問わず語りの...

流れに任せて

METALLICA[One]

2022-04-25 08:22:22 | メタルを聴け!

 

 

『ジョニーは戦場へ行った』は、アメリカの作家であるダルトン・トランボが、自身でメガホンを取り1971年に公開された映画です。

第1次世界大戦に従軍したジョニー青年は、戦争により四肢を失い、視力聴力も無くし、口をきくこともできない。ただ生きているだけの「モノ」と化してしまう。

しかし意識だけははっきりしており、ジョニーは自分の意思を伝えようと、わずかに動かせる頭部を使ってモールス信号を打つのですが、医師も看護婦もただの反射だとして、鎮静剤を打つばかり。

そんな中、一人の若い看護婦がジョニーの意思を受け止めます。ジョニーは「殺してくれ」と伝え、哀れに思った看護婦は生命維持装置を外そうとするのですが......。

 

 

ダルトン・トランボ自身は、アメリカ共産党員だったこともあり、その反戦的で反体制的な内容はしばしば発禁の対象となった。発禁と再出版を何度か繰り返した後、自身で念願の映画化を叶えたということらしい。

 

メタリカの曲『ワン』は、この映画をモチーフにして書かれた曲です。

 

ちなみにOneとは「モノ」という意味です。

 

まあだからと言って、メタリカが共産主義者ということではないです。メタリカのメンバーはこの曲について「特に反戦という意味合いはない。ただこのような状態に陥った人間の恐怖と絶望を描いた」と言う意味のことを語っていましたね。

 

日本では江戸川乱歩の小説に『芋虫』というのがありますね。こちらも戦争で四肢を失い、五感もほとんど感じなくなってしまった元兵士と、その妻の物語で、こちらも「反戦とかいう意味は特にない。ただ人間の身勝手さ、醜さというものを描いた」という意味のことを、乱歩自身が語っているようです。

 

なんかね、すぐに「右」とか「左」とか分けたがる人いるでしょ。なんなんだろうね、あれ。人間って、そんな簡単に分けられるものなのか?

 

右とか左とかではない。アーティストというのは、今起きている現状に触発されて、それを自分なりに表現する。そういう人たちなのですよ。

 

確かに共産党支持者のアーティスト、表現者もいますけどね。誰とは言いませんけど。

 

でも少なくともメタリカは違う。

 

いや、別に共産主義者でもいいんですよ。いいんですけど、そうじゃないのにそう思われちゃうのは嫌でしょ?

 

誰だって戦争は嫌です。表現者はその思いを、その表現者なりのかたちで表す。

 

乱歩もメタリカも、アーティスト、表現者だというだけのこと。

 

 

「表現者」メタリカの曲「ワン」を聴け。そして

 

戦慄せよ。

 

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2000年以降公開の邦画、個人的BEST10 その⑤

2022-04-24 11:54:52 | 映画

 

 

 

第1位

 

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』2019年公開

監督:片淵須直

 

2016年公開の『この世界の片隅に』に、新たなシーンを30分加えた、まあ、「完全版」とでもいえばいいのでしょうかね。

 

広島遊郭のリンという女性とのエピソードを大幅に加えたことで、主人公すずさんの「人間味」がより深く掘り下げられて描かれています。

 

いやまあ、色々語りたいことがあるようで、でもあまり語りたくないような、とにかく観てくれ!観なきゃダメ!観なきゃ日本人じゃない!みたいな、それだけ言えばいいかなとも思う。

 

あの時代に、すずさんという女性が生きていたんだなと、それを実感出来れば、それでいいような気がするんです。もうなんだかんだ言う必要もない。とにかく「体験」してくれと、それだけ言えば良いかなと。

 

手抜き?いやいや、これがこの映画の本質ですよ。あの時代に生きた一人の女性の半生を「体験」する

 

これはもう、言葉に出来ないです。感動といえば感動なんだけど、感動という言葉すら陳腐に思えてしまう。

 

一つ言えるとすれば、主人公すずさんの声に、女優・のんを抜擢したこと、これが最大の勝因かなと。もうね、のんちゃんをこの役に選んだ時点で、90%勝ちです(笑)。のんちゃんホントに

 

素晴らしかった。

 

本当に凄い作品って、あんまり語れないんですよね。語るよりも観て感じろ!

