たまに仕事の合間に本屋へ立ち寄り、今どんな本が売れているのかをチェックするのがちょっとした私の楽しみですが、最近この本が各種書店で平積みされているようです。
ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)ヴィカス スワラップランダムハウス講談社 |
最初、この本のタイトルを見てもピンときませんでしたが、これは本年度アカデミー賞最多8部門を受賞した映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作本のようで、作品賞にも選ばれたとのことでしたので、早速買って読んでみました。
ストーリーは、インドが舞台で、獲得賞金が最大で10億ルピーという前代未聞のクイズ番組に出場した主人公の少年「ラム・ムハンマド・トーマス」は、13問全てに正解し、賞金10億ルピーを獲得する権利を得る。
警察は、幼い頃から孤児で教養のないこの主人公が、不正なくして難問全てに正解するはずはないとして、彼を逮捕し、不正したことを自白するよう彼に厳しい拷問を行う。
しかし、彼が番組内で不正を行った形跡はない・・・
では、なぜ、彼はクイズの正解を全て知っていたのか・・・
その答えを解き明かすべく、物語は、彼の波瀾万丈の人生を振り返るとともに、そこには、我々日本人には想像を絶するような凄まじいインドの現実があった。
ところで、最近インドでは、国際養子縁組の制度を悪用した児童売買が大きな問題となっていると、あるテレビ番組でやっていました。
斡旋料目当ての悪徳業者が、インドの児童養護施設に偽造した親権放棄の書類を提出し、実親の許可無く先進国の親たちに勝手に子供を引き渡してマージンを得るというものでした(ちょっと記憶が曖昧ですが。)。酷いケースでは、親の目の前で子供を拉致して、そのまま児童養護施設へ連れて行き、その後子供は外国へ連れていかれ、目の前で子供を強奪された親は、その後何年も子供と生き別れることになるようです(BS第一「きょうの世界」より)。
ちょっと話がそれましたが、この本にも、このようなインドの現実 ー 腐敗した警察組織、圧倒的な経済格差、児童虐待、殺人、買収、宗教対立等 ーがリアルに記述されています。現在、急激な経済成長を成し遂げているインドですが、その陰では、まだまだ目を覆いたくなるような悲惨な現実があるということをちょっとだけ知ることが出来ました。
ただ、このような内容でも、この本はそれほど重たい雰囲気には仕上がってなく、また、このような悲惨な環境下でも逞しく、そして時に強かに生きていく主人公の様子が上手く描かれていて、読んでいて思わず応援したくなりました。
そして、最後はちゃんとハッピーエンドで終わってくれるので、最後、気持ちよく本を閉じることが出来ました。
「禍福は糾える縄の如し」という言葉がありますが、この言葉はこの主人公にピッタリだなと思いました。
因みに、この映画の日本公開は、4月18日予定とのことです。
どんな具合に仕上がってるのか、楽しみです。
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