横浜の司法書士安西雅史のブログ

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契約者兼被保険者と指定受取人との死亡の先後関係について

2011-09-14 | 実務ノート

 以前にもこのブログで取り上げたことがありますが、「保険」に関しては、旧商法中に定められていた「保険」に関する規定が見直され、2010年4月1日より新たに「保険法」が施行されました。

 昨日NHKの「ラストマネー」というドラマで、生命保険の契約者兼被保険者である夫と保険金受取人と指定された妻とが車の運転中に事故に遭い亡くなった場合、夫の死亡に伴う生命保険金は誰に支払われるのか、という話がありました(二人の間の子もこの事故で亡くなっており、夫・妻側の両親はいずれも健在という設定です。)。

(前回書いた内容がちょっと中途半端だったので、自分用にまとめてみます。)

さて、上記の結論は双方の死亡時刻の先後で異なってきますが、契約者兼被保険者を夫、保険金受取人を妻として、

1)夫(先)→妻(後)の順番なら、通常とおり保険金は妻へ渡り、妻側の両親がこれを遺産として取得することになると考えられます。

2)妻(先)→夫(後)の順番なら、保険法第46条の規定が適用されることになり、保険金は妻の相続人である夫(ただし、夫も後に死亡しているので、その権利承継者としての相続人である夫側の両親)と妻側の両親とがそれぞれ取得することになります。そして、その取得割合ですが、下記最高裁判決では、法定相続分ではなく、民法427条の規定の適用により平等の割合になるものと解すべきであると判示しています(平成5年09月07日 最高裁判所第三小法廷)

3)では、夫と妻とが同時に死亡した場合、又は双方の死亡の時間的先後関係が不明の場合は、どのように考えればいいのでしょうか。この場合も、上記と同様に保険法第46条の規定が適用されますが、妻の死亡の時点で夫は生存していなかっため、夫側の両親が保険金を取得する余地はなく、妻側の両親のみが保険金を取得することになります(平成21年06月02日 最高裁判所第三小法廷)。


※各生命保険会社の約款に上記と異なる定めがあれば、それに従うことになります。
※この裁判例は改正前商法676条2項に関するものですが、保険法46条でも同様の結論になることが予想されます(第一東京弁護士会東日本大震災に関する情報「震災関係Q&A」より)。
参照サイト http://www.ichiben.or.jp/shinsai/qa/qa7.html#qa5


以上


参考

民法
第五節 同時死亡の推定
第32条の2 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

保険法 
(保険金受取人の死亡)
第46条  保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。


平成5年09月07日 最高裁判所第三小法廷
一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に生存する者をいう。
二 生命保険の指定受取人の法定相続人と順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法四二七条の規定の適用により、平等の割合になる。


平成21年06月02日 最高裁判所第三小法廷
生命保険の指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において,その者又はその相続人は,商法676条2項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」には当たらない。


改正前商法 
(保険金受取人の死亡と再指定)
第676条 
保険金額を受け取るべき者が、被保険者以外の第三者である場合において、その者が死亡したときは保険契約者は、更に保険金額を受け取るべき者を指定することができる。
2 保険契約者が、前項に定める権利を行わないで死亡したときは、保険金額を受け取るべき者の相続人をもって保険金額を受け取ることができる者とする。








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