横浜の司法書士安西雅史のブログ

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行政区画変更に伴う登記名義人の住所変更登記(その2

2011-10-25 | 実務ノート

昨日書いた内容の記事に以下のコメントを頂きました。


>これにより、変更されたと思います。

「行政区画の変更に伴う登記名義人等の住所の変更に係る登記事務の取扱いについて(通知)」:平成22 年11 月1 日付法務省民二第2759 号 

要旨
1.登記名義人の住所の変更の登記について

(1)登記名義人が登記簿上の住所から他の住所に移転したのち、移転後の住所について区制施行などの地番変更を伴わない行政区画の変更が行われた場合に、一つの申請で登記名義人住所変更登記を申請する場合の原因は「年月日住所移転、年月日区制施行」

(2)上記の場合に、行政区画の変更に係る市区町村長等の証明書を添付したときは、登録免許税5条5号により登録免許税は非課税




おっしゃるとおり、上記の平成22年通知により昨日取り上げた「昭和48年回答」は、効力を失ったと考えてよさそうです。
ありがとうございます。

ところで、ついでにもう少しまとめてみますが、昭和42年当時の先例に<住所変更と住居表示実施による変更登記とを1件の申請書でする場合、登録免許税は課税されない。>とする回答(昭和42年回答)があります。これは、登記名義人が住所移転を繰り返しつつ最終の住所の変更が住居表示実施なら、いわば中間省略の登記として、住居表示実施後の住所のみが登記事項となり、当該変更登記にかかる登録免許税は、登録免許税法第5条4項により非課税となるという趣旨です。

他方で、昭和48年回答の趣旨は<行政区画の変更に関しては、旧不動産登記法第59条で規定されていた行政区画等の変更に関する「みなし規定」が存在するため、・・(中略)・・登録免許税を課税する。>といったもので、昭和42年回答の例外を示したものと考えられています。

そして、上記の平成22年通知により、昭和48年回答は効力を失ったと考えれば、原則的な取扱いである昭和42年回答より登録免許税の課税の扱いを考えることになりそうです。


以上


参照文献 登記研究755号


参考

住所変更と住居表示の実施による変更登記とを1件の申請書でする場合の登録免許税登記名義人が住所の変更の登記をしない間に住居表示の実施による住所の変更を生じ、その登記を1件の申請書でする場合の登録免許税は、課税されない。(昭42.12.14、民事甲第3447号民事局長回答)





行政区画変更に伴う登記名義人の住所変更登記

2011-10-24 | 実務ノート

 先週、ある登記事件で住所変更登記を申請した司法書士から受領証がきていたので、内容を確認したところ、

原因「錯誤、昭和年月日行政区画変更」

登録免許税「金0円」
とありました。

 登記名義人の住所移転とその後の行政区画の変更にかかる変更登記については過去の登記研究で何回か取り上げられており、特段目新しい論点ではありませんが、実際に申請したことがないので、備忘録としてまとめてみます。

 まず、登記名義人が住所を移転したにもかかわらず、その変更登記を申請しない間に、地番変更を伴わない行政区画の変更(※1)が生じた場合、当該登記名義人の住所変更登記を一件で申請する場合は、登録免許税を徴収するものとされています(昭和48年11月1日民三第8187号民事局長回答)。これは、登記名義人の住所のうち行政区画にかかる部分は、登記上、当然に変更されたものとみなされることから、その変更登記にあっては、住所移転にかかる事項のみが登記事項となり(原因は「年月日住所移転」のみ。)、登録免許税を徴収するものとされています。

 ところが、平成17年に施行された新不動産登記規則92条の行政区画の変更に関する<みなし規定>は、条文の構成上、<権利に関する登記>について適用されない規定ぶりとなっているため、権利に関する登記については、当然に当該行政区画が変更されたものとみなされないことになります。その結果、登記名義人の住所移転後に行政区画の変更があり、その登記名義人の住所変更登記を一件で申請する場合は、原因に「年月日住所移転、年月日行政区画変更」と並記して、添付情報として市町村作成の行政区画の変更を証する情報が提供されていれば、当該変更登記の登録免許税は、登録免許税法第五条第五号の適用があり、0円(非課税)となると解されています(※2)。




(※1)地番変更を伴わない行政区画の変更とは、区の変更や市町村合併、区制の施行等によって、例えば「横浜市戸塚区和泉町」が「横浜市泉区和泉町」へ、「相模原市○○町」が「相模原市A区○○町」へと、区のみが変更されるような場合を指します。
(※2)これによって、上記昭和48年の回答が変更されたか否かについては、明らかにされていません(参照文献登記研究748号.755号)。



条文

不動産登記規則
(行政区画の変更等)
第九十二条  行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。
2  登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。