 

あの時代を生きた、すずさんという女性は実在したんですよ、きっと。

 

日本人はそれを

 

「体験」すべきです。

 

「うちは何一つリンさんにかなわん気がする」このモノローグで、声がちょっとだけ震えるんですよ。

ちょっとだけ。ここが凄いな、と思います。

 

女優・のんを

 

舐めるなよって感じ(笑)。

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2000年以降公開の邦画、個人的BEST10 その④

2022-04-23 06:18:58 | 映画

第2位

 

『シン・ゴジラ』2016年公開

脚本、総監督:庵野秀明

庵野さんはズルいです(笑)。ゴジラだけじゃなく、ウルトラマン、仮面ライダーまで手掛けちゃうんだから、まったく

ズルい(笑)(笑)(笑)。

 

でもね、庵野さんなら許せちゃうところがあるんですよね。この方は特撮モノに対するリスペクトの想いがもの凄い方で、そのリスペクトの示し方というか方向性というか、そこがマニアの心を擽る、響く。

まあ、このマニアというのは、主に私なんですけどね(笑)。この方の示すリスペクトの方向性は、私の趣味の方向性にかなり合致する部分が多いんです。

何度も言ってますけど、音響効果などはまさにそうだし、音楽もそう。昭和の怪獣映画の名シーンや名セリフの取り入れ方の巧みさ。

ゴジラの見せ方もいいですね。CGで描いているんだけど、どこか着ぐるみ的な雰囲気を出している。一見着ぐるみのように見えて、でも着ぐるみではできない動きを見せる。この新旧のバランス感覚が素晴らしい!

 

今回の『シン・ウルトラマン』の予告編を観て思うのは、怪獣の絶妙な「人が入っている感」ね。CGなんですよ、CGなんですけど、どこか着ぐるみ感がある。ここが凄く良い。

ウルトラマンにもこの、「人が入っている感」が絶妙にあって、でもCGだという、この感じ。

 

良い!

 

こうした昭和の特撮モノのテイストを大事にしながら、ちゃんと現代性、時代性を意識して取り入れている、このバランス感覚。

ここが庵野さんのお見事なところ。

 

このバランス感覚あってこその、大ヒットだったのですよね。

 

昭和の特撮テイストと現代性の融合。ここが上手くいっている限り、私は庵野さんを支持し続けますよ。

 

シン・ウルトラマンは監督が庵野さんじゃなくて樋口さんというところに、若干の不安をかんじているんですけど、きっと庵野さんが上手く調整しているであろうことを期待しつつ、

来年の『シン・仮面ライダー』で見せてくれるであろう、昭和の東映特撮モノテイストと現代性の融合に期待しつつ、

さらにその先、『シン・ウルトラセブン』はあるのか?と期待しつつ、

 

でも、

 

1位ではないんですよねー。

 

さあ、この大好きな『シン・ゴジラ』を抑えて、栄光の1位に輝く作品は一体?

 

次回を待て!

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2000年以降公開の映画、個人的BEST10 その③

2022-04-22 05:52:32 | 映画

第4位

 

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』

監督:大友啓史

 

全部で5作品ある『るろ剣』の最後の作品ですが、この作品だけが良かったという意味ではなく、最終話にしてプロローグ的な役割を持っているという点で、シリーズ全作品を代表させるなら、これだなという意味で挙げさせていただきました。

髪型やら衣装やら、殺陣にしても決して正統派の時代劇ではないのですが、世界観がしっかりと作られているせいか、不思議なリアリティがあるんですよね。このての漫画原作の実写化というと、大概はただのコスプレにしかなり得ず、到底見られたものではないものになってしまうものですが、このシリーズに限ってはそうはなりませんでした。

殺陣というよりは「ソード・アクション」というべきものですが、その振り切れ様が尋常ではない。佐藤健の「あの」動きは、「ありえない」ことを「ありえる」かのように見せてしまう、優れた映画ならではの説得力があった。こんな作品、そうそう出来るものではないです。

今後もこれを超えるほどの作品が出てくるのかどうか、甚だ疑問です。それほどにスゴイシリーズだったなと

思います。

 

 

 

 

 

 

第3位

 

『永遠の0』2013年公開

監督:山崎貴

 

