高い模様でした。
お話自体はそんなに好きじゃないけど、とにかく役者さんの芸の力に引き込まれてしまったのかしら、と思ってます。仁左衛門さん以外の「荒川の佐吉」ってちょっと想像できないわ…。

他の演目はまた明日~☆


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3 コメント

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目に浮かびますー! (玉さん)
2006-06-27 13:44:20
「荒川の佐吉」はもう仁左衛門さんの十八番になりましたねー。私は残念ながら友人から借りた歌舞伎チャンネルのビデオでしか見たことはないんですが、それでも涙腺は緩みっぱなしでしたから生の舞台ならなおさらに洪水状態でしょうね。染五郎さんのご活躍を聞くと、靭帯損傷で博多座終盤を休演された勘太郎さんの一日も早い回復を祈らずにはいられません。
時間差 (Sa)
2006-06-27 16:50:11
おお、アクアさん、ワタシも今月の千穐楽行きました。といっても夜の部でした。

ニザさんの荒川の佐吉、見たかったです。かな~り迷ったのですが(今月は昼か夜どちらかと決めていたので)、高麗屋の丑松の方を選んでしまいましたよ



長谷川伸もまたいいもんだなあ、なんて思いました。

ニザさんの花子(身替座禅ね)の鼻の穴~あれってやっぱり黒く塗っているのだろうか。。。。というのが今最大の疑問点であります.



いつかニザ@佐吉を見たいなあとここにお邪魔して思いました。
こんばんは。 (アクア)
2006-06-27 22:37:35
*玉さん*

ほんとほんと、洪水でした、私。機会がありましたらぜひ生の仁左衛門さんの佐吉、ご覧ください。その際にはハンカチ2枚は必須です!

勘太郎さん、心配ですね。治療に専念されるようなので、よく治してまた元気な姿で戻ってきた欲しいです



*Saさん*

昼か夜か迷ったんですが、私は佐吉を選びました。でも、実は「暗闇の丑松」を幕見したんですよ♪

「身替座禅」は見逃したんですが、ニザ様のお鼻、私も見たかったです~

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