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映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

二月大歌舞伎 昼の部

2008-02-28 21:39:35 | kabuki
初代松本白鸚二十七回忌追善 歌舞伎座百二十年 二月大歌舞伎
改めて書いてみると、今月の興行タイトルは随分と長いですね。今年はずっと「歌舞伎座百二十年」と付くんでしょうか?
さて、千秋楽の歌舞伎座へ行ってまいりました。お仕事は、とか聞かないでくださいね(笑)。
すでに興行は終わってしまったけれど、とっても楽しかったので自分用にメモ書き。

三.積恋雪関扉
もう何年前になるのか忘れてしまいましたが、3月の終わりに雪が降ったことがありました。3月のいちばんお終いの日でしたから、桜は咲き始まっていて、そして雪が降りました。
なんとも不思議な光景だなぁ、とぼんやり眺めていましたが、そのときの景色が舞台に広がります。
幕が上がると、雪山に桜の木。
不思議な光景と同じく、お話もまた不思議。もともとは『重重人重小町桜』という狂言の一幕だったようですが、現在は「関の扉」のみが残っているということで、いったいどんなお話だったのか、さっぱりさっぱり分かりません。
それでも、筋があるようなないような、捉えどころの無いこのお芝居が、なぜかとっても楽しくて大好きです。

吉右衛門さんという役者さんは、所作事には向かないんじゃないかと踊りのことなどまるで分からないくせに思っています。今月だったら、「熊谷陣屋」の直実のような重い役を見たいなぁ、と。でも、関守関兵衛実は大伴黒主という今となっては正体のよく分からない人物は、やっぱり吉右衛門さんで見たいのです。
吉右衛門さんの持つ関兵衛の飄々とした空気や生世話っぽいいやらしさが、なんとも味わい深いのです。その彼の踊るちょっとぎこちない様なひなたい様な関兵衛さんが、不思議な幸福感を与えてくれるのです。

福助さんの小野小町姫も、芯の強さを感じさせる素敵なお姫様でした。単なるキレイキレイなお姫様じゃなくて、心の奥に大事な何かを抱えて雪の降る中を歩いてきたお姫様。

小町姫の恋人・宗貞は染五郎さん。ちょっと印象が薄かったけど、どこかはかない雰囲気の貴公子。

この3人の手踊りが面白かったですねー。それぞれの持ち味が活かされていて、楽しくて美しい。
愛し合う宗貞と小町姫。そこに明るい関兵衛さんが加わって、絶妙なバランスを保ってました。

後半、ますますお話は分からなくなり、桜の木から傾城墨染(福助さん二役)が現れます。
墨染と関兵衛の廓話の踊りが、またまた楽しい。墨染の色っぽさと関兵衛のあっけらかんとしたいやらしさ。
訳も分からず、楽しいんです。

でもいちばん楽しいのは、関兵衛と墨染がぶっかえって大伴黒主と小町桜の精になってから。
黒主は、大きな大きな悪の色を纏い、舞台を支配します。
一方の桜の精も、人の気配が減り妖(あやかし)の匂いをぷんぷんさせます。
天下を狙う黒主に、立ち向かう桜の精。桜の精は宗貞の弟・安貞の恋人で、安貞の敵討ちのため黒主と戦うんですね。
広い舞台をあちらこちらと舞うように動き回る二人の戦いは、やっぱり美しくて不思議で非常に楽しい!広いはずの舞台が、狭く感じるような緊張感のある所作ダテ。
恐ろしい恐ろしい黒主と、その恐ろしい黒主に真っ向から立ち向かう美しくて儚い桜の精。
いつまでもいつまでも続いて欲しいなぁ、幕は引かれるけれど二人の戦いは永遠に続くんだろうなぁ、と想像させられる興奮冷めやらない舞台でした。

そうそう、書き忘れました。常磐津がまたとても良かったんです。
関兵衛の踊りと常磐津が非常によく合っていて、楽しさを倍増させてくれました。一巴太夫さん、ありがとうございました。


「関の扉」を書いたら、だらだらと無駄に長くなってしまいました。他の演目も、そのうち書きましょう。


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