山崎貴監督には「あざとい」ところがあって、泣かせる演出がちょっとわざとらしかったりする。

『ALWAYS三丁目の夕日』にもそういうところがあって、悪くはないのだけれど、微妙にハマり切れない、引いてしまうところがある。

この作品にもそういうところがないわけではないのだけれど、でも悪くはなかった、ていうか結構ハマってしまった。

やっぱりさ、命をかけて愛するものを守った人の話というのは、理屈を超えて「来る」ものがありますよね。

あれほど生きて帰ることに拘っていた主人公が、どうして特攻を選んだのか。色々な解釈があると思いますが、愛する家族、愛する仲間たちを守るには、国を残すことが最も重要なことだと考えたからではないでしょうか。

国あってこその国民、日本という国あってこその日本人。

愛する人たちを守ることと、国を守ることはイコールなんです。

だから。

 

もうね、何度でも言いますけど、こういう方たちの命の犠牲の上に、我々の現在の生がある。何度でも同じことをいいますけど、

それを忘れてはいけません。

あの戦争に散っていたすべての先人たちに、感謝と敬意を。

 

 

 

 

 

 

ではまた、次回。

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2000年以降公開の邦画、個人的BEST10 その②

2022-04-21 06:09:18 | 映画

続きでーす。

 

 

 

 

 

 

第7位

 

『山桜』2008年公開

監督:篠原哲雄

全編ほぼ静かな映画。登場人物たちがあまり喋らない。喋らないけど、でも、

なにを思っているのか、ちゃんと観客に伝わるような作りになっているところが、良いです。

主人公を演じる田中麗奈のあの「目」ね。あの目だけで思いを表現していく素晴らしさ。少年隊ヒガシ演じる手塚某への仄かな思い。でもその思いを口に出すことは決してない。

一方のヒガシは、ある行動を起こすことを決断するのですが、その決意を口に出すこともない。でも観客には、その決断に至る経緯がすべてわかる、理解できるように作られているんですね。

「以心伝心」日本の美学を映画というかたちで見事に表した傑作!最近の時代劇は「喋り過ぎ」な面があるように思います。ここで喋っちゃうかー、みたいな。あれってとても残念なんですよね。喋らせないまま行けよ!と思ってしまう。

まあ、私の個人的な趣味の感覚ですけどね。

そんな私の趣味に、見事に合致した作品でした。名作です。

 

 

 

 

 

第6位

 

『幕が上がる』2015年公開

監督:本広克行

 

女子高生が主人公の青春映画といえば、大概イケメン男子が出てきて恋愛沙汰がどうのこうのとなっていくのが定番なのでしょうね、よく知らんけど。

でもこの作品には、恋愛要素は皆無。ももクロ演じる高校演劇に打ち込む女子高生たちの青春を、恋愛要素全くなしに描き切った、ど真ん中の青春映画であり、アイドル映画に仕上がっています。お見事です。

恋愛なんかなくったって、女子高生の青春は描けるんですよ。演劇に賭ける青春、熱いです。とても美しいです。

映画全体としては、いわゆる「モノノフ」でなければわからないような内輪ネタがあったりして、モノノフ以外の観客にはわかりづらい部分もあったでしょう。でもももクロを単にアイドルではなく「役者」として使っているところに、私は大いなる好感を覚えました。

アイドルではないといいましたが、エンディング・タイトルではアイドルに戻って『走れ!』を歌い踊り、出演者たちもそれに合わせておどけて見せる。これは、あの大林宜彦監督、原田知世主演によるアイドル映画の金字塔『時をかける少女』へのオマージュなんです。それがわかっているのといないのとでは、感想が違ってくると思いますね。

結果として青春映画としてだけではなく、アイドル映画としても良く出来た映画だと思います。モノノフとしてだけではなく、一映画ファンとして、おススメです。

 

 

 

 

 

第5位

 

『たそがれ清兵衛』2002年公開

監督:山田洋次

なんかね、この映画を「サラリーマンの悲哀・悲劇」として捉えた方が多かったように聞いていますが、私はそれは違うと思う。

真田広之演じる主人公は、名もなく貧しいささやかな人生を生き切った。藩のため家族のため、愛する者のため戦って散った、立派な人。人生を全うしたという意味で、これはハッピー・エンドな映画なのですよ。

真田広之と田中泯との壮絶な殺陣シーンなど、見どころは色々ありますし、それもまた素晴らしい。でもそれとともに、世界の片隅で誰にもその名を知られることなく、自らの生を全うした一人の男のささやかな人生に、思いを寄せていただければ幸いですね。

どんなに目立たない人。知らない人でも、その人なりの物語がある。みんなそれぞれの人生を演じる

主人公です。

 

 

 

今回はここまで。

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